サポーター。提案する
西の展望台を僕は光のように駆け上がる。
……光は言いすぎた。僕のステータスじゃせいぜい風くらいか。いや、風も言い過ぎか。
とにかく僕は人気がまばらな展望台の上まで駆け上がって辺りを見渡す。
そこには熱く愛を確かめ合うカップル達がちらほらいるけれど、僕はそんなこと一切気にならなかった。
ただ、ユーリさんのことで頭がいっぱいだった。
「……っ!いた!」
すると、展望台の端っこの方。この夕日のように、真っ赤な髪を揺らす寂しげな背中を見つけた。
「ユーリさん!!」
僕はその儚げな背中に駆け寄りながら声を上げた。
「……っ、ま、マイン?」
ユーリさんは驚いたような顔で僕の方に目をやる。
その目は、少し目尻が赤くなっているように見えた。
「あ…あの……!」
乱れた息を整える間もなく、僕は口を開く。
言わなきゃならないことを。僕がしてしまったことを詫びるために。
僕は頭を勢いよく下げながら叫んだ。
「「ごめん(なさい)!」」
「「…………え?」」
僕は思わず顔を上げる。
そこには同じく目を丸くしたユーリさんの顔があった。
「あ…あの……何でユーリさんが謝ってるんです?」
「そ、それは私のセリフ。何でマインが謝ってるの?」
お互いに呆然としながらそんなことを言い合う。
「だ、だって!僕はユーリさんのその鎧が大切なものだってことを知らずに買い換えた方がいいだなんて……酷いことを言ってしまいました!!」
「わ、私だって!マインが私のことを思って言ってくれたのに……文句ばっかり言ってマインのこと傷つけちゃったから……!」
「何言ってるんですか!ユーリさんは一切悪くない!悪いのは僕ですよ!!」
「違うもん!マインは私のことを思って言ってくれただけでしょ!?悪いのは私だから……!」
そうしてまた僕らはやいやいと言い合いをする。
そして……。
「……ぷっ」
「……ふふっ」
「「あははははっ」」
お互いに、笑顔を交わした。
「マインのバカ」
「それはお互い様ですよ」
くすくすと笑い合いながら僕らはそんな軽口を叩きあった。
「ごめんなさい。僕がちゃんとユーリさんの事情を聞けばこんなケンカ、起こらなかったのに」
「ううん。私がちゃんとマインに言えばよかった。レベッカが言ってくれたの?」
「はい。教えてもらいました。そのライトアーマーが、大切な人から貰ったものだって」
「……うん。そうなの」
ギュッと、その銀に光る胸のプレートに手を乗せながらユーリさんは語る。
「すっごく……優しい子だった。1人で突っ走る私の後を、いつも追いかけてきてくれた。私なんかと違って、いつも笑顔で明るくて……。彼女の周りはいつだって笑顔で溢れてた」
「すごく……素敵な方だったんですね」
「うん……でも……」
ユーリさんは、僕の方に目を移しながら語る。
「やっぱり、いつまでもそれにこだわってちゃダメだと思う。私のわがままにマインを巻き込む訳にはいかないから……だから、ちゃんと新しい防具を買う。だから……」
泣きそうな顔で告げるユーリさん。でも、僕はそれを是とはしない。
「ダメですよ!ユーリさん!!」
今にも泣き出しそうな彼女の顔を見て、そんな決断なんてさせられない。
いや、させてたまるものか!
「そんなこと、僕が許しません!ユーリさんにとってかけがえのないものを手放すなんて、絶対にダメです!」
「な、何言ってるの!?それじゃあマインが危ないことになるかもしれない!これは私のわがままだから!別に捨てるわけじゃないし、大切に取っておくから普段の装備くらい変えても……」
今度は当初とは真逆の立場でまた口論が始まる。
きっと、ユーリさんは僕のことを考えて言ってくれているんだろう。
素直にその気持ちがとても嬉しかった。
嬉しかったからこそ、僕は決して引けなかった。
「ユーリさん、忘れないでください」
泣きそうなユーリさんに、僕は告げる。
「僕は、あなたのサポーターです。いつだって僕はユーリさんを支えます。ユーリさんの本当の想いを支えることだって僕の役目なんです。だから……」
僕は困惑するユーリさんの手を握って歩き出す。
「確かに、そのライトアーマーは古くなってきています。これから先のことを考えたらこのままじゃいけないです。だから、こう言うのはどうですか?」




