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サポーター。半狼と戦う

 山肌に空いた大穴。


 あの頃と大きく変わらないその炭鉱の入り口を懐かしむ間も無く僕は炭鉱の中に突っ込む。


 別の冒険者なら別にいい。でも……。


 頭によぎるのは、不服そうに眉間に皺を寄せるユーリさんの顔。


 十中八九、ユーリさんが僕の言葉を無視して飛び込んだに違いない。


 炭鉱の中は爆発の痕跡が色濃く残っており、ブスブスと燻った火があちこちで揺れていた。


「爆発は……こっちか」


 爆風でできたのだろう壁の傷痕を見ながら僕は一直線に爆心地へ向かって走る。


 すると、そこには6体ほどのワーウルフが何やら壁に向かってしきりに齧り付いているのが見える。


「……っ!」


 僕は鞄の中にしまっていた小弓を取り出すと、そのまま弦を引き絞る。


 アビリティ【器用貧乏】。


 その力は装備した装備に対して適性を与える効果。


 僕が握る武器を例え初めて装備したものであっても『少しだけ』扱えるようになる力。


「くらえ……!」


 僕の小弓から放たれる矢。


 少しだけの適性だ。


 僕のステータスじゃ大したダメージは与えられない。けれど……!


「多少の命中精度ならあげられる……!」


 ワーウルフは横穴に齧り付くのに夢中。距離にして約6m。これぐらいの距離なら……!


 シュシュシュッ!


 僕の放った矢がワーウルフ達の頭を貫く。


 威力はなくても急所をつけば一撃だ。


 だけど、それが通用するのはあくまでも最初だけ。


「グガァウ!」


 3匹目を撃ち倒したところで残りの3匹が一斉に僕に向かって飛び込んできた。


「う、うおおおおお!?」


 僕のレベルは約40。対するワーウルフ達もワーウルフキングのブーストを受けて40ぐらいに上がっているはず。


 つまり、能力的にはほぼ互角。そして数にして3体1。


 圧倒的に不利な対面だ。


 ワーウルフ達は冒険者達から奪い取った剣を振りかざしながら涎を垂らしてこちらへと斬り込んでくる。


「馬鹿!逃げて!」


 ワーウルフ達が群がっていた穴の奥から声が聞こえる。


 ユーリさんだ。よかった……生きててくれてた!



「大丈夫です!」



 そうだ……こんな立ち回り、初めてじゃない。


 かつてシデンと旅していた頃はこんなこと日常茶飯事だった!


 3匹のワーウルフは僕を取り囲むように展開してくる。囲まれたら終わり。まずは……!


 僕は背を取られないように距離をとりながら小弓の矢を飛ばす。


 けれど、やはり【器用貧乏】。威力の乗らない矢は哀れにもワーウルフ達に躱されていく。


 でも、それでいい。これは牽制だ。相手に戦闘のペースを取られないように機会を伺う。


 立ち回ると言うことはそう言うこと。


 ワーウルフは距離を詰めることができずに次々に放たれる矢に苛立ちを募らせる。


「ガァウ!」


 やがて痺れを切らした1匹が無理くり僕に距離を詰めてきた。そう、それでいい!


「甘いっ!」


 それは予測済み。僕は鞄の中から小さな匂い袋を取り出すと迫るワーウルフの顔に向けて放り投げた。


 ほぼノーモーションで放たれたそれ。


 弓矢に意識がいったワーウルフの虚をつく一手。


「ギャオオオオオオ!?」


 強烈な匂いを放つ匂い袋に悶絶するワーウルフ。


 当然その隙を僕が許すはずがない。


 ワーウルフの首をナイフで引き裂き、一撃で命を狩る。


「ガァウ!」


 けれど、ワーウルフだって当然黙っていない。


 残された2匹は左右に展開しながら同時に僕を切り刻まんと剣を振る。


「はっ!」


 けれど、それも予測できる。


 次のアイテム。


 ちょうど屍となったワーウルフの陰になって見えなかったであろう手元からもう1つのアイテムを引っ張り出す。


 ビュッ


「ぐがっ!?」


 放たれたのは黒い光沢を放つクナイ。


 それは見事にワーウルフの脳天を穿つ。


 暗い炭鉱だから、黒いクナイは見えづらいだろう!?


 これで残り1。


「ウォォォォォ!!」


 ギィン!


「くっ……!?」


 無理矢理ナイフを合わせて僕は剣撃を防ぐ。


 衝撃を殺しきれずに地を転がりながらもなんとか距離を取ろうと受身を取りつつ飛び起きる。


 けれど、仲間を2匹も失ったワーウルフは怒りに震えているのだろう。逃げる僕をとことんまで追い詰めようと切り込んできた。


 僕が体勢を整える前に殺してやろうと、躍起になっている。



 だから、足元をすくわれるんだ。



「ガゥ!?」


 突如として動きを止めるワーウルフ。


 僕が仕掛けた最後のアイテム。まきびし。


 鉄の突起を持った地にばら撒くことで敵の動きを防ぐアイテム。


 地を転がりながら鞄からばら撒いたそれは炭鉱の闇に紛れ、見事にワーウルフの足を止める。



「チェックメイトだ……!」



 足を奪われたワーウルフに逃れる術なんてない。


 僕は飛び起きた勢いに合わせてワーウルフに飛びかかるとその心臓にナイフを突き立てた。

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