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サポーター。馬車の上

「う…うーん……」


 あれ……?ここはどこだろう?


 僕は、ガタガタと揺れる荷馬車の上で目を覚ました。


 視界に広がるのは眩しいくらいの青い空と、さんさんと輝きを放つ太陽。


「……あぁ、ここは天国か」


 きっと、この馬車は僕を天に運ぼうとしてるんだろう。


 だって、僕はあのワーウルフ達の蔓延る炭鉱の底にいたんだ。きっとあのまま八つ裂きにされて殺されてしまったに違いない。


 あぁ……全然信心深くない僕だけど、神様は僕を天に召してくれたのかぁ……。


「違う。街への帰り道」


「うわぁっ!?」


 そんな風に悟りを開く僕の顔を覗き込む空よりも綺麗な青い瞳。


「ゆ、ゆゆゆユーリさん!?」


 そこには頬にガーゼを貼り、頭に包帯を巻いたユーリさんがいた。


「え…と……?」


 状況がいまいち理解できない。


 確か、僕の最後の記憶はワーウルフの群れに落下したところまでだけど……。


 痛む身体をなんとか持ち上げながら、僕は自分の置かれている状況に目をやる。


 ほんのりと甘い香り……多分回復薬か何かだろう。それでも治り切らない傷の上から巻かれる大量の包帯。


 特に右腕の傷が深いようで、添え木を当てられて吊り下げられている状態だ。


 次に、そばに座るユーリさんの方へと目を向ける。


「……ユーリさん、助けてくれたんですね」


 ユーリさんの装備や身体にはいくつもの細かい傷が増えているように見える。


 これはワーウルフキングとの戦いでついたものじゃないし、なんならキングの力で強化されたワーウルフによる傷でもなさそうだ。


 ワーウルフキングを倒した後、ワーウルフによってたかってなぶり殺されそうになっていた僕を助けるときについた傷だろう。


「……っ。べ、別に。助けようと思ってやったんじゃない。たまたまワーウルフを倒したらそこにあなたがいただけ」


 どこか恥ずかしそうに目を逸らすユーリさんを見て、僕は思わず笑みがこぼれてしまう。


 そんなわけない。


 だって、確かに聞こえたんだ。薄れゆく意識の中で、僕の名前を初めて呼んでくれたユーリさんの声を。


「……ユーリさんって、実は優しいですよね」


「な、何言ってるの?私なんかが優しい?」


 驚いたような顔を浮かべるユーリさん。


「だって……ユーリさん、初めて会った時も僕を助けるためにゴブリン・ロードと僕の間に飛び込んできてくれましたよね」


 初めて出会った時。ユーリさんは僕を助けるために飛び込んで来てくれた。


 だって、ゴブリン・ロードを倒すためだけなら、わざわざ僕とロードの前に飛び出す必要なんてなかった。


 背後からすぐに斬り捨ててしまえば済んだ話なのにユーリさんはそうしなかった。


 確実に僕を守るために飛び込んできてくれたんだ。


 そして、今回のワーウルフに襲われた僕を助け上げてくれた。


 素直じゃないなぁ。


 そんなところが何だかとても微笑ましくて、自然と頬が緩んでしまう。


「今回のクエスト……ありがとうございました。ユーリさんと一緒にクエストできて、とてもよかった」


 ゴロリとまた寝転がりながら、僕は揺れる馬車に身を委ねる。



「……これで、契約は終わり……ですかね」



「……うん」


 今回の契約は、このクエストまでの約束。言わばお試し。


 ユーリさんの意志がなければこの先の契約はない。


 だから、もうここまでだろう。


 だって、今回のクエストで僕はユーリさんにたくさん迷惑をかけた。きっと僕との契約を続ける意思はユーリさんにはないはずだ。


 仕方がない。それもこれも、僕が弱いことが原因なんだから……。


「……」


 寝転がる僕の目に、太陽の目が沁みる。


 この涙は、決して悔しいからじゃない。太陽が染みているだけだ。


 そう、僕は自分に言い聞かせた。

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