サポーター。新たな一歩
半狼の王を討伐し、晴れて僕はユーリさんのサポーターとなった。
僕が新たな人生のスタートを切ってはや1週間が経ったこの日。
賑やかな街の喧騒に囲まれながら僕とユーリさんは街のど真ん中で……。
「もう!マインの分からず屋!!」
「どっちがですか!?分からず屋なのはユーリさんの方ですよ!!」
僕らは人目も気にせず声高々に喧嘩をしていた。
ーーーーーーー
ことの発端は数時間前のこと。
僕の右手が治るまでは次のクエストを控えてくれていたユーリさんから連絡があったのだ。
「道具の調達ですか?」
「そう。もうすぐマインのケガも治るって聞いたからそろそろ準備するに越したことはないかなって」
新たなクエストに向けての資材調達。
前のクエスト以来僕のカバンはすっからかん。
回復薬だの何だのと言った必需品すら枯渇している状態だった。
「前までは私が1人で調達してたんだけど……」
「あぁ……理解しました」
そう、ユーリさんはここいらの商人の間ではちょっとした有名人。世間知らずな彼女に物の適正価格だなんて分からない。
だから言い値でカモられてこれまで散々な目にあってきたという過去を持っている。
僕としてもユーリさんと一緒に買い物に行けるというのなら安心というものだった。
「分かりました。でしたら今日の午後にでも行きましょう。次のクエストはどんな物にするかは決まっているんですか?」
「うーん……大まかには。でもまだ決めかねてるって感じ」
クエストによってまた必要になるものも変わってくるだろう。だから今回の買い物は最低限必需品を揃えるぐらいでいいかな。
「後は、マインの装備も整えておこうかなって思って」
頭の中で大体どれくらいの金額になるか計算していると、ふとユーリさんがそんなことを言ってきた。
「え……僕の装備ですか?」
「うん。マインの装備って……ギルドから最初に支給されたナイフだけでしょ?」
かつてシデンのパーティに所属していた僕の装備は綺麗さっぱりシデン達に回収されてしまった。
ギルドは盗賊に身ぐるみを剥がされたり武器を失って路頭に迷う冒険者を援助するために武器の支給を行ってくれているのだ。
まぁ、もちろん性能は最悪で粗悪品ばっかりなんだけれど。
「でも……僕まだ全然お金がないんで、またの機会で構いませんよ?」
ユーリさんと契約したけれど、まだまだ懐に余裕がある訳じゃない。
いつまでもギルドに住まわせてもらうわけにもいかないし、いずれどこかに部屋を借りる必要が出てくる。
その時に向けてお金を節約しないといけないし、なんなら弱い僕はその足りない力を道具でカバーする必要だってある。
今、焦って装備を整えておく余裕はないのだ。
「ううん。これは私からのお祝い……かな?マインが私のサポーターになってくれたから、マインの装備を揃えてあげたいなって思って……」
「え……」
僕は思わずポカンと口を開けてユーリさんの顔を見つめる。
「ご、ごめん。図々しかったかな……?」
僕の反応を見て、ちょっと困ったように告げるユーリさん。
「い、いえ!そんなことは……ただ、その……とっても嬉しくて……」
そんな……僕なんかのために装備を揃えてくれるだなんて……。
シデンとパーティを組んでいた頃なんか、僕はサポーターだからパーティの予算として装備を整えてもらったことなんてない。
いつも自分の給料から捻出していたのに……。
そんな神のような高待遇に僕は思わず涙すら流してしまいそうなほどに嬉しかった。
「……そ。よかった」
ユーリさんは別にどうってことないような風を装ってそんなことを言う。
……ちなみに、口元が緩んでいるのは見え見えだったりする。
「じゃあ、昼の1時に中央広場で待ち合わせしましょう。ユーリさんと買い物に行けるのが楽しみです」
「ふ、ふーん。ならよかった」
そんな風に照れているユーリさんが可愛いなぁと思いながら僕はユーリさんを見送るのだった。




