女剣士。ダイヤモンド・デュラハンと戦う1
ネクステンドに闘技場なんて物はない。そのため近くの木々から切り出した丸太を地面に突き刺して作られた円形の簡易闘技場が私を出迎えた。
丸太の上は客席になっており、冒険者達が酒を飲みながらフィールドの私を見下ろしている。
私は学力試験を1番で突破したから1番にフィールドに立つことになる。これも1番綺麗な状態で戦えるという学力試験1位の特権らしい。
綺麗にならされたフィールドを見て改めて私は思う。今この時まではただマインにおんぶに抱っこ。でも戦闘は私の領分だ。
フィールドの中央には2メートルは超えそうな大きくて黒い棺が置かれている。確か死霊系モンスターを封印できるアイテムだったはず。
棺の隙間から黒いモヤのような物が溢れているのが見えた。確実にあの棺の中に私の敵……すなわち、ダイヤモンド・デュラハンがいる。
『さぁ!始めんでぇ!!』
すると、闘技場の中に一際大きな声が響く。この声は確かマインに声をかけてきたアーサーさんの声だ。
アーサーさんの声に応えるように闘技場の観客達は一斉に沸き立つ。
誰も、私が勝利するなんて思っていないらしい。ある者は私を自信過剰だとけなし、またある者は面白くなってきたと私の戦いを面白がっている。それ程までにあの棺に眠るモンスターは強力なのだろう。
けれど、たった1つだけ。そんな無責任な野次の中から聞こえる声がある。
「ユーリさぁん!頑張れ!!」
普通ならかき消されて消えてしまいそうなその声が、1人で立ち尽くす私の心を支える。
大丈夫。この声が……マインが見ていてくれるなら、何も怖くなんてない。
私は装備した両手剣を担ぎ、構えを取る。
『準備は出来たかー!?』
「…………えぇ」
声を張上げるアーサーさんに私は応える。
「いつでもいい。始めて」
『よっしゃあ!上等や!!ほな行くぞおおおおおお!!!』
割れんばかりの歓声が、簡易闘技場を支配する。それと同時に棺の蓋を抑えていた金色の錠が音を立てて崩れた。
棺の蓋が、ゆっくりと開かれる。中から現れたのはまるで夜の闇の様な真っ暗な煙。それが瞬く間にフィールドを支配し闘技場に夜が訪れる。
死霊系モンスターは日の光の下では存分に力を発揮できない。かつてマインに教えてもらったことだ。
その弱点をまさかこうやって克服してくるなんて。
ガチリ
棺の淵を白い小手に包まれた手が掴む。そしてそいつは姿を現した。
純白の鎧に身を包んだ屈強な身体を持った2メートル程の大男。その鎧は鍛え上げられた業物だということが分かる。
だが、その男に首は無く代わりにフィールドを支配する夜の闇と同じ黒い炎が揺れる。
彼の右腕にはそんな奴の巨体が可愛く見えるほどに巨大な大剣。反対の腕には白い兜を被った白い光を放つ生首が私のことを睨んでいる。
なるほど……確かにあれはそこらの冒険者の死体なんかじゃない。勇者かそれに準ずる強さを持った者のデュラハンなのだろう。
「【観察】」
私はスキルを使用して、目の前のダイヤモンド・デュラハンのステータスを確認した。
【名前】ダイヤモンド・デュラハン
【レベル】98
【アビリティ】
とこしえの闇『フィールドに暗闇効果を永続付与』
英傑の亡者『味方死霊系モンスターの能力及びレベルブースト」
首無し騎士『装備に闇属性付与。闇属性効果のブースト』
【ステータス】
腕力:421
体力:485
魔力:480
俊敏:437
強いとは分かっていた。でも、想像の遥か上の強さだ。
レベル98……それに、全ステータスが400オーバー。
「上等……」
でも、私は怯まなかった。だからこそ、私の神経が研ぎ澄まされていくのが分かった。
これまで敵対してきたロックス以外のどのモンスターよりも、こいつは強い。
それでも負けない。負けられない。マインがここまで私を連れてきてくれた。
そんな私にできることはここで勝利して必ず勇者になることだけ。
「来なさい!ダイヤモンド・デュラハン!!」
私がそう言い放った、まさにその時。
ブンッ
ダイヤモンド・デュラハンが消えた。




