60話 川の熊さん
熊さんの先導で川へ向かう。距離はそんなに遠くはないとの事だった。
数分ほど歩いたところで川についた。
印象としては山の中の河原というような感じで、水が綺麗で魚も泳いでいた。
よくキャンプ場とかがありそうな場所といった感じだが、川の流れは速い印象で、水遊びをするなら注意が必要かもしれない。
「グルル」
「お願いしまーす」
熊さんは私の分も魚をとってくれるとの事で、川に入って行った。
小さな滝のような段差になっている辺りに陣取ると、水面を覗き込んだままじっとしていた。
暫くそのまま止まっていたかと思うと、急に水に頭を突っ込んだ。そして出てきたかと思ったら魚をくわえていた。
「熊って魚そんな風にとるんだ」
前足で叩いて魚を叩き出すようなやり方でなく、直に噛み付くやり方で思っていたのと違った。
でも木彫りの熊とか魚をくわえているイメージだし、これが正しいのかもしれない。
「グルル」
熊さんはとってきた魚を私に渡すとまた川に戻っていった。自分の食べる分もとるらしい。
「生で食べるのも怖いし、焼いておけばいいかな?」
近くの森で適当に木の枝を取ってきて、焚き火を作る。
着火はこの前女神に貰った懐中電灯で行う。パワーを上げた光を当てると簡単に火がついた。木の枝に簡単に火が付けられる懐中電灯とか、危険物すぎやしないだろうか。
魚に通す串も木の枝で作った。河原の石を使って表面を軽く削り、この前貰った聖属性の石鹸で軽く洗って完成だ。
衛生面がやや心配だが聖属性の石鹸が何とかしてくれるだろう。多分。
魚自体も軽く洗ってから持ち込んだ塩をたっぷりかけておいた。
川魚の塩焼きと言えばいかにもらしいのではないか。
「あとは焚き火の横に刺せばいいんだっけ」
焚き火の近くに軽く穴を開けるようにして串を固定してみる。
思ったより安定感が無く、すぐに倒れてしまいそうだったので、諦めて手で持って焼いていく事にした。
そんなこんなで焼き始めると、熊さんが自分用の魚を取ってきたようで、横で食べ始めた。
頭からモリモリと食べていく様は結構野生感がある。野生の熊なのだから当たり前なのだけれど。
小一時間ほどじっくりと焼くと、いい感じに焼きあがった。
早速食べてみるといい具合にホクホクで美味しかった。あまり大きい小骨も無いようで、サクサクと食べていけた。
苦味があまりなく内蔵まで食べれそうだったので、虫とかは食べずに苔とかを食べているタイプの魚なのかもしれない。
「グルル」
「ん?気になるの?」
熊さんが塩焼きにした魚が気になるとの事だったので、半分ぐらい食べたところで残りをあげた。
1人で食べ切るにはやや大きかったのでちょうど良かった。
熊さんは塩焼きが気に入ったようで、先程食べていた生魚より速いペースでガツガツと平らげた。
「なんというか、夏だねぇ…」
河原で魚をとって塩焼きにして食べる。
色々とツッコミどころは多いが、夏の思い出のようなひとときだった。
熊ってどんな風に魚をとるんだろうかって調べたら、熊の集団が川で魚が出てくるのを待ってるような映像が出てきました。
小さな段差で飛び跳ねた魚をそのまま食べるみたいです。