サポーター。伝える
シデンを打ち負かしたユーリさんは僕の手を強く引きながら街を突き進む。
「ゆ、ユーリさん!?」
何も言わず、ただただ黙って歩くユーリさんに僕は声をかける。
「あ、あの……!」
けれど、ユーリさんは何も言わずにただただ先へ先へと歩き進めていく。
一体、どうしちゃったんだろう?
しばらくユーリさんになされるがまま引っ張られていると、ユーリさんは人気が薄れてきた街角で突然足を止めた。
「……ごめん」
すると、俯きながらどこか元気のない声でユーリさんは告げる。
「マインが……元の仲間の所に戻るチャンス……奪っちゃった」
「え……?」
ユーリさんは僕の方を向かなかったけど、その肩は震えているように見えた。
「ごめん……私のせいで台無しにした。せっかくマインの仲間があなたをもう一度仲間に引き入れようとしてくれてたのに。でも…でも……!嫌だった。マインに行ってほしくなかった!」
ユーリさん……泣いてる?
「あんな……あんなマインのことをバカにする奴らのところに……ううん、違う。そうじゃなかったとしても、マインがどこかに行っちゃうって思ったら……止められなかった」
僕の手を握るユーリさんの力が自然と強くなる。
「ごめん……取り返しのつかないことしちゃった。本当に……」
「……スカッとしました」
「……え?」
僕の言葉を聞いてユーリさんは振り返る。
涙で濡れた瞳が僕のことを映し出していた。
「むしろ……嬉しかったです……ユーリさんが僕のことを必要してくれたことが」
「嬉し……かった?」
僕の言葉にユーリさんは驚いた表情を見せる。
「だって……あの男はマインの親友だったんでしょ!?仲直りするチャンスだったのに……私がわがまま言ったせいで全部台無しに……!」
「忘れないでください、ユーリさん」
叫ぶように告げるユーリさんの手を、僕はそっと両手で包む。
そして、真っ直ぐに。ユーリさんに僕の等身大の気持ちが伝わるように、その空のような瞳を見つめ返しながらあらんかぎり想いを込めて言った。
「僕はあなたの……いえ、もうあなただけのサポーターなんです。あの日あの時……ユーリさんが僕に生きる意味をくれたんです」
全てを失ったと思った僕のことを、必要だと言ってくれた人。
あの瞬間から、僕の心はもう決まっている。
「ユーリさんは僕を必要と言ってくれた。その言葉がある限り僕はずっとあなたのものです。ユーリさんが僕を必要としてくれる限り、僕はどこにも行かない。最後の瞬間までずっと側でユーリさんを支えます」
「マイン……」
「だから、そんな顔しないでくださいよ。ユーリさんの美人な顔が台無しですから」
「〜〜〜〜〜〜〜っ」
僕の言葉を聞いて、ユーリさんの頬が真っ赤に染め上がる。
「だ、ダメ……」
「……え?」
「だ、ダメ!見ちゃダメ!!」
すると、ユーリさんは僕の手を振り払い、顔を両手で隠してしまった。
「え、どうしたんですか!?」
え……何々!?どうしたんだユーリさん!?
も、もしかして……僕キモイ事言っちゃった!?
「ま、マインの分からず屋!!」
「なんですと!?」
「も、もう知らないから!今日は私帰るから!!」
「え……えっ、えぇ!?そんな!?置いていかないでください!!ユーリさぁぁん!?」
そして、クルリとその身を翻したかと思うとそのまま疾風の如くユーリさんはその場を駆け出してしまった。
ーーーーーーー
私は顔を押さえながら街を走り抜ける。
奇異の目で見られても、今ばかりは全く気にならなかった。
ダメだ……見れない。なんで!?マインの顔を見たら……心臓が弾けちゃいそう。
あぁ……マインを残してきちゃった!でも……でも、引き返せない!!
「何……何なの、この気持ち……!」
高鳴る鼓動に翻弄されながら、私は逃げるようにしてマインを残してその場から走り去った。




