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サポーター。知って欲しい

 少女の家から帰路に着く僕達。


 僕は横を並んで歩くユーリさんを眺めていた。


 ユーリさんは女の子に握られていた手を見ながらボーッとしたように歩いている。


「……ねぇ、マイン」


 そして、おもむろにユーリさんは口を開いた。


「これが……マインの狙いだったの?」


「……どうなんですかね」


 自分の手から目を離したユーリさんはジト目で僕のことを見つめてくる。


 そんなユーリさんが微笑ましくて僕はまた笑う。


「別に……狙いがあったとか、実はそんなたいそうなものじゃないんです。ただ、ユーリさんに知っていてほしいなって思っただけなので」


「何を知って欲しかったの?」


 今回の僕の想い。それは……。



「クエストの向こうには……人がいるんだって事です」



「……?」


 僕の言葉にユーリさんは首を傾げた。


「勇者は……いえ、冒険者って、ただモンスターを狩るのが仕事じゃないです。ただクエストをこなすわけでもない。沢山の人を助けるその栄誉と、そして羨望の象徴なんです」


「そ、それは分かるけど……」


「だから、知っていてほしかったんです。クエストって、モンスターを狩るためにだけに受けるんじゃないんだって。どんなクエストにも困っている人がいて、それを助けるために僕ら冒険者は戦うんです」


「……っ」


 僕の言葉を聞いてびっくりしたような顔をするユーリさん。


「だから……今回のクエストなら、ユーリさんに知ってもらえるかなって……そう思ってこのクエストにしたんです」


 これまで、モンスターを狩るためだけにクエストを受けてきたユーリさん。


 戦いに身を投じる生き方しかできなかったってレベッカさんから聞いた。


 その時、僕は思ったんだ。


 そんな、血生臭い人生をずっと送ってほしくないって。


 サングライト王国で、ユーリさんに何があったのかは分からないし、そんな軽々しく語れるようなものでも、割り切れるものじゃないことは分かってる。


 きっと、ユーリさんは生まれ故郷のことを捨てて生きていくことはできないだろう。


 だけど……それでも。少しでもユーリさんの進む未来が明るいものであってほしい。


 『血塗られた女剣士』なんて忌名で呼ばれるんじゃなくて。血を血で洗うような凄惨な未来なんて嫌だ。


 誰かのために……戦えるユーリさんで、いて欲しい。


 そう、今回のクエストを受けたのはとどのつまり僕のわがまま。


 しがないサポーター風情が分不相応に主人にこんなふうに生きて欲しい……こんなことに気づいて欲しいって、少しでしゃばっただけなのだ。


 リアさんが言うような狙いとか、そんな大層なものじゃない。


「だから……ごめんなさい。こんな僕のわがままに付き合わせちゃって……」


 だから、僕はユーリさんに深々と謝罪した。


「……別に、いい」


 そんな僕にユーリさんは答える。


「大変だったけど……無事に終わったから、もういい。次からはちゃんとしたクエストを受けてくれるんでしょ?」


「はい。もちろんです。ここからはノンストップで……最短でユーリさんが勇者になれるように、全力でサポートします」


 コクリと僕は頷きながらユーリさんに宣言する。


「……そ」


 そう言ってユーリさんはまた歩き出す。そんなユーリさんの背中を僕は追いかけた。



「……たまに」



 そんな僕に、ユーリさんは振り返ることもなく言った。




「たまになら……あんなクエスト、受けてもいいから」




「……はい。分かりました」



 夕陽に照らされた2人の影が重なる。


 すったもんだあったけれど。それでもまた2人寄り添うように。


 同じ方向を向いて、また歩き出すように。


 お互いに、何か新しい想いを胸に抱いて。


 これが、また僕らの新しい一歩の踏み出しだった。

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