女剣士。飛ぶ
お世辞にも、私とあいつは考えが合わない。
このオーアの街に来てから……いや、なんならここに来るまでも、意見がぶつかってばっかりだった気がする。
そのはずだったのに。
空を舞うあの男。その目が真っ直ぐに私のことを映す。
何かを訴えかけるように。一途に私を見つめて来た。
そう、私とあいつは考えが合わない。
何が言いたいかなんて、分かるわけがない。
そのはずなのに……。
何故か、その瞬間だけはあいつの意図がはっきりと私に届いたんだ
「あぁぁぁぁぁあっ!!!」
今しかない。
今この瞬間しかない!
私は自分の魔力を一瞬で練り上げるとそれを身体に纏う。
「スキル!【紅翼】!!!」
次の瞬間。
私の背中から吹き出すのは紅い焔。
私の身体に超加速を付与するスキル。
大丈夫……!爆発しない!
幾分だけ火力は落ちているけど、致命的なものじゃない。十分だ!
そして、そのまま音すらも置き去りにして超高速でワーウルフキングに迫る。
あの男……マインが雨を降らせた理由。それはワーウルフキングの炎を止めるためじゃない。
雨で空気中に舞った石炭の粉を洗い流すため。
封じられた私の炎スキルを発動させるためだ。
ーーーーーーー
ユーリさんは言った。
『私の炎のスキルさえあれば、ワーウルフキングなんて一撃で葬れるから』
確かに、そう言ったんだ。
なら、僕はそれを信じます。
炎さえ使えればあなたに敵はいないと、他の誰でもないユーリさんが言ったのだから。
サポーターとして今僕がやるべきこと、それはユーリさんの本領を発揮できるように場を整えること。
|必殺の武器(炎スキル)を封じられたユーリさんのその状況を、ぶち壊すことだ!
「行けええええ!!ユーリさぁぁん!!」
炎を纏い、その背中から炎を吹き出して加速するその姿はまるで、片翼を失った天使のように僕の目に映った。
ーーーーーーーー
キングを守るように下僕が私の前に立ちはだかる。
だけど、今の私にとってそんなものは障害になどなり得ない。
私の生み出す熱風に当てられ、ワーウルフ達は周囲へと吹き飛ばされていく。
キングが放った火打ち石も、マインの【豪雨】によって粉塵爆発は封じられ意味をなさなかった。
その事実と、私のあまりの速度に奴は焦り、その巨大な剣でガードすることしかできない。
けれど、もうそんなものは意味をなさない。
スキルさえ解禁されたのならば、そんな防御なんて剣ごと叩き斬ることができる。
「【紅天撃】!」
私の得意技。
その両手剣に真紅の炎を纏って敵を斬りつける技。
【紅翼】の加速と、【紅天撃】の力。2つの力が合わさった私の最高の一撃。
紅き天使の一撃が地の底で踏ん反り返る半狼の王に振り下ろされる。
ゴッ!!
放たれた刃はキングの剣へと堕ちる。
「紅き刃に散りなさい!!」
ズバァン!
その炎刃は奴の自慢の大剣を溶解させ、まるでバターのようにザックリと斬り捨てる。
「グォ……」
真っ二つに落ちた大剣の向こうから、キングの絶望に満ちた顔が覗く。
チェックメイト。
もう、私の攻撃を妨げるものなんて何もない。
「【紅天撃】!!」
返しの刃。
振り下ろした私のアイアンソードを今度は奴目掛けて振り上げる。
それはまるで吸い込まれるように奴の脇腹へと突き刺さり、そして……。
ザンッ!
見事、その巨大な身体を真っ二つに斬り捨てた。




