27話 空に浮かぶ島々
魔女箒を貰って暫くの間、魔女箒で一日中飛び回るのが私の日常になっていた。
小説を読み続けるのも飽きてきたところもあり、ちょうどいい遊びが手に入ったようなものだった。
1週間程経った頃には操縦技術もかなり上がり、車のように高速で飛び回ったり、急カーブのような曲がり方ができるようになっていた。普通あんな勢いで曲がったらふっ飛ばされそうな気がするが、何故か分からないが安定性があり意外と飛ばされなかった。この箒がどういう原理で飛んでいるのかも分からないし、謎は深まるばかりだ。
先日の帰る場所が分からなくなる問題については、家の方向を指し続けるコンパスのようなものを用意してもらい解決した。厳密には家の方向を指し続けるのではなく、ペアになるもう1つのコンパスを指し続けるものらしく、片方を家に置いていれば家を指し続けるというわけだ。
ちなみにカーナビを用意するのはすぐには無理とのことだった。魔女箒にカーナビは世界観が狂っている感じがするので、今のコンパスがちょうど良さそうに思う。
この世界を自分で飛び回って様々な浮島を見て回った印象としては、基本的にはどこも綺麗な景色の切り抜きというような印象を受けた。先日の泉もそうだが、花畑や草原などどこを見ても綺麗な光景になっているようだった。逆に、鬱蒼と生い茂る森林のような、警戒心を覚えるようなものは無かった。知らぬ間に女神が手入れでもしていたりでもするのだろうか。
そんな自然の景色の浮島が多かったが、建造物が建っているものもいくつかあった。建っている建造物は小屋のようなものから城のような大きなものまで様々だったが、私の目を引いたのは大きなドーム状のものだった。
「え…どういうこと…?」
そのドームは遠目で見た時は分からなかったが、近付いてみると私の世界の文字が使われていた。
間違いない。これは私の世界で都心に建っていたドームそのものだった。