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サポーター。ネクステンドへ

 数日間、準備を整えた僕とユーリさんは勇者試験が行われる1週間前にはネクステンドへとたどり着いていた。


 余裕を持って下見をしておきたかったことや、当日に備えて万全の準備を整えておきたかったからだ。


 ネクステンド。


 ここは広大な森の麓に作られた村。


 特に目立った観光名所なんかがあるわけじゃないが、この村はそれ相応の賑わいを見せている。


 理由はこの広大な森だ。


 フィローナの森。別名ディオルマの森。


 ディオルマと呼ばれる強力な食人植物のモンスターが蔓延る森。ネクステンドはその素材を求めて多くの冒険者が訪れる言わば冒険者のための村。


 今回の勇者試験を行う場としてはうってつけだったのだろう。


 僕とユーリさんは近くの酒場で夕食を取りながら試験の日までの計画を話し合っていた。


「ユーリさん。取り敢えずこのフィローナの森に入っておこうと思います」


「どうして?」


 僕の提案にユーリさんは首を傾げる。


「試験の日まで、体を休めたり準備をしておいた方がいいんじゃないの?」


「はい。これもその準備の一環です」


 そう言いながら僕は先ほど村の雑貨屋で手に入れていたフィローナの森の地図を取り出す。


「敢えてこのネクステンドを試験の会場に選んだと言うことは、何らかの形でフィローナの森を活用すると見て間違いないでしょう。ちなみにユーリさんはここに来たことはないですよね?」


「ないけど……何でそう思うの?」


「このフィローナの森……ディオルマの森とも言うんですが、ここは他のダンジョンと違ってちょっと特別なところがあります」


 僕はユーリさんの隣の席へと座り、地図を広げる。当然2人で同じ地図を見ることになるから距離もまた近くなって僕とユーリさんの肩が触れる。


「…………っ」


 その瞬間、ユーリさんの身体がビクンと震える。


「ゆ、ユーリさん?」


「なっ、なななな何!?何でもないから!?」


「は、はい……」


 何だろう……変なツボでも押しちゃったかな?


 少し困惑しながらも僕は再び地図に目を落とす。


「……で、この森の中心にある丸いこれを見て欲しいんですけど」


 地図にはフィローナの森の概要と、その内部にある細い入り組んだ道が記されているのだが、僕が指差すところにはこの森の中央。そこにぽっかりと大きな丸が記されていた。


「この森では、ほとんど異常事態は起こりません」


「へ、へぇ……どうしてなの?」


 何故か声が震えているユーリさん。


「理由は明日、ここに行けば分かりますけど……ユーリさん、どうしたんです?」


 思い返してみれば、このネクステンドに来るまでの道中も突然こうして飛び上がったり顔を真っ赤にして狼狽えているような場面を見かけた気がする。


 まさか、何か体調が悪いことを隠しているとか……?なんてことだ!サポーターである僕がついていながらユーリさんにそんな無茶をさせてしまっていた!?


「ゆ、ユーリさん……もし体調がよくないなら明日はゆっくり休みますか?」


「や、休むってことは……まままマインとずっと宿屋の部屋でお泊まりってこと!?」


「え、あ……はい」


 本当なら2部屋取っておけるなら取っておきたかったんだけど、勇者試験のせいで1パーティ1部屋までという制約ができてしまっていた。


 当然!ユーリさんにはユーリさん専用のお部屋を確保!僕は床でも椅子でもどこでもござれと言うことで何とかしている。


 それに、色々な事態を加味しても僕とユーリさんが同室でいるべきだと言う理由もあった。


「い、いける……!行けるから!明日は絶対にフィローナの森に行こう……!」


「でも、体調が悪いなら無理をしちゃ……」


「体調悪くなんかない!マインの分からず屋!明日は何が何でも行くの!いい!?」


「は、はい」


 何故かすごく圧力をかけられながら僕は頷くしかない。まぁ、当然無茶をするつもりもないし……。本当にダメならユーリさんも言ってくれるはず。


 そう思い直して僕はまた自分の席へと戻るのだった。


ーーーーーーー


 私は思考がまとまらなかった。


 何やってんの……!?マインが折角私のために色々と説明してくれているって言うのに……!


 隣で地図を広げて説明してくれるマインの横顔を眺めながら、私は早まる鼓動を抑えることができなかった。


 マインの説明が半分も入ってこない。肩が触れた。温かい……じゃなくて!?


 あぁ……何で……!?何やってるの!?こんな時に……!


 勇者試験。


 それが、もうまさに目の前に見えていると言うのに。


 マインが説明を終えて自分の席へと帰って行く。


 それにほっとすると同時に、どこか寂しさのようなものを感じる。


 ダメ……何をしてるの。こんなんじゃ……試験に集中できない。ここを逃してしまえば、勇者になんてなれないかもしれない。


 しっかりしなさい、ユーリ!


 今は……今は、勇者試験に集中するの!


 そう自分に言い聞かせながらもユーリは自分の胸に生まれた、新しい何かの感情に振り回されるのだった。

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