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サポーター。勇者試験を知る

「………………………………」


 全く、眠れない。


 色々あって身体は疲れているはずなのに、僕は全然寝付けないでいた。


 理由は2つあると思う。1つはシデンのこと。


 かつて、僕の全てを捧げてもいいと思った親友は、外道に堕ちていた。どこぞの盗賊と遜色ないほどに。


 そのことはショックだったけれど、おかげでどこか踏ん切りもついたような気がする。


 心のどこかで残っていたわずかな未練も、綺麗さっぱりなくなった。もうこれで僕は何にも縛られずにユーリさんの元でサポーターを続けていけるだろう。


 けれど、問題はもう1つ。ユーリさんのこと。


 突然分からず屋と言われ、放り出されてしまった昨日の僕。


 なんて事なんだ。僕はユーリさんのサポーターとしてやっていくと誓ったなのに、ユーリさんのことで分からないことが出てきてしまったなんて……!


 まだまだ僕はサポーターとして未熟。ユーリさんのよりよい冒険者ライフのためにもっと精神を研ぎ澄まさなければ……!


 そんなことを思っているうちに、カーテンの隙間から朝日が差し込んでくる。


 しまった。徹夜してしまった。


「……しょうがないか」


 もう、寝付けないしとりあえずギルドに顔を出してクエストの情報だけでも見ておこう。今日はまだ休みの予定だし。


 ある程度収入は安定してきているが、まだまだ安泰とは言えない。


 だから僕は装備やアイテムにお金を割いてユーリさんの冒険の基盤をより強固なものにすることに専念している。


 家もリアさんが手配してくれたギルドの安い宿舎を利用。壁は薄いし隙間風も吹く最悪な環境だけど、その努力の甲斐もあって今のユーリさんは十分に安定した態勢を取れているし、この前クリアしたマンティコアの討伐クエストで勇者試験への挑戦資格も手に入れることができた。


 後は勇者試験が出されるのを待つだけ。


 だが、勇者は当然歴戦の強者。そう簡単にその資格を失うもんじゃない。だからそう易々と試験がでてこないのだ。


 前に試験があったのはもう3年も前になるだろうか。


 だから、僕らがやるべきことはいつ勇者試験が起こってもいいようにクエストをこなして力を蓄えていくこと。


 そのために必要なのは装備とお金を貯めていくことか……。


 何てことを思いながら、ギルドの案内板へ辿り着いた僕はふと違和感を覚えた。


 妙にギルド全体が騒がしいのだ。


「マインさん!マインさん!!」


 何事かと思ってるいると、人混みを掻き分けながら金髪のポニーテールを揺らしたリアさんが僕の方に向かって駆け寄ってくるではないか。


「どうしたんです?何か緊急クエストでも……」


「ついに来ましたよ!マインさん!!」


 僕の言葉を遮るようにリアさんは薄橙色の紙を僕に見せつけてくる。


「……………………え」


 その紙は、今から数年前。かつての友と一緒に見たそれと同じ物。


 そこには大々的に僕が待ち望んでいた言葉が刻まれていた。




「勇者試験……!?しかもネスクテンドで!?」


 


「【雷の勇者】シデンが勇者を除名され、その後釜の勇者を決めるために開催されるようです!!ついにユーリさんが勇者になれるチャンスですよ!!」


 僕の全身の神経が研ぎ澄まされていくのを感じる。


 来た……。


 ついに来た……!!


 勇者試験が開催される!!


「は、早く申し込まないと……!」


 勇者試験の申し込みは一瞬。あっという間に枠が埋まってしまう。


「安心してください、私がもうすでに申し込んでおきましたから」


 慌てて書くものを探していると、リアさんがこっそりの耳元でそう囁く。


 ほんのり香る甘い香りに思わずドキリとしてしまった。


「え……で、でも……」


「本当はダメなんですけど……絶対マインさんなら受けるというと分かってたので。無理してお願いしちゃいました。だから……」


 リアさんは僕の手をギュッと握りながら、いつもの軽い感じじゃなく、真剣な目で告げる。



「必ず……また勇者パーティになってください。ユーリさんと一緒に、今度こそ最高の勇者に……」



「リアさん……」



 リアさんの想いを受けて、僕の目尻に熱いものが込み上げてくる。


 ありがとうリアさん。必ずユーリさんを勇者にします。あの日立てた誓いを果たして見せます。


 リアさんから受け取った勇者争奪戦の紙を握りしめて、僕はユーリさんの元へ。レベッカさんのお店に向かって走り出した。

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