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サポーター。怒る

「ユーリさん!」


 僕はワーウルフからナイフを引き抜きながら、ワーウルフがたかっていた横穴へと駆ける。


 入口がユーリさんのアイアンソードで塞がれてる。


 これで凌いでいたんだろう。


「大丈夫……」


 力無い声を上げブスブスと服から黒い煙を上げながらユーリさんは穴から這い出してくる。


 よかった、無事で。間に合ってよかった。


 僕はユーリさんの無事を確認した僕はそっと胸を撫で下ろすのだった。


ーーーーーーー


 ボロボロのユーリさんと共に、僕は拠点となる宿屋の一室へと戻った。


「大丈夫…ですか?」


「……別に、こんなの慣れっこだから」


 僕は火傷だらけになったユーリさんに薬を渡してトイレにこもっている。


 何故ならユーリさんは今ベッドの上で服を脱ぎながら傷に回復薬(ポーション)を塗っているところだからだ。


「……」


 き、気まずい。


 この扉の向こうでユーリさんが裸になっていると考えると、男として劣情が湧かないわけがない。僕だってお年頃なんだ。


 そう言えば、シデンは魔術師のミーアと付き合っていて互いの身体にポーションを塗り合うみたいなことやってたなぁ……。


 僕にそんな甘い機会なんて一切なかったけど。


 って、僕は1人で何を考えてるんだ。


「終わった」


「あ、はーい」


 ユーリさんの声を受けて僕はトイレの扉を開く。


 そこには装備を外して部屋着に身を包んだユーリさんがベッドの上に横たわっている。きっと、治療をしてもダメージが深いんだろう。


「……ユーリさん」


 でも、治療を終えてひと段落もついた。


 だから、僕はユーリさんに言わなければならないことがある。




「どうして……1人でインゴット炭鉱に潜ったんですか?」




「……」


 ユーリさんはばつが悪そうにプイと向こうを向いてしまう。


「僕……言いましたよね?待っててくださいって。安全に任務をこなせるように、情報を集めてくるって。どうして僕を置いて行ったんですか!」


「……あなたは戦ったことはないかもしれないけど、私はワーウルフキングと戦ったことがある。だから負けるわけないもの」


 自分を正当化して僕の主張に耳を傾けようとしないユーリさんに少し苛立ちを募らせながら僕は言う。


「でも、勝てなかったでしょう!?ダンジョンは出現するモンスター、環境で目まぐるしく変化します!いわば生き物みたいなものです!だから事前に情報仕入れないとこういうイレギュラーが起こるんですよ!」


「今回はたまたま事故が起きただけ。運が悪かっただけだから。本来ならワーウルフキングなんて一撃で……」



「その火炎スキルが今インゴット炭鉱では使えないんですよ!!」



「……え?」


 僕の言葉を聞いて、初めてユーリさんの表情が強張る。


「あの炭鉱には大量の石炭が眠ってます!奴はそれを空気中に撒いてるんです!


「な、何でそんなことをしてるの……?」


「可燃性の粒子に火がつけば一気にそれが燃え広がって爆発を引き起こすんです!つまり、あの坑道で今火は使えない!ましてや火のスキルだなんてもってのほかです!」


「……っ!?」


 僕の続け様にぶつける言葉を受けてユーリさんは明らかに狼狽えていた。


 そう。僕はその情報を仕入れていた。


 もし、ユーリさんが僕のことを待っていてくれたなら防げた事故だったんだ。


「だから言ったんです!確実に任務をこなすために必要だって!その忠告を無視して突っ込んで……バカじゃないですか!?」


「……っ」


 僕の言葉にユーリさんの表情が曇る。


 普段の僕ならきっとそれに気がついていただろう。


 でも、僕は止められなかった。


 だって、もしも同じことがあったら……!



「今回はたまたま僕が間に合ったけど、間に合わなかったらどうするつもりだったんですか!?もしあなたに……」



「うるさいっ!!」



 ガァン!!



「……っ」


 ユーリさんが、ベッドの側にあった台を叩く。


 それはユーリさんの拳の形に凹み、シュウ……と煙を上げているように見える。



「あ……」



 そこまで言って、僕は初めて気がついた。


 ユーリさんは顔を真っ赤にして、目に涙を溜めているように見えた。



 言い……過ぎた……?



 そう思った時にはもう遅い。


「……出て行って」


「ご…ごめんなさい……」


 ユーリさんに僕は謝った。



「出て行って!もう顔も見たくない!」



 でも、もう遅かった。ユーリさんは声を荒げながら僕に叫ぶ。



「あなたなんか……あなたなんか、最初からいらなかった!」



「〜〜〜〜〜〜っ!?」



『お前なんかいらねぇ』


『お前は役立たずのサポーター!誰もお前なんざ必要としていない!!』



 シデンの言葉が……そして、ロッドさんの言葉が頭をよぎる。


「……ごめん…なさい」


 まだ癒え切らない心の傷が、また僕の胸を抉る。


 また…だ。また、僕は失敗した。


 サポーターとして……いや、僕と言う存在が……いけないんだろう。


 僕は、もう真っ直ぐユーリさんの顔を見れなかった。


 ただ、俯きながら……そっと、宿屋から出て行った。

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