55話 魔女箒の操縦技術
旅道具の準備はできたが、もう1つやっておきたいことがある。
それは魔女箒の操縦の練習だ。
現状でも飛び回って移動する分には問題ないぐらいの技術はあるが、前回の転移のようになるべく速く移動したいという場面ではまだまだ心もとないと思う。
とりあえずまっすぐ飛ぶだけでももっと速く飛べるよう、スピードに慣れておきたかった。
「よし、やってみよう」
魔女箒に乗って飛び立つと、全力で加速を始めた。
どんどんとスピードが上がっていき、たちまち空気の抵抗で体を起こしていられなくなってきた。
抵抗を減らすために身を縮めると、更に速度を乗せることができた。
「いやー怖い怖い無理!」
速度が上がってバランスの維持が難しくなってきたところでブレーキをかけて減速する。
あと少し速度を乗せていたら魔女箒から落ちていたかもしれない。
「いやー、スピードを出そうと思えばかなり出せることは分かったけどやっぱり怖いね…」
今の最高速度で体感200km/hぐらい出ていたのではないだろうか。スピードメーターのような機能が無いので厳密には分からないが、車なんかよりよっぽど速度が出ていたと思う。
「とりあえず落ちないぐらいの速度を出し続けられるように練習かな」
今の最高速度を出し続けるのは危ないので無しとしても、もう少し遅いぐらいの速度を維持できるようになるだけでもかなり速く移動ができるようになるだろう。
ただ、現状おっかなびっくりという感じで余裕が無いので、なるべく余裕を持ってスピードを出せるように練習をしていく。
緋色の空に一筋の光が駆ける。
それはまるで流れ星のように。速く、速くと飛び続けた。
「いやー凄いですねー」
この世界でただ1人、それを観測できる女神は感慨深そうに空を見上げるのであった。