23話 何もいない泉
「他の島にも行ってみますー?」
「行けるの?結構遠いし空中に浮かんでるから何か飛ぶ手段が無いと行けなそうだけど」
他の島に行くと言っても、近くの浮島ですら数百メートル程は離れているようだった。ヘリコプターか何かでも無いと行くのは難しそうだ。
「転移を使えば余裕ですよー」
女神がそう言うと、見覚えのある光が広がった。いつもと違うのは私だけでなく、女神も光に包まれているようだった。
そして光が収まると泉のほとりに立っていた。また空中や地中に飛ばされたらどうしようかと思っていたが杞憂だったようだ。
泉に目を向けると、澄んだ水が広がっていて綺麗だった。水の透明度がかなり高いようで、底まで見渡すことができた。
「本当は魚とかの生き物もいるといいんですけどねー」
「え、いないの?」
言われて改めて見てみたが、たしかに魚が泳いでいるのを見つけることが出来なかった。魚以外にもカニか何かでもいないかと湖畔にも目を向けてみたが、全く見つからなかった。
「魂だけは作れないみたいで、生き物は作れないんですよねー…」
「女神にも出来ないこととかあったんだ」
正直少し驚いた。転移のように失敗する事はあっても、一応は神様なだけあって何でも出来るものだと思っていた。
でも、本当になんでも出来るならそもそも失敗なんてしないか。
「生き物がいないってことは虫もいないんでしょ?それはありがたいかもね」
正直虫とか嫌いなので、その辺を気にしないで景色だけを楽しめるのはありがたかった。