第一章・第六部・キャラが増えると会話がやり難い
予定より二日遅れました。 死んだと思いました?生きてますよ、まだ……
来月の二日ぐらいまでは色々と忙しいので投稿スピードが遅くなりがちになると思います。
俺達は謁見の間に向かって現在廊下を移動中である。
この辺りは主要な通路でもあるのか蝋燭……ではなく照明用の魔導具とかそんな感じのものであろう物で照らされている。燃料は魔石とかかな?
「で、何でアリアも一緒に来ているんだ?」
俺の疑問に、今まで黙っていた見かけ十二、三歳に見える僕っ娘は赤色の瞳を好奇心で瞬かせはきはきとした声で答えた。
「僕、異世界人なんて初めて会ったんだよ。知的好奇心がうずいちゃって。」
要するに宇宙人に興味を示しているようなもんか。
俺は別にオカルト懐疑主義者なんかじゃないが宇宙人が仮に捕まったと聞いていたとしても見に行かないだろう。興味を持ってもせいぜい写真で見て満足するレベルだ。
宇宙人なんかに関わってもろくなことにならない。今はなおの事だが、昔からそう思っている。
「アリアは師団長ですから謁見の時に参列していてもおかしくないです。アリアの言ったことを撤回させるのには並々ならない苦労がいることなのでこの際いいでしょう。」
と律儀に説明してくれたのはもちろんシェルディアである。
「所で本当に君達は今日まで魔法を使ったことが無かったの?」
存在をしていないものは使うことができないだろう。そもそも魔法を信じていたのは遥か昔、俺がまだ五歳の頃の話だ。
それからはずっと剣一筋だったし、片時も自分はもしかしたら魔法が使えるかもなんて思ったことは無い。
「無いと言ったら無いけど、魔法に似た感覚の気って奴なら俺は使っていたぜ。」
まあ、秋坂なら何を可能にしてもおかしくは無い。秋坂はテストで平均点を取ることはできなくても正義のヒーロ本気モードなら腕一本で乗用車を吹き飛ばすぐらいのことはできていたのだ。
今更魔法を一日で使いこなしていたからといって驚くことは無い。があいにく他の二人はそうはいかない様だ。
「まさかこの僕が異世界人とはいえ魔法を使ったことも無いような奴に負けるなんて。」
と落ち込むのはアリアで
「アリアが魔法でアルデシュア将軍以外に負けた所を見たのは初めてですよ。アキザカは何かおかしいです。」
と感嘆と呆れが混ざった声を漏らすのはシェルディアである。
そうして右に三回、左に四回、階段を一つ下りて―以下省略―でようやく謁見の間前に着いた。
ここでアリアとシェルディアは分かれて行ってしまった。ここは謁見に来る用のいわゆる訪問者の入り口らしい。
でかい扉だ。
この分厚い木戸一枚隔てて、玉座まで続く長い赤い絨毯が敷かれ両脇には城の兵士が立っていると言ういかにも勇者が呼び出されて魔王退治を王から押し付けられそうな光景が広がっているかどうか知らないが俺のゲーム知識から言えばそういう部屋が広がっていることになる。
そんなでかい扉が脇に控えていた兵士っぽい人によっていよいよ開け放たれた。珍しく秋坂も無言で見守っている。
そうして表れた光景はまさに魔王退治を押し付けられそうなものだった。
結構先に豪奢な赤いいすが二つ並んで鎮座されその上には王と王妃であろう人が座っていた。そしていかにもな金の刺繍が施された赤い絨毯が入り口から玉座まで緑っぽい高級そうな石のタイルの上に敷かれていた。
おまけに天井に六つ、廊下の照明と同じ仕組みで光っているのであろう巨大なシャンデリアがぶら下げてあった。おかげで室内は異様に明るい。
部屋の両側に控えるのは恐らく位の高い武官とか、文官とか、近衛隊の皆さん達であろう。その数二十名ほど、夜だからか?
今更だが、何をすればいいんだ。入り口で王に跪いたりすればいいのか、それとも玉座まで歩けばいいのだろうか?
そもそも謁見って普通こっちが待って王が入出するとかがパターンだろ。
なのになんで俺達が待たせた感じになってんだ。
そういえば秋坂の所為だったな。もし何か罰があったら秋坂に全部押し付けて逃亡しよう。
赤い絨毯の意味って何?これって上を歩く者に敬意をもってとかじゃないの。王とかの通り道に敷くんじゃない?本当に俺達が歩いていいものなのか?
さまざまな疑問に倒錯しながらも秋坂が歩き出したのに合わせ俺もぎこちなく歩を進めた。
王の玉座から適当な距離を取るとなんとなく跪いたほうがいいのかなと思って跪いてみた。
「別にそのような礼を取らなくてもいい。頭を上げてくれ。」
なんとなく王らしくない口ぶりだと思いながらも頭を上げた。王はシェルディアと同じ金髪と碧眼を持った以外にも若々しい男性だった。シェルディアの年を考えると三十代を下回ることは無いと思うのだが十代にも見間違えそうなほど若々しい。それから顔もかなりいい。
同じく王妃様のほうも金髪に碧眼を持ちシェルディアから幼さを抜いた感じの人で、十代でも三十代でも通用しそうな年齢不詳の美人だった。
「本来ならば同じ目線で礼を言いたいのだが私の立場もあるゆえ勘弁してほしい。それと私の部下が手違いで君達を襲ったとも聞いた、申し訳ない。後で言い聞かせておく。それで娘を救っていただいた件だが礼の内容については後で伝えるのでこの場では言葉だけ、ありがとう。以上、解散!」
全然イメージしていたような内容と違った。もっと厳格で偉そうな感じかなと思っていたので拍子抜けだった。
何人かを残して部屋から兵士達が退場した時、王妃様が突然笑い出した。
「ふふふ、アウスもっと王らしい態度は取れないの?」
「わ、笑わなくてもいいだろ。これでもかなり頑張ったほうなんだから。」
頭がついていかない。つまりどういう事?と思っていたのが顔に出ていたのだろうか。
二人は玉座から立ちこちらの方に近づいて来た。
「この人、口べたって言うか、小心者って言うか畏まって話すのが苦手なのよ。」
「はあ、そうなんですか。」
王様らしくないと思ったのはその所為か。その時、部屋に残っていた一人。白髪まじりの黒髪の男が俺達の方に近づいて来た。帯剣してない所を見ると文官かなんかだろう。
「陛下!あれほどもっと王らしく振舞ってくだされと申し上げたではありませんかっ!」
なんだか知らないが凄く怒っている。
「し、シード落ち着いて。僕も頑張ったんだってば、それなりに。」
「もっと真剣にやってください、真剣に!そもそも最後の『以上、解散!』は無いでしょう!」
俺は王様をもの凄く身近に感じることができた。王様も大変だな。
「シードさんとお父様は何か催しが終わるたびに何時もああなんですよ。」
シェルディアいつの間に!
あの親があってこういう謙虚な娘が生まれるわけか。だとすると前の黒い部分が出てきた時とかのはもしやお母様からの遺伝?
それからしばらく、シードさんと王様の攻防は続き、最後はシードさんがもう一度最初から特訓をすると言うことで丸く収まった。
「僕はアウス・アラノア・レイフィード一応この国の王様を……」
「おほんっ。」
「一応無しね。王様をやってる。これでいんだろシード。それでまあこのしゃべり方は生まれついたものが抜けなくてね、普段は王の威厳とかもあるからここにいるメンバー以外と居る時は変な風に話すが気にしないでくれ。人がいなければ別に敬語とか使ってくれなくてもいいからね。」
「了解。」
と秋坂は敬礼しているのだがこの世界にも敬礼ってあるのかどうなのか。師団とかそういう単位があるってことは敬礼もありそうなものだけどな。
「分かりましたが、俺は基本的に年上には形だけでも敬語を使うと決めているのでこれでしゃべります。」
「しゃべり易いのでいいよ。年上かぁ、僕これでも三十一だけど首脳陣の中では一番若かったりするんだよね。シードは五十七でしょ、アルなんて百三十七歳だし。エルフ族って凄いね。って言っても誰かわからないよね。この黒髪の不機嫌そうな顔しているおじさんがシードで向こうの見かけ二十ぐらいの美青年がアルデシュア、愛称アルって言うんだよ。」
王様も外見から三十一歳とはとても思えない風貌なのだが、アルデシュアさん百三十七歳って言うのは驚きだ。とてもじゃないが見えないな。さすがファンタジーだね。
アルデシュアさんは銀髪碧眼で耳が長いという想像通りの美形の青年だった。想像できるというのは見て一発でエルフって分かるということだ。
「宰相のシード・サハルイ・ハーブルと申します。見ての通りこの地の出身ではないのですが先王よりこの位と爵位を賜りこの国に仕えさせて頂いています。」
宰相って王を抜いたら政務のトップじゃないか。ものすさまじく偉い人だったんだなシードさんって。
「陛下より紹介いただいた大将軍のアルデシュア・ノーデンハーバーだ。三代前の王より招かれてこの国に来た。首脳陣の中では一番の古株になる。呼ぶ時はアルで構わない。」
で武官のトップもか。師団長という呼び方と大将軍という呼び方が混在しているのは少し妙だが異世界なんてこんなもんだろと思わなくもない。
「私の紹介はしてくれないの?」
「ごめんごめん。こちらは僕の妻のラルミア・ルール・レイフィード。」
「と言うことでラルミアよ。娘を救ってくれてありがとう。娘から話は聞いたわソウスケさんとアキザカさん。」
「僕からもお礼を言わせてもらうよ。本当にありがとう、もし君達がいなかったらと思うと……いや、こういうことは考えない方がいいね。」
俺はなんだかこの王様が好きになれそうだった。
「いや、そんなお礼をして貰うほどのことをした訳でもないのですが……」
本当に俺は何もしていない。いや、秋坂の攻撃からシェルディアを救ったのは確かだがそれはプラマイゼロだろう。
秋坂は……セオリーを守っただけだろうな。
「いや、君達には僕達の気がすむまでお礼をさせて貰うつもりだよ。娘の命より大事なものはこの国ぐらいのものだよ……いや、いざとなったら娘を優先させるかも知れないな。」
「陛下さすがにそれは」
シードさんのツッコミ。でもまあ国より娘を優先させる王なんて最悪だよな。
「いや分かってる。でも気持ちの問題だよ。」
「あら、アウス私はシェルディアより大事じゃないって言うの?」
ラルミアさんのツッコミ。そこを突かれると王様厳しいでしょ。
「ラルちゃんまで手厳しいな。でも夫婦愛と親子愛は別物だよ。本当の意味で一番愛しているのはもちろんラルちゃんだよ。でも一番大事なのは娘だって気持ちも君には分かるだろ?君は僕を残して先には行かないって信じてるからね、心配は無用なんだよ。」
「昔はもうちょっといじり易かったのに、なかなか成長したわね。」
「いやあ、君が鍛えてくれたからね。さすがに王様になっても昔の調子じゃあかっこ悪いよね。」
仲のよさそうな夫婦で何よりだ。所でさっきからシェルディアとアルデシュア将軍が黙りっぱなしなんだけど何かあったのだろうか?
「何でさっきから黙ってんだ。」
もちろんこの問いはシェルディアに向けたものだ。俺にはあの超然と立ち尽くしている大将軍に話しかける勇気はない。
「お父様とお母様の絡みに巻き込まれると厄介なんですよ。黙っているに限ります。」
なるほどね。
「そういえば僕は話を聞いていたからすっかり君達の紹介が済んでいたと思っていたけど、アルとシードにはまだだったね。」
「そうでした。俺は倉羽 宗助で俺の国では名前が後に来るので宗助が名前になります。好きに呼んでください。一応、異世界人ですね。他に紹介することはありませんね。」
「俺の名前は秋坂 光輝。同じく異世界人。喧嘩では負けたことはないな。よろしく。」
こいつに礼儀を叩き込んでみたい。俺もそこまでちゃんとしてる訳ではないがな。アルデシュア将軍が『喧嘩で負けたことがない』で何故か反応したような気がしたが、気のせいかもしれない。
「こちらこそよろしくお願いします。」
「よろしく頼む……」
アルデシュア将軍視線が怖いです。
「皆の紹介も済んだし、予定が無いならとりあえず君達にはしばらく王宮に滞在してもらおう。費用なんかは心配してくれなくてもいいよ。希望があったら何でも言ってくれ。では、今日は遅いのでまた明日。寝具は誰かに用意させるよ。」
「はい、ありがとうございます。」
とりあえず行く宛てが無いしやっかいになるしかあるまい。その内何か仕事が無いか聞いてみよう。ただ飯ぐらいは気がとがめるし。
「留年まで残り八十九日。果たして王都ではこれからどんなことが待ち受けているのであろうか?」
待ち受けてるんじゃなくて、お前が勝手に突っ込んで行くだけだろ。
眠いです。寝不足です。えらい間あけた割には書置きとかありませんし、少ない分量で早く更新するのが目標だったのに。でもとりあえず一週間あけることは無いというのは守れました。パソコンの機嫌も直りましたし、仕事が終わればまさに順風満帆ですね。