サポーター。スカウトされる
ギルドについた僕は半ば魂の抜け殻のように白目を剥きながらリアさんにぐわんぐわんと揺さぶられていた。
「マインさん!無事でしたか!?」
赤髪の女性の肩の上で縦横無尽に振り回された僕の三半規管は破壊され、道中に意識を置いてけぼりにしてきてしまったようだ。
「あぁ……ありがとうございましたユーリ様」
「……ユーリ?」
まだぼんやりする頭で僕はリアさんが呼んだその名を反復する。
「いい。仕事だから」
僕をここに運んだ女性、ユーリさんは淡々とそう告げる。
「……はっ。そうだ、僕どうして?」
ここでようやく我に帰った僕は改めて目の前に立つ彼女に目を向ける。
燃える太陽のような真っ赤な髪。それはまるで絹のように美しく、腰ぐらいまでの長さだ。
真っ赤な髪とは対照的な空のように美しい蒼い瞳。その瞳はこの世界のどんな宝石よりも輝いているように見える。
比較的軽装な装備で身を固め、背中には一本のアイアンソード。細くしなやかな身体つきでモデルのような体型。それに……すっごく美人だ。
「ギルドからの依頼。ゴブリンの森にゴブリン・ロードが現れたから、討伐してくれって。そしたらそこにあなたがいただけ」
「そ、そうなんですね……。でも、助かりました。本当にありがとうございます!」
そう言って僕は深々とユーリさんに頭を下げる。
きっと彼女が来てくれなかったら今頃ミンチになっていたことだろう。文字通り命の恩人だ。
「本当に良かったです、ゴブリン・ロードに襲われて生きてるなんて……。冒険者でも手を焼く相手ですよ?」
「……っ!?」
すると、リアさんの言葉を聞いたユーリさんが動揺したような素振りを見せる。
「あなた……冒険者じゃないの?」
「あ、いえ。サポーターなんです。一緒にパーティ組んで貰ったんですけど……実は」
そう言いつつ先程のロッド達とのやり取りをユーリさんとリアさんに説明する。
「そ、そんな!冒険者が人攫いなんて……ごめんなさい!私がちゃんと気づいていればこんなことには」
そう言ってリアは両手で顔を押さえて体を振るわせる。
あ、あぁ!?泣かせてしまった!?
「い、いえ!僕のために迅速にやってくれた結果なんで……気にしないでください!むしろ、気づけなかった僕が悪いので!!」
慌てて僕はリアさんをフォローする。
「マインさんがそう言うなら……」
そう言って儚げな声でリアは告げる。
「……心なしか、少し切り替え早くないですか?」
「てへっ。何のことですか?」
リアさん……さてはそんなに気にしてないな?
「……ねぇ、サポーターって何?」
そんな僕とリアさんのやり取りを見ていたユーリさんがふと問いかけてきた。
「あ、サポーターって言うのは冒険者をサポート……一言で言えば冒険者を影から支える仕事です」
「支える……」
サポーターの説明を聞いたユーリさんが何やら考え込むよな素振りを見せる。
でもおかしいな。サポーターなんて冒険者なら誰でも知っているようなことだと思うけど……。
「はい。マインさんはあの勇者シデン様のパーティで7年もサポーター一筋でやってきたベテランさんなんですよ!」
「い、いやいや……そんな大風呂敷引かないでくださいよ。そのシデンから追い出されて、今しがた新しくパーティを組んだ人に売り飛ばされてしまうところだったんですから……」
正直今の自分の立場が惨めで惨めで仕方がない。
仲間からは捨てられて、そして挙句の果てに新たに見つけた仲間からも売り飛ばされそうになって……。
もう、僕はこの世の誰にも必要とされてないんじゃないかって……そんな風にさえ考えてしまいそうだった。
そんな風に肩を落とす僕に向けて、目の前のユーリさんが口を開く。
「……ねぇ。じゃあ今あなたどこのパーティにも所属してないの?」
「え?は、はい」
あんなことがあって、ロッドとなんてこれ以上関わりたくもないし、今日の話は当然破談。
再び僕は無職のサポーターに再就職してしまったわけだ。
「じゃあ、私のところに来て」
「……え?」
突然の申し出に僕は唖然とする。
私のところって……え?サポーター契約してくれってこと!?
「じゃ、そう言う事だから」
ガシッ
「……へ?」
僕がまだ状況を飲み込めずに腑抜けているとそのままユーリさんは凄まじい力で手を引っ張る。
「え……えっえっえ!?ちょちょまっまっまっ!?」
「いいから。説明はレベッカがしてくれるから」
「レベッカ?だっ誰?」
「……いいから来て」
「あ…あぁぁぁあ……」
「ま、マインさん!?」
ダメだ……。この人、全然話を聞いてくれる気配がない。
つい先程、裏切られたばっかりでいきなり次の契約とか……正直気が進まないんだけど。
かと言ってもう逃してくれそうな気配もないので僕は彼女になされるがまま連れていかれるのだった。




