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5.40日目

 紆余曲折を経てそれでも迎えた四十日目ー。


 いやーまいったまいった、大誤算。だってねぇ、王位って欲しいもんだと思いますよねぇ。まさか第二王子に受け取り拒否されると思わなんだ。ああビックリ。


 え、なんですか、見通しが甘い? ちっちっち、そんなこたーいいのよ。剛腕でゴリ押ししたから、問題なし。あの後しっぽり第二王子と話し合いをしまして、美しい協力体制が整いました。



 ガンディーヤ第二王子の母は側妃、コケイーノ第一王子の母は正妃、誰がどう見てもコケイーノ第一王子が王位を継ぐのが正道。ところがガンディーヤ第二王子の母を筆頭として、夢見る夢子ちゃんたちは、ガンディーヤ第二王子を盛り立てて王位争いを焚き付けてるんだって。



「頭がおかしいとしか思えぬ」


 ガンディーヤ第二王子は言っておった。もうウンザリなんだって。


「誰も彼もが私に王位を狙えと唆す。私にその気はないし、能力もない。それすら理解できぬ能無しが、どのように国を導くつもりなのか。片腹痛い、笑止」


 コケイーノはアホだけど、ガンディーヤはなかなか見どころあるんじゃないかなって、私は思ったけどね。ま、本人がやる気がないならどうしようもねー。



「私は王位を継ぎたくない。息の詰まる王宮で一挙手一投足を見られる生活はもうたくさん。無責任であることは百も承知だが、何もかも投げ出してどこかに旅に行きたい。しかし私は世間知らずで外で生きていく力がない」



 そこに、この活力みなぎる野生味いっぱいのイグワーナの登場ですよ。トキメクよね、ね。なんか強そうだし、頼れる年上のお姉さんって感じじゃーん?


「では、殿下。私が殿下をお守りします。一緒に旅に出ようではありませんか」


 もうすぐ処刑の身だけどネ。



 ということで、処刑をなんとかし、コケイーノとマリワーナをざまぁし、ガンディーヤを旅に連れていきつつ守るということになりました。って、やること増えてるーーー。



 できるガンディーヤ王子は私にいいアドバイスをくれた。王弟殿下をそそのかせってね。きっと王位を欲しがるはずってね。



 だからって鵜呑みにしません。私も学習するのです。これで王弟にも王位いらないって言われたら目もあてられない。


 


 ゆらゆらゆら。髪製のハンモックで熟考中。


 どうなんでしょうかこれ、聞けば聞くほどなんかイヤな感じ。カミッコが持ち帰った王弟殿下の情報がすごーく不穏。なんというか、とても人生を謳歌しているっぽい。


 政治からは距離をおき、でも社交には精を出し、視察という名の観光旅行にいそしんでいる。結婚はせず、既婚者とのワンナイトラブを楽しむ日々。まさにリア充。



 あれ、もしかして、王位ってそんなに欲しいものじゃない感じ? あら、そうしたら、コケイーノにそのまま王位継がせる方が、ざまぁになる? 


 あれ、じゃあなんもせんでえーんちゃうん。



 うむむむむ。


 悩んだ結果、王位継承権を持つ人をありったけ調べることにしました。


 王弟の隠し子とか、王姉の息子とか娘とか、色々。


 ダーッ、どれもパッとしねー。なんでしょう、この、やる気のかけらもない皆さん。ノブレス・オブリージュはどこへ、って感じ。


 リア充ではある、間違いない。でも、責任とか、血税とか、国のためとか、民をどうこうとか、そういうの一切考えてねー。遊んでばーっかり。私以上に働いてない。え、だって私まだ執筆活動してますし。夢の印税生活ですし。家賃ゼロですし。ほほほほ。



 いやー、これアホのコケイーノが頼もしく見えてくるレベル。だってあいつ、帝王教育はちゃんと受けてるもの。まあ、私を処刑しようとしてる以上、見逃しはしないがな。返り討ちアーンド五倍返しですわ。



 さあ、王族がやる気ない場合、政権は誰が取りますか? 歴史を振り返ると、部下のクーデターか、民による革命か、はたまた宗教か。


 

 どれにしようかなー。



 ひとまず調べやすい貴族たちから検討してみよう。もう既に情報集まってきてるしね。うちの父親を含め四大公爵家どの当主も王家に媚びへつらっておる。俺が成り代わったるーっていうギラギラ感、もといギラギラみは皆無。


 なんだろう、なんなんでしょう、この王家にナニを握られてる感じ。

 

 

 仕方ない、次に簡単そうなのは宗教かな。この国は政教分離がきっちりされて、宗教関係者はいたってクリーンなイメージだけど。


 ふむふむ。え、なんなのこの清貧な組織は。ただれきった王位継承者どもと大違いなんですけど。戒律が厳しいわけではないけど、神と民のために生きてる。エラい。


 えーそれでは比較してみましょう。



 〜さる神父の一日〜

日の出前に起床。部屋を整えたあと、体を冷水で清める。

日の出とともに朝のお祈り。

孤児院の子供たちを起こす。

早朝のミサ。ミサの後、孤児や信者と共に、教会と庭の掃除。

朝食。固いパンと果物と水。

就業前の祈り。

孤児たちへの教育。

昼食。固いパンと温かいスープ。

昼の祈り

恵まれない人への炊き出し。

書類仕事や説教の草稿を練る。

信者や孤児との聖典の勉強会。

夕べの祈り。

夕べのミサ。

夕食。固いパンとチーズと水。

聖典の研究

就寝前の祈り

就寝。



 〜さる王弟殿下の一日〜

日の出と共に就寝。

入浴とマッサージ。

昼ごろ第一回目の食事。焼き立てパン、たまご、スープ、果物、デザート、コーヒー。

午睡。

お茶会。ケーキ、クッキー、紅茶。

さる貴婦人(既婚)との逢瀬。

入浴とマッサージ。

午睡。

夕方ごろ第二回目の食事。サラダ、パン、魚、肉、スープ、果物、デザート、酒。

舞踏会。

さる貴婦人(既婚で昼とは別人)との火遊び。

夜遅く第三回目の食事。クラッカー、チーズ、酒。

城下街の大人のお店で遊興。

日の出前に帰宅。



 この国は政教一致の方が民のためになるんじゃないかな。

 

 

 

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