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雷の勇者。怒る

 【雷の勇者】。名をシデンといった。


 俺は長年目障りだったサポーターをパーティから追い出し、ようやく完璧なパーティを結成した。


 あんな雑魚がいるせいで、こっちは被害を被ってばっかりだったんだよ。


 経験値の配分は減るし、報酬も減る。


 それでいて俺達に生意気な口をききやがる。俺たちがいねぇと何もできないくせに。


 そう、だからあの役立たずさえ追い出せばまた俺達は高みへと行ける。


 これまであいつに吸われてきた俺達の戦果を、しっかりと手にすることができる。




 そう……思っていたのだ。




「おい、どうなってんだこれは?」



「そ、それは……」


 俺は怒りで肩を震わせながら、仲間の1人、アーチャーのブラッドを睨みつけていた。



「何であの役立たずがいなくなってから!俺達のパーティは赤字続きになってんだって聞いてんだよ!!」



 そう、マインが抜けた事で本来充実するはずのパーティの資産。


 あの役立たずに回す分の金が浮くはずだったと言うのに、何故か見る見る金が枯渇してきたのだ。


「お前……まさか俺達の金をネコババしてんじゃねぇだろうな?」


 新たに金銭管理を任せたブラッドの胸ぐらを掴み上げながら俺は機嫌の悪さを隠そうともせずに告げる。


「ち、違う……!そんな事するわけねぇだろ!?ただ……」


「ただなんだ!?言ってみろ!!」


 目を泳がせながら何かを言おうとするブラッドを壁へと叩きつける。


 ブラッドは震え上がりながら懐から1枚の紙を引っ張り出した。



「しゅ……出資が馬鹿みたいに増えたんだよ」



「あぁ!?んなわけねぇだろ!?これまでと変わらねぇ分しか注文かけてねぇよ!!」


「じゃ、じゃあこれ見てみろよ!!」


 ブラッドは泣きそうに叫びながら俺に紙を突きつけてくる。



「な……!?」



 そう、そこにはこれまでと変わらない量の道具を買っていると言うのに、なぜか値段が倍にも跳ね上がった領収書があった。



「お前……まさかぼったくられたってのかよ!?」



「ち、ちげぇよ!普通にギルドの店で買ったんだよ!!なのに……なのに……」


 見たところ、請求書には公式のギルドの店の名が記されている。ブラッドはどうやら嘘はついていないようだった。


 何故だ……?何故、こんなことが起こる!?



 シデン達は知らなかった。


 彼らは他のパーティに比べ、道具の消費量が多いということを。


 何故なら、まだ分不相応なダンジョンにも強引に侵入し、無理くり踏破してきたと言う経歴を持つから。


 けれど、そんなやばい冒険劇を繰り広げていれば普通に収入よりも出費の方がかさむ。


 そこで、マインは店からではなく懇意にしている仕入れ屋や生産元から直接道具を購入していたのだ。


 商人との繋がりと顔効き。それのおかげでこれまで何とかマインがパーティを切り盛りしていた。



 最も、他の仲間達はそんなことに興味もない。ただただ頼んだら頼んだ分だけ道具を揃えてくるマインの見えない努力なんてもの、知らなかったのだ。



「くそ……!これじゃあここの家賃も払えねぇだろうが……!」


「ま、まぁ大丈夫でしょ。だってこの前の未踏破ダンジョン【死霊の祠】の褒賞がでれば何とかなるわよ」


 この世界には世界の各地にダンジョン……即ちモンスターが現れる場所が存在する。


 そこを初めて踏破したものにはその褒章としてギルドから多額の賞金を受け取ることができるのだ。


 高難度ダンジョン【死霊の祠】。その踏破報酬はバカデカい。それをあの役立たずに取られるのを防ぐためにあいつを追い出したという背景もある。


 そうだ、その報酬さえあれば俺たちは……。




「たっ、大変だ!!」



 すると、拠点(ホーム)の扉が蹴り破らんばかりの勢いで開かれる。


 見ると、そこには血相を変えた【大精霊】ことサミュエルが立っていた。


「何だ!」



「あ、あの【黒天の勇者】アーサーが……【死霊の祠】を踏破したって大ニュースになってやがる!!」



「何だと!?」



「嘘!?何でよ!?あのダンジョンは私達の方が先に踏破したでしょ!?」


 俺のそばにいたミーアが絶望したように叫ぶ。


「何故だ……何故。こんなことに!?」



 シデン達は知らなかった。


 ダンジョンを踏破したことをギルドに報告しなければ、ダンジョンを攻略したことが認められないことを。


 これまで、クエスト完了やギルドへの報告などの事務は全てマインが行ってきた。


 普通に考えれば分かることだろう。だけど、彼らはそんな事すらも知らなかったのだ。


 だって、それらの仕事は全てマインがやってくれたから。放っておいても勝手に金が入ってくるのだと思っていたのだ。


「ど。どーすんのよ……!このままじゃ……!!」


 ミーアはすがるように俺の腕にしがみついてくる。


「くそ…が……」


 けれど、そんなのはシデンにすら分からない。


「と、とにかくクエストを受けるぞ!報酬の高い奴だ!それでなんとか赤字を取り返すしかない!!」


 そんなシデンを見かねて戦士のレックスが声を上げる。


 こうしてシデン達は急遽資金を稼ぐ為に高難易度……と言ってもこれまで普通にこなしてきたようなクエストを受注することになった。

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― 新着の感想 ―
[一言] サポーターに任せてきたツケが来たね。 高難度依頼受注→アイテム消費→報酬以上のアイテム消費で赤字→更には依頼失敗なら更に赤字→再度高難度依頼受注・・・ 正しく無限ループだね。負のスパイラ…
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