ラジオ本番で平然と「ちくび」を連呼する人気MCのポーカーフェイス
「なろうラジオ大賞4」参加作品です。よろしくお願いします!
大賞狙ってます!!
あぁ、
疲れた、
働きすぎだ。
毎日天の声の収録にライブイベントが続いてもうクタクタだ。
えっと今日は、ラジオの収録で最後か。
はぁ。しんどいけど、あと少し、
頑張ろうか、
*
――っと、ねちょっと、しっかりして?
「……ん、んあ? ほへ?」
目の前にはマイクがあり、そこはラジオの収録ブースの中だった。共にMCを務める透池久美さんが僕の肩を揺すっていた。もしかして今って、
目に映る赤いランプ。てことは、
収録中なのか。
ここに入ってきた記憶が全くないのに――
「ねえ疲れてるの?」
「ああ、ごめんなさい。最近忙しくて」
「あの、凄く変だったよ?」
「え、何かありました?」
「変な事言ってたよ。その……」
「え何? 変な事って何ですか?」
「うんと、その、ちくびって」
「はい? ちくび?」
「うん、ちくび。ちくびちくびってずっと、ヤバかったよ」
「そんなバカな!」
まさか、
「本当だって。途中でびーちくびーちくになってたり」
そんな、有り得ない、
とは言えない心当たりが実はある。一人きりの時にちくびを連呼する癖が僕にはある。
別にイヤらしい事を考えている訳じゃなくて、心が落ち着くんだ。
おそらく本能的なものだ。ちくびを連呼する事で体に溜まった何かを吐き出す、儀式の様なもの。
仕事柄一人になれる時間が殆ど無いから、儀式をする機会が作れないんだ。
*
その後も似たような事は何度かあった。
何とかしなきゃ。
でもある日いい事を思い付いた。
ラジオの仕事で朗読する小説をチクビ小説にすればよいのだ。
僕は偉い人に頼んで朗読する小説の選考に加わる事に成功した。
そして探した。するとドンピシャの作品があった。
傑作。その作者も、ただただちくびを連呼したくて書いたのだろう。僕にはそれが完全に分かる。
そして遂に、
ラジオ本番でその作品を朗読する時が来た。
胸に手を当て、まずタイトルを宣言した。
『 ちくびメイトのちくび裏のちくび力学 』
声にすれば文字通りに心が洗われた。
さらに本文を読み進めれば段々と意識が恍惚としてくる。
「ちくび祭りではちくびフェイスのちくび周りが・・ 」
物凄い高揚感だ。
僕の発したその言葉が電波に乗り多くの人々の耳に届くと思うとウットリとしてしまう。
でもそれを顔や声に出しはしない。
素晴らしい小説だった。
読み終えた僕はしばらく余韻に浸った。
久美さんが涙声で言う。
「感動! 言葉が透き通るように心に染みたよ。凄い、作品も貴方も」
こうして僕はMCとして次のステージへ進んだ。
ありがとうございました。




