36話 言葉の壁
言葉が分からないというのは思っていたより致命的なものだった。
よく身振り手振りで意外とコミュニケーションがとれるみたいな話を聞くが、それはお互いにコミュニケーションをしようとしているという前提の上で成り立つもので、つまるところ現状ろくに役に立たないというわけだ。
槍を構える門番に私は身振り手振りで敵意が無いと伝えようとしているが、一向にその意思が伝わる気配は無い。むしろ怪しげな事をしていると思われたのか、警戒心が高まっている気がする。
門番は今にも戦えそうな構えをしているし、正直もう槍で突かれるのは時間の問題だと思う。
「うん、無理」
そう言うや否や、魔女箒のグリップを操作する。たちまち魔女箒は飛び出し、私はそれに掴まる形で空へ飛び出した。
空中で体制を整えてから振り返って見ると、門番は咄嗟の事に呆気に取られたのか、その場に立ち尽くしているようだった。
一先ず窮地は脱したと思うが、言葉が伝わらないという問題は解決しないままだ。このまま他の街に行ったりしたとしても同じことの繰り返しだろう。
「人は言葉無くして分かり合えないものか…」
それっぽいことを呟きながら、行く宛て無く空を飛び続けるのであった。