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サポーター。仮契約する

「……ううん。なんでもない」


 どこか俯きがちに告げるユーリさん。


「そう……ですか?」


 よく分かんないけど……ちょっと図々しかったか。今後は気をつけるようにしよう。


 そんなこんなで2人は仲良く……とはいかないけど一緒にギルドへと向かい、ユーリさんとサポーター契約を進めることを伝えた。


「ほっ、ほんとにマインさん契約しちゃうんですか!?」


 わーお。リアさん飛び上がるほどびっくりしてる。


「はい。ゴブリンの森で助けてもらった恩義もありますし、ユーリさんの元で頑張ってみようかなって……そう思ってます。なのでギルドにも報告をと思ってきたんです」


 まぁ、まずはお試し。


 さっきユーリさんが持って来てた手配書のモンスターを討伐するクエストを一緒にやる形になるだろう。


 そこでうまくいけば本契約。行かなければそこで終わりって感じ。


「む、むむむ……マインさん、ちょっとこっちへ」


 すると、ギルドの入り口で立っているユーリさんを見てからリアさんが小声で語りかけてくる。


 ちょ、ちょっと距離が近くてドキドキする。リアさん、いい匂いだなぁ。


 童貞の僕には刺激が強いぜ。


「マインさん、ユーリさんの噂を知らないんですか?」


「噂?ユーリさんがサングライト国出身ってことですか?」


「違います。冒険者の間で噂になってるんです。『血塗られた女剣士』って」


 そう言えば、レベッカさんもそんなこと言ってたっけ?


 聞いてたら結構不穏なワードだけれど……。


「何なんです?その『血塗られた女剣士』って」


 一体何があってユーリさんはそんな怖いあだ名をつけられる羽目になってしまったのか。知っておくに越したことはないだろう。本人に聞くわけにもいかないし。


「誰とも群れない。誰とも関わらない凄腕ソロの冒険者。彼女が暴れた後のダンジョンは血で赤く染まるという……」


「それが、ユーリさん?」


「は、はい!そうです!!これまで何回か彼女をパーティに入れようとした冒険者もいたみたいなんですけど……みんな血祭りにあげられたそうですよ!?マインさん、あなた一体どんな魔法を使ったんですか!?」


 いやぁ……僕がそうなったのはレベッカさんのお陰だ。それに、冒険者を血祭りにあげたって……そんな野蛮なことは……いや確かにあの人ならやりかねないか?


 でも、何となくだけどちょっとその噂は尾ひれがついているような気がしないまでもない。


 確かにとても強いし、人付き合いも苦手そうだけど。ユーリさんはゴブリン・ロードに襲われた僕を助けてくれた。


 何なら、あのロッドもあの人が逃げさえしなければ一緒に担いで連れて帰って来てくれたんじゃないかな?


 確かに不器用だけど……多分、悪い人じゃないと思うんだよなぁ……。勘だけどさ。


「今ならまだ間に合います!もっと普通の人とパーティを組みましょう!今度はちゃんと信用できる人を探しますから!」


「……」


 きっと、リアさんは僕のことを心配してくれてるんだろう。


 その心遣いは、正直嬉しい。職を失って露頭に迷うマインを助けてくれたし、本当に僕のことを考えてくれての言葉だと思う。


 だけど……。


「……それでも、僕はあの人のサポーターになりたいです」


 リアさんの優しさを受け止めつつも、僕は決意を噛み締めるように自身の手を握る。



「僕は、サポーター。支えるのが仕事です。あの人はずっと独りで戦ってきたと聞きました。僕がサポーターになりたいと思ったのは、そんな馬鹿みたいに突っ込むことしか知らない奴を、助けてやるためなんです」



 かつて、それを誓った友は僕を捨てたけれど、僕の始まりだけは変わらない。


 サポーターとして、1番大切にしていることは忘れるわけにはいかない。



「だから、僕はあの人を支えます。だって。それが僕の目指すサポーターの役目ですから」



 僕…すっごいわがまま言ってるよなぁ。


 もう、なんか笑うしかない。


「マインさん……」


 せっかく気を遣ってくれたのに、ごめんなさい。でもこれが僕の性分なんです。



「……ちょっと、かっこいいじゃないですか」



「リアさん?」


 何か小声で言ってるように見えたけど……?


「なっ、なんでもありませんよ!」


 慌てふためいたようにリアさんは手を振ってるけど……なんだ?どうしたんだろ?



「じゃっ、じゃあちゃんとマインさんはユーリ様のサポーターになったことを報告しておきます!けど……」


「けど?」



「ちゃ…ちゃんと、帰ってきたら私のところに顔を出してくださいね?」



 少し頬を赤く染めながら、上目遣いで告げるリアさん。


「……っ!は、はい」


 か、可愛い!?


 どうしたんだ今日のリアさん!?


「は、話は以上です!次の方がいるので!さよならっ」


「はっ、はいぃ!」


 いつものしっかりした彼女とは違った顔を見て飛び跳ねそうな心臓を押さえる僕はこうしてギルドを後にするのだった。

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