サポーター。初めてのクエスト
次の日。
僕はユーリさんと一緒に馬車に乗って移動していた。
「えっと……僕らが向かってるのはインゴット炭鉱ですね」
「そう」
そう言ってユーリさんは1枚の手配書を広げる。
そこに描かれているのは巨大な口を醜く広げ、鋭き牙を剥き出しにした狼の顔。
「ここに、ワーウルフ・キングが生まれたらしい。だからそれを討伐する」
「なるほど……確かインゴット炭鉱の出現メインモンスターはワーウルフでしたね」
本来インゴット炭鉱は初級者向けのダンジョン。
多くの石炭が採取できる有名な炭鉱で冒険者だけでなくここで取れる石炭を狙う商人なんかも足を踏み入れることも多い。
ここにはワーウルフと呼ばれる二足歩行の狼のようなモンスターが多数生息しており、レベルにして大体20後半ぐらい。
ワーウルフ自体は大した相手じゃないけどその王であるワーウルフキングは話が別で、レベル60は下らない化け物だ。それに加えてワーウルフキングのスキルで手下のワーウルフ達のレベルも底上げされるらしい。
今の炭鉱は熟練冒険者でも苦戦を強いられるような高難易度ダンジョンとなっていることだろう。
「そういえば、ユーリさんのレベルはいくらなんですか?」
そうだ、なんやかんやでユーリさんのステータスを聞くのを忘れてた。
強いって聞いてたけど、シデンと同じくらいだったりするんだろうか?
「説明はめんどくさいから勝手に見て」
あー、はい。そうだろうなとは思いました。
僕はユーリさんが開いたステータス表を確認し、そして。
「ええええええええええええええええ!?!?!?!?」
「うるさい」
「すみませぇん!?」
度肝を抜かれた。
【名前】ユーリ・フラムディア
【レベル】86
【職業】剣士
【アビリティ】片翼の紅天使『火炎スキルブースト。両手剣の重量軽減』
超反応『反応速度のブースト』
天賦の才『経験値獲得量の増加及びステータスの成長値拡大』
【ステータス】
腕力:332
体力:285
魔力:269
俊敏:369
強すぎる!?なんだこのステータス、見たことないぞ!?
空いた口が塞がらない僕はまるで水を失った金魚のように口をぱくぱくと動かす。
シデンが可愛く見えるほどの強さ。流石これまでソロで冒険者をやってきただけのことはある。
「けど……」
僕は出発前のレベッカさんとの会話を思い出す。
ーーーーーーー
「そんじゃ、あんたら2人の契約はこんなもんでいいんじゃないかい?」
「そうですね。僕のレベルならこれぐらいが……いえ、むしろ高待遇なのでもう少し金額を下げてもらってもいいですよ」
基本的に冒険者とサポーターの契約はギルドを通して行われる。理由は色々とあるけれど、主にトラブルを防ぐため。
個人でのやり取りだと、力で劣るサポーターでは冒険者に敵わない。お互いに公平な条件で契約を結べるようにギルドが仲介役となってくれるのだ。
けれど、今回はお試しということもありギルドを通す本契約の前にレベッカさんと契約の交渉を行なっている。
実際に今後も契約を続けていくかどうかを見極める意味も込めて、とりあえず今回1回分のサポーター契約というわけだ。
ちなみに今レベッカさんからは相場で言うと同レベルの冒険者を雇うぐらいの金額を提示されている。
僕はサポーターだからもっと金額としては下げてもらってもいいのだけれど。
「いいんだよ。ユーリにサポーターがついてくれるんだ。奮発もするさ」
そう言ってレベッカさんが譲らないのだ。
「でも、流石に悪いですよ……」
あくまでも僕はサポーターなのだから、そこまで大盤振る舞いしなくてもいいと思ってしまう。
「なぁに。その代わり、頼みたいことがあるのさ」
「頼みたいこと?」
レベッカさんの言葉に僕は首を傾げる。
一体何を頼みたいと言うのだろうか?
「この世間知らずのバカの、面倒を見てやってほしいのさ」
「………………………………はい?」
「バカじゃない。レベッカのバカ」
そんな僕らの会話を聞いていたユーリさんが少し膨れた顔でレベッカさんに口を挟む。
「そもそも、勝手に話を進めないで。私にだってそれぐらいできるし」
「ほぉ〜?本当にそうかい?」
そんなユーリさんにズイと顔を押し付けながらレベッカさんは告げる。
「私はしっかりしてる」
「しっかりしてるんなら、なぁんであんたはこんっっっなに貧乏なんだろうねぇ〜?」
「……」
あ、明らかにユーリさんの表情が固まった。
「貯金もできないアンタのために、無償で部屋まで貸してやって……こうしてあんたにはできないサポーターの契約までやってやってんのに、どの口がしっかりしてるって言うんだろうねぇ?ね〜?ユーリ?」
「………………」
激しい口撃を受けて明らかに動揺するユーリさん。
「や、やめてあげてください……」
あまりにもいたたまれないので僕はそっと手をあげて停戦を提案する。
「いーや。ダメだよマイン。この娘は甘やかしちゃいけない」
「で、でもユーリさんは冒険者としてずっとやってきたみたいですし……普通に何とかやっていけると思います」
「そ、そう。できる」
僕の意見に賛同する形でユーリさんが反撃に出る。
「……なら、一緒にクエストをやってくるといい」
何かを悟ったような目でレベッカさんはせせら笑いをする。
「そうすりゃ、私の言ってることが分かるだろうからね」




