39話 ファンタジックな世界への再挑戦
行き先の世界の言葉だけを使えるようにしてもらったところ、特に爆散したりせずに済んだ。
試しに向こうの言葉で話してみたが、なんとも奇妙というか不思議な感覚だった。使ったことの無い言語なのにスラスラと言葉が出るというか。
一応それぞれの言語が別のものという認識を持って使うことが出来てはいるので、ごちゃ混ぜになったりはしないと思う。
そんなこんなで準備が出来たので、再度前回と同じ世界に転移を行うことになった。
一応前回の所から場所はある程度離してもらっている。この前の門番に会っても面倒くさいので、なるべくあの場所には近付かないようにした方が良いだろう。
「それじゃー、行ってらっしゃーい」
いつもの掛け声と共に、私の視界は光に包まれる。今回も上空に転移しても良いように、魔女箒に跨ったまま転移を行う。
転移の光が収まると、私の視界に広がるのは薄暗い森の中だった。
また、高さがいつものような上空ではなく、地に足がつきそうな高さだ。おそらく今回は魔女箒が無くても大丈夫だったと思う。
「さて、いつもと違う様子だけど」
そう呟きながら周りの様子を見渡す。
光の刺さないとまでは言わないものの、鬱蒼と生い茂る森の中といった様子だ。
木々の合間から差し込む光の様子を見るに、今は日が昇っている時間帯ではあるようだ。もっとも、女神曰く自転公転が無い世界だとの事なので、私の元いた世界のような時間の遷移をするのかは謎だけれども。もし聞けそうならこの世界の住人に色々と聞いてみたいものだ。
「さて、どうしたものかな」
この場に立ち尽くしていてもどうにもならないので、ひとまず歩き始めることにした。見渡す限り森なので、どの方角に行けば森を抜けることが出来るかは分からないが、最悪まっすぐ歩き続ければいずれは森の外に出ることが出来るだろうか。
「箒で空から脱出するのは難しそうだね…」
上を見上げた様子として木々がかなり生い茂っていた。これでは箒で飛んで抜けようとしたら、木々にぶつかるのは必至だろう。最悪どうにもならないときはやってもいいとは思うが、それで上でバランスを崩して落ちでもしたら怪我では済まないと思うので、あくまで最終手段としておきたい。
「とはいえ、そんなこと言ってる余裕あるかなぁ…」
今はまだ日が昇っているからいいが、夜になったらこの様子だと真っ暗になってしまい、まともに動くことができなくなるだろう。
キャンプ用品のようなものもなく、その身一つで森の中で夜を明かすとなれば、色々とまずいのではないだろうか。せめて食事ぐらいは欲しい。
色々と考えた結果として、このまま森で夜を明かすぐらいなら無理をしてでも空を飛んで森を抜けた方が良いのではないかという結論に至った。
確かに木々にぶつかる危険性はあるが、光の差し込んでいる所を狙って慎重に飛べばなんとかなるのではないだろうか。
ただ、歩いて人里に出るのであればその方が安全、暗くなり始めるぐらいまでは粘ってみようと思う。