サポーター。戦略的撤退
「さて……」
いささかトラブルがあったが、何とか拠点を確保することはできた。
次は情報を仕入れよう。
「それじゃ、僕は一旦町で情報を仕入れてきます」
「何で?」
僕の言葉にユーリさんは顔を顰めながら答える。
まぁ、予想通りではある。
「何でって……安全にクエストをこなすためですよ」
そう。とにもかくにも命あっての物種だ。今回の任務はまだ街への被害なども出ていない。
つまり、緊急性は低いのだ。ならば、じっくり作戦を立てて確実にワーウルフ・キングを倒すに越したことはないはず。
「そんなの、必要ないでしょ?」
でも、そんな理屈はユーリさんに通用しないらしい。
「何言ってるんですか、大事なことです。いくら強者でも油断1つで命を落とすかもしれない。それがダンジョンです。しかも、今回は広大な迷路のような炭鉱ですし、相手は数で攻めてくるような1番厄介なタイプですから。万全を期すに越したことはないと思いますよ」
確かに、単体で強力なモンスターならユーリさんの力で圧倒できるだろう。
だけど、相手は圧倒的な兵力でこちらを攻め立ててくる危険な奴。1人の力だけでは限界がある。
だから敵陣に入る前にしっかりとした準備をしておくべきだ。
「どんな相手でも、私が行けば全員蹴散らせる。そんなの必要ない」
しかし、ユーリさんもなかなか折れてくれない。
流石の僕も少し声が強くなっていく。
「いいえ!要ります、必要です!あなたが前方の敵を100人相手にできたとしても、その背後から襲われれば終わりなんです!だから僕も譲れません!」
「……っ、この分からず屋」
「それはユーリさんですよ!?」
結果。
こんな感じでギャーギャーと口論になる。
お互いに互いの主張をぶつけ合うが、お互い全く折れる気配もない。
くそ……こうなったら……!
「と、とにかく!今回はレベッカさんの決めた通りに僕が主導権を持ってるんですから言うことを聞いてください!僕は今から町で炭鉱の情報を仕入れてきますから!ユーリさんはそれまでここで待っててください!いいですね!?」
「あ……ちょっ、逃げるなんてずるい!」
戦略的撤退。
レベッカさん威光をちらつかせ、炭鉱に入らないことだけを言って逃げる!これしかない!
呼び止めるユーリさんの声を無視して僕は宿の部屋を飛び出す。
全く……ユーリさん、よくもまぁあんな感じでやって来れたなぁ……。
そんな事を思いながら、僕はオーアの町へ情報を仕入れに向かった。




