女剣士。煮え切らない
私は、1人レベッカの店で座り込んでいた。
いよいよ、この時が来たのだ。私が勇者試験を受けるこの時が。あの娘が眠るあの国を解放するための、大きな1歩を踏み出すこの瞬間が。
夢にまで見た、その時がやってきたと言うのに私の心は何故かここにあらず……と言った感じだった。
「随分、おとなしく収まってるじゃないか」
ずっと私のことを見ていたレベッカはそんな私の違和感に気がついているようだ。
「てっきり、もっと闘争心剥き出しな顔で今か今かと試験の時を待ち望んでんじゃないかと思ったけどねぇ」
「……うん、私も変だと思う」
1番変だと感じているのは私だ。もっと、高まるものがあると思っていた。
待ち望んだこの瞬間のために、落ち着かずに準備を始めたり腕ならしに適当なダンジョンにでも潜っていたかもしれない。
でも、今の私の心を支配するのは「いよいよ来たんだ……」と、漠然とした感覚。
「ダメ……だよね。この時のために私はずっとやって来たんだから。勇者になって、ロックスを殺す。カミラの仇をとる。そのために私はやってきたはずなのに」
そう、私はそのために戦って来た。そしてそれが目と鼻の先に……手を伸ばせば届くかもしれない場所に来た。
そのはずだったのに、どこか煮え切らない自分がいたのだ。
「大丈夫、切り替える。ちゃんと試験を合格してみせる。だから……」
そう言って私は立ち上がる。とにかくマインに任せるだけじゃダメ。私も何かできることをしないといけない。
「武器の準備して来る」
そう言って取り敢えず今は少しでも何かするために私は部屋に戻った。
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そんなユーリを見ながらレベッカはぷかぷかとタバコの煙を無人の店に吐く。
それは音もなく空気に飲まれてどこかへ消えていった。
「…………まぁ、いいのか悪いのか。それは終わった時に分かるかねぇ」
ユーリの変化を、見守るように。余計なことは言うまいと思ってレベッカはふぅ、と息をつくのだった。




