女剣士。喧嘩する
雷の勇者シデン。
若くしてその栄光を手にした彼らのプライドは高い。
ユーリさんのたった一言の挑発は簡単に彼らの怒りに火をつけた。
「上等だ……このクソ女。てめえが負けたら身ぐるみ全部置いてってもらうぞ……」
「そーよ。あんたが吹っかけてきたんだからね?」
「殺されても文句は言えんぞ」
どっちが仕掛けてきたんだ!と僕は言い返したくなった。
けれど、ユーリさんがそれを目で止める。
口出ししないで、と。僕にはユーリさんの目を見るだけでそれが分かった。
分かったけど……。
「ユーリさん……」
外道に成り果てたとしても、腐っても勇者のパーティ。
僕は一抹の不安を抱えていた。
ユーリさん……怪我しないといいけど……。
レックスとシデンを前衛。後衛にミーアが立つ形で陣形を取る3人。
対するユーリさんは……。
「……あ?舐めてんのか?」
鞘にしまったままの大剣を構えた。
「ひゃっはぁ!!死ねぇ!!」
すると、レックスがユーリさんの方に向けて突っ込んでくる。
「ユーリさん……!」
「分かってる。マインは黙ってて」
あれはレックスの陽動。ああやって敵の注意を引いてシデンの攻撃を通す為に動く。
レックスの陰に隠れながらシデンはユーリさんに迫る。
「雷鳴剣!」
「金剛打突!」
シデンは剣に稲妻を乗せた一撃を。レックスは身体を硬質化させながらユーリさんにタックルをかましてきた。
「そんな単調な攻撃……スキルもいらない」
ブンッ!!
「「な……!?」」
対するユーリさんは、陽動に引っかかることもなく迫る2人の攻撃をヒラリと躱す。
「ふんっ」
ズドオッ
「がへっ!?」
硬質化したレックスにユーリさんは剣を振り下ろす。
その圧倒的な一撃は耐久が売りのレックスを一撃で沈めてみせた。
「な……!?」
パーティの壁が一撃で陥落した姿を見てシデンは明らかに動揺した。
「……ふふっ」
けれど、後方にいるミーアはそれを見て不敵に笑う。
隙だらけよ?
「【メテオ】!」
ミーアはレックスを倒したユーリさんに向けて巨大な火炎球を放つ。
「……っ」
しかも、街中で。レックスはおろか他の街の人々まで巻き込まんとする程の火力でだ。
「さぁ、避ける!?避けたら街の誰かが死ぬけどぉ!?あんたのせいでねぇ!!」
「あなた達、ほんとに勇者パーティなの?」
呆れた様子で告げるユーリさんは鞘に入れたままの大剣を構える。そして。
「マイン!」
「はい!任せてください!!」
僕に一言合図。それだけで僕はユーリさんが何を求めているのかが手に取るように分かる。
それを確認したユーリさんはミーアのメテオを大剣で切りつけた。
ゴッ!!
斬られた火球は弾け、ユーリさんの後方に流れる。
「う、うわぁ!?」
「きゃぁあ!?」
野次馬達の元に襲いかかる炎の波。
「どいてください!」
そこに僕は颯爽と飛び出すとバッグの中から小瓶に入った銀色の粉をばらまいた。
パチパチパチッ!!
それはまるで爆竹のように弾けて炎の残滓を消滅させていく。
これは【妖精の粉】。魔法耐性のある妖精の羽から取れるこの粉は魔法を弾く特性がある。
強力な魔法は無理だけど、ユーリさんが威力を殺してくれた魔法ならこれで無効化することが出来る。
「ちっ。あの役立たず!」
そんな僕に舌打ちをするミーア。
ふざけるな。僕はミーアの失態の尻拭いをしたってのに!
「ふんっ」
そんな隙だらけのミーアにユーリさんは自分の大剣を投擲。
ゴゥゥン!!
スキル【強投】。
豪快に撃ち放たれた大剣はまるで大砲のようだった。
「え……!?ギャァァァア!?!?」
そして後衛のミーアはそれを避ける隙もなく、ボカンいう破裂音とともに吹っ飛ばされることになった。
「この……!だが、隙だらけだぜぇ!!」
剣を捨て、丸腰となったユーリさんにシデンが斬りこんでくる。
「死ねえっ!!【ライトニング・ストーム】!!」
「え……?」
「……?」
高らかに叫びながら突っ込んでくるシデン。
しかし、彼のスキルは発動しない。ただ無駄に大ぶりになった剣がユーリさんに襲いかかるだけ。
「ふっ」
ゴッ!!
「ぐへぇあ!?」
そんな無駄な剣撃は軽々とユーリさんに躱され、その腹に重い重い回し蹴りを受けることになった。




