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女剣士。気づく

「ただいま」


「お。おかえりユーリ」


 いつものレベッカの店の扉を開くと、レベッカが優しく私を出迎えてくれる。


「任務はどうだった?」


「……散々だった」


 私は店のソファーに崩れ落ちながら愚痴をこぼすように今回の任務の顛末をレベッカに話す。


ーーーーーーー



「はっはっは!随分とまぁ仲良くやってきたもんだねぇ」



「どこが!?マインなんて、もうどーだっていいもん!!」



 豪快に笑うレベッカに私は怒りの声をぶつける。



「ほんっとに!すっごい腹立った!マインのせいでイライラした!いっぱい私に口答えして!何様なのあいつは!!」



「はっはっは!そうだねぇ……」


 くっくっくと笑いを堪えきれないレベッカは続ける。




「それだけ、本気であんたのことを心配してたんだろうさ」




「……っ」


 レベッカの言葉に私は息を呑む。


 心配……?マインが?


 次の言葉が出てこない私を見かねてレベッカが少し呆れたような顔をしながら頭を撫でてくる。


「あんたはサングライトにいた時から無駄に強かったからねぇ。そんなあんたにみーんなビビっちまって、あんたに口答えできる奴はいなかった。私とあの娘以外は……ね」


「っ、でも!あんな怒り方するなんて……私のことを心配してるわけじゃない!私のことを馬鹿にしてるに決まって……」




「本気であんたのことが大事だから、あんたの身を守るためにそこまで真剣に怒ってくれたんだろうね」



「あ……」


 そこまで言われて、私はあの夜のマインの言葉を思い出す。



『今回はたまたま僕が間に合ったけど、間に合わなかったらどうするつもりだったんですか!?もしあなたに……』



 あの言葉の先。


 マインは私に何を言おうとしていたんだろう。


 何を必死に怒っているんだろう……と。そこまで自分のやり方でやらないと気が済まない面倒な男なのかと、私は彼を追い出したけど。


 思い違いをしていたのは、私だったのかもしれない。


 本当に酷いことを言ったのは、私だった?



「っ、でも。もうマインと私は無関係だし……!」


「あんたはそれでいいのかい?」


 レベッカはじっと私の真意を問いかけるように顔を覗き込んでくる。


「まだ、間に合うんじゃないかい?あの子は大怪我して帰ってきたんだろ?あんたを守るために。自分を追い出したあんたをそれでも見捨てずに追いかけて、大怪我してまで助けてくれた……ここまで本気であんたに向き合ってくれる奴なんて、そうそういないよ?あんたは本当にそれでいいのかい?」


「……っ」


 レベッカの言葉を聞いて、私は返す言葉もない。


 そうだ……私は何を偉そうにマインの文句を言ってたんだ。


 マインのあの大怪我は、私のせいだ。私がマインの忠告を無視して突っ込んで。あまつさえそれで死にかけたっていうのに、それでもマインは私を見捨てずに追いかけてきてくれた。


 そんな私なんかに、マインは責めるどころかお礼を言ってきたんだ。


「……何が、優しいよ」


 馬車でのマインの言葉。


『……ユーリさんって、実は優しいですよね』


 どこが?こんな私のどこが優しいっていうの?


 本当に優しい人っていうのはマイン、あなたや……そして、あの娘みたいな人だよ。


 私なんかに向けられる言葉じゃない。


 私は……どうしたいんだろう?


 何ができるんだろう。


「ほら、とっとと行って来な」



「うっ」


 唇を噛み締めて、溢れる感情を我慢する私の背中をレベッカが押す。


「ま、待って……!私、マインに何を言ったらいいの……!?」


「そんなもん。あんたが考えな」


「え、ええぇ……!?」


 冷たく突き放すようにレベッカは告げる。



「これはあんたとマインの冒険だろう?だったらその答えはきっとあんた達が知ってるはずだ」



「〜〜っ。もう!レベッカの分からず屋!!」


 レベッカの言葉を受けて、私は何かを言い返そうとしたけれど、返せる言葉も見つからない。


 いつもの悪態だけつくと、真っ白の頭のままギルドに向かって駆け出した。


ーーーーーーー


「……ふっ。『マイン』ねぇ」



 飛ぶように駆けていくユーリの背中を見ながら、レベッカはクスクスと笑みを浮かべる。



「いつの間にマインのことを名前で呼ぶようになったんだか」

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