サポーター。奔走する
僕は坑道を走っていた。
どこだ?どこにユーリさんはいる!?
薄く照らす魔石灯の光を頼りに僕は足場の悪い坑道を駆け抜ける。
でも、それは難航していた。
「グルル……」
「くそ……!」
ここもか。
どこもかしこも、大量のワーウルフ達が道を塞いでいるのだ。
僕とワーウルフ達のレベル差はほぼない。
ましてや僕はサポーターだから、普通の冒険者みたいな攻撃的なスキルなんてない。この前みたいに意表をつかないとすぐにやられてしまうに決まってる。
あんな迎撃体制ばっちりの同レベルのモンスター複数となんて戦えないだろう。
幸い、遭遇しても追いかけてこないことは救いだけれど……。
「……待てよ」
でも、これだけワーウルフを固めていると言うことはそれから先に来てほしくないと言うこと?
追いかけてこないのも、キングからここを守るように言いつけられているから?
「じゃあ……この先にユーリさんがいる……?」
きっと、そうに違いない。
邪魔者が入らないように。強力な力を持つユーリさんを確実に潰すためにキングが命令しているのだろう。
「だったら……!」
逆のことを言えば、ここを突破さえすればユーリさんがいる!
「グルル……」
僕の動きを察知して、さっきまで傍観を決め込んでいたはずのワーウルフ達がこちらに歩み寄ってくる。
僕を敵と認識したんだろう。
けれど、こんな数のワーウルフ達を相手にできる術なんか僕にはない。
きっと、この向こうにユーリさんがいるはずなのに……届きそうで届かないこの状況に苛立ちが募る。
考えろ……何かないか?ユーリさんを助けに行くための方法が。何か見落としていることは?
これまでの経験と、このインゴット炭鉱の情報を必死に頭に巡らせながら僕は迫りくるワーウルフの群れから逃げる。
クソ……!これじゃあの時ユーリさんを助けた時みたいにうまくはいかな……。
「……あ」
僕の頭にあの時の記憶が鮮明に思い起こされる。
ユーリさんのいる穴に集るワーウルフ達と、その足元に転がっていた真っ黒に焼き落ちた何か。
いや、きっとあれはワーウルフだった肉塊だったんだろう。
「……無茶、だよなぁ」
自分の頭をよぎった作戦に、僕は自分で呆れそうになる。
だけど、きっとこれしかない。
この力のない僕が、ユーリさんの元に辿り着く唯一の方法。
「……っ、うわぁぁぁあ!!」
僕は突如として身を翻すと、そのままワーウルフ達の群の中に突っ込む。
「グルァ!?」
逃げ惑うだけだったはずの僕の特攻に、ワーウルフ達は驚愕するようなそぶりを見せる。
だけど、そんなものは一瞬だけ。
すぐに臨戦体制を整えたワーウルフ達は一斉に僕に目掛けてそれぞれの獲物を振り上げる。
それを迎え撃つように、僕は右手にナイフ。そして左手をカバンの中へ突っ込む。
「恨むなら……!」
武器を振るワーウルフ達の間を縫って、あえて彼らの中心に向かって滑り込むように突撃。
スキル、【抜け足】。
気配を殺して敵の背後に回るスキル。
本来回避や撤退のために使うそのスキルを僕は敢えて特攻のために使用する。
ワーウルフの剣が僕の頬を削った。
振られたメイスが僕のアバラの骨を砕き、突き出された槍は左肩を貫く。
それでも僕はワーウルフ達の中心に向かって突き進む。
そして、バックパックに突っ込んでいた左手を空に振り上げた。
「恨むなら……こんな作戦を考えた、お前達の親分を恨めええええええええええええ!!!!」
僕が放り投げたのは小さな球体。
衝撃を受けると中に仕込まれた火打ち石が反応し、火薬に引火して小さな爆発を起こす【破裂玉】。
本来は僕が囮になるために相手の気を引くための小道具だけど……。
「ふきっ……飛べえええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!」
天井に当たった破裂玉が光を放つ。
大きな音を出すだけのコケ脅しの道具。
けれど、このインゴット炭鉱には振り撒かれた石炭の粉。
小さな爆発は一瞬でそれに引火。そして……。
ズドオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!
一瞬で全てを破壊する大業火となった。




