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サポーター。尋ねる

 部屋に戻った後、僕はユーリさんと試験に向けて伝えておかなければならないことを伝えた。


「ユーリさん、これから試験が終わるまでの間……食事、飲み物、道具は全て僕が準備します」


「…………え?」


 僕の言葉にユーリさんはポカンとした顔をする。


「ダメ。マインだって疲れるだろうし……ご飯とかなら宿屋で取ればいいと思うけど……」


「絶対にダメです」


 ユーリさんの心遣いはとても嬉しい。けれど、これについては明確な理由がある。


「いいですか?例え外でどんな美味しそうな屋台があっても。すっっごく素敵なアクセサリーが売っていても。決して手を出してはダメです」


「えぇ!?美味しそうな屋台がたくさんあったのに!?」


 僕の言葉にショックを受けるユーリさん。それを見ていると少しかわいそうな気がしてくるけれど、僕も譲れない。


「何でそこまで……?」


「もう、勇者争奪戦は始まっているんです。当然、大多数は純粋に勇者を目指してここにやって来る冒険者だと思います。けれど、中にはあの手この手で他の候補者を潰そうとする輩もいるんです」


 実際、勇者試験で他の候補者を潰すために酒場の酒に毒を混ぜたり、呪いが付与された宝石を売る冒険者が多くいる。


 それで基本的に冒険者の半数が最初の試験を受ける前に試験から脱落するのである。


「う、うそ……」


 真っ青な顔で僕の言葉に耳を傾けるユーリさん。


 ユーリさんは物の目利きとか、駆け引きだとか。そういったことに疎い。故にこう言った悪意に引っかかる可能性は非常に高いだろう。


「だから、今この時を持って僕がその辺の管理を徹底します。任せてください、どんな些細な違和感でも僕が見抜いてユーリさんを守ってみせますから」


「それで大量の食材とか持ってきてたんだ……」


 重いと文句を言うユーリさんを何とか宥めて持ってきた食材や水などの補給品。それはこの時のため。


 裏方だとか、騙し合いだとか。汚い仕事は僕の役目。冒険者フラムディア・ユーリさんに小汚い役回りなんて似合わない。


 ユーリさんはただ全力で勇者試験に臨んでもらえるようにする。それが僕のすべき事だ。


「……ねぇ」


 そんな僕の話を聞いて、ふとユーリさんが口を開く。


「勇者って……何か、もっと崇高なものだと思ってた」


 ユーリさんの言葉は至極当然の反応だと僕も思った。


 だって、僕らだって勇者を目指していた時はあの輝かい姿に憧れた。


 けれど、実際の勇者は正直汚れていた。


 試験の場ではあの手この手で他者を蹴落とし、勇者になった後はその威光を欲しいがままにして好き放題する輩だっている。


 勇者になるのも名声だとか金のためだとか、そんなのばかり。


 そんな内情を知っているから、僕は慣れているけどユーリさんはそんな事を知らないんだ。


 だから、僕はふと気になった。


「ユーリさんは、どうなりたいですか?」


「どう、なりたい?」


 僕の問いにユーリさんは首を傾げる。


「はい。ユーリさんの目標は、サングライト王国の6神魔王ロックスの討伐です。でも、勇者になったからと言ってすぐにロックスを倒しに行けるわけでもないですし」


 いくらユーリさんが強くても、今やサングライト王国はロックスの根城。敵はロックスだけではない。


 きっと複数の勇者パーティと協力して打倒を目指す流れになるだろう。


「ユーリさんは、どんな勇者になりたいですか?」


 だからこその問い。


 あなたはどんな勇者を目指しますか?


「……どんな、勇者……か」


 僕の言葉を噛み締めるように、ユーリさんは考えるようなそぶりを見せる。


 きっと、改めて考えたこともなかったのだろう。ユーリさんの目的を果たすためにユーリさんは勇者を目指してきた。


 もちろん、僕もそれは間違っていないことだと思うし、曲げてほしいとも思っていない。


 だけど、ロックスを倒せたとして……それで終わるわけじゃない。その先……もっと言えば、それまでの間。ユーリさんは何を思い、どうしたいと考えるのだろう。


「……分からない。考えたこともなかった」


 ユーリさんの反応は、正直予想通りだ。


「ごめん……こんな煮え切らなくて……。幻滅しちゃうよね」


「まさか。そんなことで僕は幻滅したりなんかしませんよ」


 だって、これまで考えるきっかけもなかった話なのだ。むしろいきなり答えを出す方が無責任だと思う。


「ただ、きっかけになればって思っただけです。サングライト王国を取り戻すだけがユーリさんの全てじゃないって。ユーリさんはユーリさんなんですから」


 サングライト王国だけがユーリさんを作るものじゃない。ユーリさんがユーリさんらしく生きられるように。そんなことも考えていてほしいなって思った僕のわがままである。


「ごめんなさい、変なこと言いましたね。とにもかくにも今は目の前の勇者試験に集中しましょう。話はそれからですよね」


「……そう…だね」


 何か思うところがあるような顔をしたけれど、ユーリさんはまたふっと穏やかな笑顔を見せてくれた。

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