サポーター。かつての仲間と再会する
僕は思わず人波をかき分けて視線の集まる場所へと飛び出していた。
嘘だろ……?あのシデンが、中級クラスのダンジョンを失敗した!?
そんなはずない。だって彼はレベル60を超える期待の新人だったはず!それが……まさか、そんなわけが……。
群衆をかき分けたその先。
僕の目に飛び込んできたのは……。
「……っ」
血泥に塗れ、痩せこけたかつての友の姿。
髭は不精に伸びていて清潔感のカケラもない。かつてキラキラと輝いていた装備もどこに行ったのか。装備しているのは貧相な粗悪品ばかり。
下手をすれば盗賊……いや、それ以下のようにも見えた。
そのシデンの後に続くのは、ボロボロのローブに身を包んだミーア。綺麗にケアされていた自慢の髪も傷み切っていてボサボサ。
見る者が振り返るほどの美貌も今では見る影もなく、げっそりと痩せこけてアラレもない姿となっているではないか。
最後尾を歩くのは、ズルズルと足を引きずりながら剣を杖代わりにしている細身の男……。
え、違う。あれ……もしかして、レックス!?あの筋骨隆々なガタイの良かったパーティの防衛線と言っても過言じゃない豪傑のレックス!?
「し、シデン……?」
僕は半ば呆然としながら変わり果てた友に声をかけていた。
「…………………………あ?」
血走った目でシデンが僕の方に目を向ける。
そう、目を向けたのだ。
間違いない。正直半信半疑だったけど、この目の前にいるのはシデンだ……!
「……てめぇ、まさかマインかよ」
「う、うん……そう…だけど……」
「マイン……?」
シデンと言葉を交わす僕に彼の後ろを歩くミーアとレックスも顔を上げる。
「い、一体何があったんだよ……こんな……見窄らしくなって」
「ひ…ひひ……いいところにいやがったな……グズサポーター」
すると、僕の顔を見るなりシデンは僕の肩を掴む。
「随分……随分元気そうじゃねぇか……えぇ?どうせくだらねぇ雑用ばっかして日銭稼いでんだろ?」
「な、何を言うんだ。僕は……」
「皆まで言うんじゃねぇ……。俺らは優しいからな……」
かつて、支えたいと思ったはずのシデンに僕は何故か心の底からの嫌悪を感じる。
「なぁ……マイン。お前の有金、全部俺によこせや。そうすりゃあまた、俺達のパーティで使ってやる」
「……っ!」
使って…やる……?
「役にたたねぇサポーターのお前なんざ、誰も必要としてねぇんだ……喜べよ、俺らが面倒見てやるんだ。だからその薄っぺらい財布を出せよ。契約料だ。それを払ったらまた下僕にしてやるからよ……」
何だ……こいつは?
僕の頭にそんな言葉がよぎった。
本当に……これはシデンなのか?
確かに……僕らが出会った頃とシデンは変わってしまった。だけど……だけど、こんなクズに成り果ててしまったのか?
「おら……何とか言えよ!グズ!」
「そうよ……とっとと出すもん出しなさいよ……!あんたの雇い主様が困ってんのよ?」
「何もないお前にできる事は……俺達に尽くすことだけだろうが……おら、泣いて喜べよ!頭を下げろ!!『僕をあなた達の家来にしてください』ってなぁ!!」
シデンに呼応するようにミーアとレックスも告げる。
その醜悪な姿に僕はこれまで出会ったどのモンスターよりも明確な嫌悪感を感じた。
「は、離してくれよ……」
「あぁ!?おい……まさかてめぇ、俺に逆らうつもりか!?」
振り払おうとするけど、所詮僕はサポーター。ここまで落ちぶれていてもレベル60越えのシデンのステータスで掴まれてしまえば逃げられない。
「だったら!また分からせてやらなきゃならねぇなぁ!!てめえの主人が誰なのか!!お前の立場って奴をよぉ!!」
そう言って、シデンが拳を硬く握って僕に殴りかかってきた。
バシィッ
「…………あ?」
その時。僕の後ろから伸びてくる1つの手。
それが僕に振り下ろされる腕を掴んだ。
「ゆ、ユーリさん……」
「……………………」
振り返らなくても分かる。
背中からビリビリと空気を引き裂くようなオーラを感じる。
間違いなく、ユーリさんがブチギレている。
「んだてめぇ……こいつの女か?」
「あ……知ってるその女。確か【血塗られた女剣士】とか言われてるはみ出し者よ!」
シデンの背後からミーアが指をさしながら告げる。
「……ぷっ。ギャハハハハ!!おめぇ、まさかこんな訳あり女ん所でサポーターやってんのか!?」
それを聞いたシデンがこちらをバカにするように笑った。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
その瞬間。僕の頭が沸騰したように熱くなる。
ユーリさんを……ユーリさんを、けなしたな!?
「取り消せ!!」
「………………あ?」
僕の言葉を聞いてシデンは不機嫌そうに僕を見下す。
「僕のことは何だっていい!!だけどユーリさんをバカにすることは許さない!!」
「何?何熱くなってんのこいつ」
ケラケラと笑いながらミーアがそんなことを言う。
「ユーリさんは最高の冒険者だ!!お前達なんかと比べる価値もないほどに素敵な人だ!!取り消せ!!」
かつての仲間に同情する気持ちがあったはずなのに、そんなものはどこか彼方へと消え去ってしまう。
僕の大切な人を、バカにするこいつらに同情する余地なんかない。
「ギャハハ!随分と飼い慣らされてるみてぇだな!えぇ?弱みでも握られたか?……いや、童貞捨てさせてもらったか!!それでしっぽ振ってワンワン吠えてるわけか!!」
「うわ〜……キモっ。こんなアバズレに心酔してるなんて、人として生きてて恥ずかしくないの?」
ふざけるな!ユーリさんはそんな人じゃない!!
絶対許さない……!僕のこの身を捨ててでもお前たちにギャフンと……。
グイッ
「え、うわ!?」
その時。ユーリさんが僕の肩を掴んで引っ張る。
「ゴチャゴチャうるさい」
そして、僕の代わりにシデンの前に割りいった。
「冒険者なんでしょ?下らない口喧嘩してるぐらいなら……かかってくれば?」
「……はぁ?」
「何言っちゃってんの、この女?」
ユーリさんの強気な態度を嘲笑うシデン達に、ユーリさんはたった一言、こう言った。
「何?ビビってるの?」
「「「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」」」




