サポーター。炭鉱について知る
「大丈夫かなぁ、ユーリさん」
一抹の不安を抱えながらも僕はテコテコと町の酒場へと繰り出していた。
古い木造のその酒場は長年親しまれてきたのだろうか。とても年季を感じさせるような様相をしている。
昼間だからか酒場は客足が少なく寂れているような印象を受けた。
「えっと……ジンジャエールを」
「あいよ」
カウンターへと腰掛けると僕はいつものようにジンジャエールを注文する。
「マスター。僕、今日久々にこのオーアの町にきたんですけど……」
注がれたジンジャエールを受け取りながら僕は酒場のマスターに話しかけた。
「おぉ、そうだったか。ってことは噂のワーウルフキングの討伐にでも来たのか?」
「はい、そうなんですよ」
褐色でガタイのいい姿。多分ドワーフだろう。
そんなガッハッハと豪快に笑うマスターに僕は尋ねる。
「前きたのが5、6年前くらいなんですけどそこから何か変わったこととか、ワーウルフキングについて知ってることってありますか?」
そう言いながら僕は前金として受け取った契約金から1枚の銀貨を店主に渡す。
「ほーぅ、にいちゃん中々弁えてるじゃねぇの」
それを懐にしまいながらマスターは気前良く告げた。
酒場にはたくさんの人々が訪れる。そのためその地域の情報などがとても集まりやすいのだ。
しかもここの酒場は特に人の流れが強く、真新しい情報が手に入りやすいことを僕は知っていた。
「にいちゃん、若えのにいい心構えだ。特にこのインゴット炭鉱は今中々に厄介なことになってるからな」
「そうなんですか?」
不穏なマスターの言葉に僕はゴクリと息を呑む。
「あぁ。恐らくワーウルフキングが出てからだな。奴ら炭鉱の中に粉々にした石炭をばら撒き始めたのよ」
「石炭を?何のために?」
「だから今、インゴット炭鉱の中は粉末状の石炭が常に舞い上がってる状態なのよ。つまり……」
「まさか……粉塵爆発?」
「そうよ、あの炭鉱はただでさえ石炭が大量に埋まってる。それに加えて可燃性の粉が舞い散る密閉空間とくりゃあ……」
「火をつけた瞬間……大爆発……」
「そーいうこった」
粉塵爆発。
空気中に舞った可燃性の粉末に炎が燃え移り、多大な爆発を起こす現象。
それをワーウルフ・キングは意図的に起こさせようと言うのか。
だが、そうなると1つの疑問が残る。
「で、でもそんな事したらワーウルフキング達だってただじゃ済まないでしょう?」
そう。ワーウルフ・キング達だって爆発に巻き込まれちゃただじゃ済まないはず。
「いんや。今回現れたワーウルフキングはどうも炎への耐性あるらしくてな。粉塵爆発が起きようが奴にはてんでこたえないらしい」
「マジですか……」
じゃあ、火属性の力を扱うユーリさんにとってかなり状況は良くないと言うことか。
よかった……事前に情報を仕入れておいて。これなら何か対策を立てることもできるかもしれない。
「しかも、奴は火打ち石を使って意図的な爆発をも起こすって噂よ。今回のワーウルフキングはこれまでの奴らとは訳が違う。だから気をつけ……」
マスターがそう口にした、まさに次の瞬間。
ドオオオオオオオン!!!!
「なっ、何だぁ!?」
突如として響く轟音と、揺れる地響き。
「あぁ……ったく、また誰かやりやがったな……」
叫ぶ僕とは対照的に、マスターは呆れたようにため息をつきながら呟く。
「や、やったって……?」
「さっき、話したろ?今のインゴット炭鉱で火をつけようもんなら爆発するってな。まぁたその辺の情報を仕入れ損ねて爆発するバカな冒険者が出たんだろうよ。これで今月4回目だ……ったく」
マスターは慣れっこだと言わんばかりにガシャガシャと落ちてくる酒瓶を受け止めていく。
「……待って」
嫌な予感がする。
さっきの宿屋、空き部屋ばっかりだった。
つまり、ここにいる冒険者はそうはいない。
そして、炎の力を持つ冒険者と来れば……。
「ま、マスター!情報ありがとうございました!!」
ジンジャエールを飲むのも後回しにして、僕はインゴット炭鉱へと駆け出した。




