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第一章・第七部・目覚めは美女のキスを添えて


さて、私は最近この話が何処に向かっていくのか分からなくなりつつありましたが、コメディーかシリアスな内容なのかホント中途半端な感じだったんですけど、ようやく分かりました。私が書きたかったのはファンタジーなのですね。と言うことで軌道修正のつもりで書いていったら何故かこんなことに……


再び書く気がなかったのにという話です。どうぞ




目が覚めると知らない天井だったと言うのは良くあるが、全く知らない世界だったというのはどうなのだろう。いや、今いるのは異世界の王宮の一室だということは理解している。

 俺は異世界に来た。なのだが今現在いるのはさらに意味の分からない場所だった。あたり一面俺の胸の辺りまである背の高い深緑の草で覆われていた。空に輝くのは水色をした星のようなもので、空自体は黒いというより深みのある青色をしていた。

 周りを見渡して見るがこの世界は球ではなく平面なのではないかと思うほど四方を見渡しても背の高い草が広がっているだけで果てが見えない。あるいは本当に平面なのかも知れない。異世界だし。

 異世界に迷い込んだ上にさらに別の異世界に迷い込むなんて聞いたことない。

 あはははははははは、笑ってる場合じゃねえ。

 いかにこうなったかと言うと寝て起きたらこうなったのだ。俺の所為ではない。

 これはもしかしてあれだろうか、夢オチとか言う。だったらついでに今までの出来事ごと元の世界のベットの上で見た夢という事にしてほしい。でも、その場合もしかして俺は寝過ごして夢を見ているのではないだろうか。そうだとするとこのままいくと学校に遅れてしまうことになる。

 「どちらにしても早く起きないとやばいか……」

 思わず呟いた独白は突然吹いた風にさらわれて――妙なフレーズだ。普段ならこんなことを思ったりもしない。ここの雰囲気に毒されたか?

 また一陣の風が来る。しかし背の高い草をなびかせて近づいてきた風は俺に届くことなく止んだ。

 風の終着点にその女性は突然現れたのだ。神秘的な雰囲気を漂わせる彼女だったが、特に特徴的なのはその髪である。風に吹かれるようになびくその長い髪は光の加減か緑から深い青などと色を変えていき最後には空気に溶け込むように透明感を増し消えていた。

 「誰だ?」

 「この領域は私の物。訪問者サモナーが私の名を聞くのか?」

 顔は無表情だったが深緑の瞳には敵意が込められているような気がする。

 「コンタクトの許可はしなかったのに、この時代に強制同調フォースコンタクトを使える奴がいるとはな。人間如何なる手を使った?」

 『いや、さっぱり分からないのだが。』なんていっても通じそうにないよな。でも知らない物は知らん。

 「えっと、気づいたらここに居たんだが?」

 しばらく彼女は押し黙ってこちらを眺めていた。視線が妙に厳しい。 

 「妙だな、お前嘘をついていないな。まさか、アンコンシャスサモナーだとでも言うのか?今だかつてこの領域まで来れたサモナーは例外なく神器を使っていたというのに。」

 今度は眉根を寄せ明らかに困惑の表情を見せていたが目からは警戒の色が消えていない。

 「いやよく分からないが、気がついたらこの世界に入り込んでいて、どうやったら帰れるんだ?」

 「サモナーが私とコンタクトを取りながら帰りたいだと、本気で言ってるのか?」

 帰りたくないなんて誰が思うんだよ。心の底から帰りたい。自分の部屋のベットの上で目覚めたい。

 「いや、いたってシリアスに聞いている。」

 といったら堪えられないという感じでいきなり爆笑された。何か変な事言ったか?

 「そんなこと言ったのはお前が初めてだ。それに本当に私のことも知らないようだな。おかしな人間だが、気に入ったぞ。」

 それは良かった。敵意の視線も消えて表情も柔らかくなっている。一時はどうなるかと思ったな。

 「結局お前は誰なんだ?」

 「名を聞くなら自分から名乗るのが礼儀だ、がまあいいか。私は神の炉より生まれ、起源より来たる晨風。風の最上位精霊にして世界の根源の一角を担う風霊シェルラ・ミオデ。ようするに精霊だ。」

 これは寝ている間に精霊界まで迷い込んでしまったとかそういうオチなのか、何てありきたりな。

 「俺も名乗った方がいいのだろうか?」

 「その必要は無い。擬似的ながら同調を済ませた。」

 同調が何かは知らないが、とりあえず必要が無いと言われれば話すことは無い。問題はどうすれば帰れるかだな。

 「帰りたいのなら私と契約しないと無理だぞ、多分。」

 心が読まれたぐらいで動揺はしない。相手は精霊だ、それぐらいのこと可能だろ。問題は帰れないということなのだがどういう事だ?

 「異世界人なら事情を知らなくても当然だろうが、この領域は精霊界の中でもかなり深遠な領域在る。それゆえ魔力の密度もとんでもなく濃いのだ。

 それで話は変わるがお前は精神体だけでこの領域に来ている。決まった形を待たず変容的な精神体であることもふまえお前は精神力が神格並みに強いため強大な魔力の中でも自己を保っていられる訳だが、精神体であるがゆえに魔力の吸収量がいつもより大幅に上がっているんだな。 そして体が無い以上魔力の上限は精神力に比例する。今現在お前は人間の体が耐え切れる限界を超えて魔力を溜め込んでいる。そのまま戻れば確実に身体が崩壊するだろうな。人間のくせに大したものだ。」

 いきなり死刑宣告かよ!ということは俺はこのままこの世界にとどまらなければならないのか?

 「その選択もできる。それほどの精神力があれば精霊として生きることも可能だ、それもかなり高レベルな精霊に成れるだろう。だが、どうしてもというのなら帰れないことも無い。もちろん宗助の本来の世界ということではなく、お前の体が現在ある世界へという意味だが。」

 とりあえず安心した。そうするには如何したらいい?

 「私と契約することが必要だ。宗助の精神体と完全に同調することができれば、精神体の一部が私と繋がっている事になるので魔力のキャパシティーは私の魔力キャパシティー分増大する。」

 なるほど契約か、しかし契約というと双方の合意が必要なんだろ?

 少なくとも俺の知識では一方的に結ぶことは無理だと記憶してる。力を貸す代わりに魂寄越せみたいな。それは悪魔か。

 「宗助が合意さえすれば問題は無い。ただ条件が一つ」

 条件か、まあ仕方ない。何だ?

 「私と契約を結んでいる間は何があっても生きろ。」

 そんな条件ってありなのか、俺は死ぬ気は無いぞ。

 「お前はまだ過去の事件を引きずっている。生きる理由を見失っている。私にはそう思えたが」

 もしかしてお前は俺の過去を視たのか?

 「そうだ、その上でお前を気に入った。他人のために生きる人間などめったにいない。」

 そんなんじゃない。他人なんてどうでもいい、俺はあいつのために生きていただけだ。そして俺はあいつを守れなかった。

 「記憶を視た限りそうは思えなかった。それにお前にあの死はどうしようもなかっただろう。」

 「そういうことを言っているんじゃない。俺はあいつのために最強を目指した。あいつは俺の生きる意味だった。どうしようもないで済ませていいことじゃない。」

 「そのための契約だ。もう一度お前が剣を取る理由をこの世界で見つけろ。」

 「条件が増えてるぞ。」

 「生きる理由を見つけろといっている。何のために生きているのか分からないようじゃあ死んでいるのと一緒だからな。」

 酷い言われようだな、俺はちゃんと生きているつもりだ。

 「確かにあいつが死んで何もかもがめんどくさくなったのは確かだが、剣を捨てた時過去も共に捨てた。俺は生きる理由が無いが死ぬ気は無いぞ。むしろ俺は生きたいと願っている。」

 「それは彼女との約束があるからだ、違うか?」

 まるっきり図星を突いてきやがる。あんな昔の約束を律儀に守っている俺は確かにまだ過去を捨て切れてないのかもしれない。 

 「確かにその通りだ。だが、そうだからと言ってもう一度剣を取る約束はできない。契約は無理そうだな。」

 「そんなことは無いぞ。契約は結んでやる。」

 どういうことだ?

 「どうせ言っても聞かないことを言ってみただけだ。お前がこの世界に溶けて消えるのは私の本意ではない。だから協力してやろうというだけだ。」

 「それはどういう……」

 最後まで言い切る前に口を塞がれた。一瞬どういうことか事態が掴めなかったが、どうやら抱き疲れているらしい感触と目の前にさっきまで話していた人物の顔があったことから把握した。何処までこの世界はお約束を守れば気が済むのだろう?

 俺の顔は真っ赤に染まっているに違いない。俺は女性に興味がないと学校の一部では噂されていたらしいが逆に意識しすぎて女性を避けているだけなのだ。つまりこういうことに関しては全くといっていいほど免疫が無い。

 「あっえ、う」

 どうやら動揺しまくってるらしい。動悸も激しいし、何より顔どころか体中が熱くなっていてできることなら千里彼方まで走り去りたかったのだが体が麻痺したみたいに動かない。その上腰が抜けたみたいにへたり込んでいて全く我ながらかっこ悪いよな。

 「契約完了。言っておくが初めてなんだぞ。今までここまで気に入った相手はいなかったからな。宗助を死なせはしない。また会おう。」

 

 そこで一度視界が黒く染まり再び明るくなると見慣れた訳ではないが昨日見た天井が見えた。

 「夢……か?」

 個人的に言えばさっきのは夢であってほしい。だが自分がそんな夢を視てしまったのだとしたらそれはそれで落ち込む。かといって現実というのも色々と困る。

 「どうしたものだろうか?」

 誰もいない部屋なのだから何も返って来ないのがあたりまえ……

 『全て現実だ。』

 じゃ無かった。

 (やっぱりそうだよな。あれで夢なわけないよな。)

 『無事身体に帰れてよかったな。』

 やっぱり心の中で会話できるんだな。

 (無事に帰れないことってあるのか?)

 『成功確立は二十パーセントも無かった。』

 五分の一以下、低すぎない。

 (今更それ言うのかよ!)

 『死なせないといったはずだ。何事も結果オーライ、過去のことをいちいち気にするな。』

 (秋坂みたいな言い方するな。)

 『何、あの単細胞生物と最上位精霊の私を一緒にするなんて酷い侮辱だぞ。』

 秋坂、お前の名前は酷い侮辱用語らしいぞ。もしかしたら放禁かもな。

 「今、何時だ?」

 『大体、五時半だな。』

 元の世界での習慣はなかなか抜けないものだな、いつも起きる時間だ。

 「俺は何をしたらいいだろうか?」

 朝食に呼ばれるにしてもまだ時間があるだろう。とりあえず着替えようか。

 着替えるのは昨日用意してもらったこっちの世界の普段着である。最初はもっと畏まった物を用意されたのだが、趣味じゃない上に高価そうだったので遠慮した。

 『宗助、何か聞きたい事は無いのか?』

 (めんどくさいから無い。けど強いて言うなら呼び方だな、シェルラ・ミオデって呼びにくいからシェルでいいか?)

 『別に私は構わないぞ。』

 (そういえば聞きたいことといえば元の世界に帰る方法は知らないか?)

 これで分かれば簡単なんだけどな。

 『知らないな。』

 それは残念。

 『それと実はちょっと用事ができたのでしばらくコンタクトが取れそうにない。無事を確認できたし一回コンタクトを切るぞ。』

 (了解。)

 秋坂じゃないがちょっと散歩でもしてくるかな。暇だし。

 

  


 副題でだいたいノリが分かった方もいたんじゃないでしょうか?本当に中途半端な感じですみません。でもあれですもの。あやふやなることって言うのが私の売りなんですから仕方ありません。予定としてはあと三話ぐらいで王都を出れると思います。

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