29話 ドームの使い方
慌てて振り返ると、そこにはいつものクソ女神がいた。いや、他に誰がいるはずもないんだけどさ。
「なんだ、驚かせないでよ…」
「いやーすいませんー」
クソ女神の方は何時も通りのマイペースな感じだ。自分がついさっきまでなんとも言えない気分になっていたのがバカバカしくなってきた。
「それで、なんでこんなところにドームが建ってるの?」
「あーここは実験用に広いスペースがある建物が欲しくて建物ごとコピーしてきたやつですねー」
「実験用?」
曰く、大きな物を出したり動かしたりするのや、爆発する危険性があるようなことをする場合なんかにこのドームを使っているとの事だった。
どうやら私の思うようなドームの使い方とは異なるようだ。とはいえ、確かに実験場として大きなスペースが欲しいというのであれば丁度いいのかもしれない。
「それで私の世界からこのドームをコピーしてきたってわけだったのね」
私のこの返しに、女神はなるほどという感じで頷いた。
「あー、そういえばこれねこちゃんの世界からコピーしてきたものでしたねー。それでねこちゃん感傷的な感じだったんですねー」
「うるさい、ほっとけ」
図星を突かれて、私は少し不貞腐れて返した。
「転移が完成したらねこちゃんの世界に旅行とかさせてあげましょうかー?」
「…あまり期待しないで待ってるよ」
転移が完成するのがいつになるかは分からないが、もし帰れるのであれば帰ってみたいなと。言葉とは裏腹にそんな未来に期待してしまうのであった。