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03 魔王復活

 そして20年後。


 ついに魔王が復活したとの知らせが届いた。


 その間、俺は“正直者の勇者”の称号を得た。


 考えたことがわかってしまうから仕方ない。


 とにかく嘘はつけない。




 俺の後を継ぐ勇者はついに現れなかった。


 勇者はその時代に一人だけ――そんな言葉もある。


 簡単には見つからない。


 おれが動けなくなるころまでには次の勇者が出てきてほしいものだ。


「ミル、行ってくるよ」


「必ず帰ってきてね」


 俺はミルと結婚し、五人の子どもをもうけていた。


 まあ、心を読まれるってことはそういうことなんだよ。


 ミルは留守番だが、後継者になりうる魔法使いが育っている。


 20年間の備えが実を結ぶ時だ。


 フードを深く被って出発した。



 そうか、必ず帰ってきてねっていうのは、魔王を倒して無事に帰ってくることと、他の女に走るなということの二重の意味なのか。


 考えたことを見られないように、フードをさらに深く被った。


「カインベル、久しぶりね」


 僧侶のパトが話しかけてきた。


 ずいぶんと老けたな。


 フードを深く被っているから何を考えているかバレないはずだ。


「今、私のことをおばちゃんになったって思ったでしょ?」


 え? なんでわかった? 見えてないはずなのに。


 急いでフードを確認するが、ずれてはいない。


「ふん、そんなの顔の文字を見なくたってわかるわよ」


 しまった、かまをかけられた。


「もっと若い子がよかったなって書いてあるよ」


「いや、そこまでは思ってないよ? 懐かしくてまた一緒に旅ができるのは嬉しいよ」


 これは本当のことだから必死に主張した。


 パトはフードをちらっとめくった。


「あら、本当みたいね。よろしくね」


 昔からパトには勝てたためしがないんだよな。


「戦士職のドドンゴです。父のドドンがお世話になりました」


「ああ、息子さんなんだ。顔がそっくりだ」


「父が言ってました。どうせ勇者は戦士の顔は見分けられないって」


 それって20年前のときの話か。結構引きずるね……。


「あはは、まあ、よろしくね」



「わたし……魔法使いのキリです。正直、ミル様ほどの力はありませんがよろしくお願いします」


 眼鏡をかけた小柄な女の子だ。


 胸は大きい。


 急いでフードを確認した。ずれてない。


「よろしくね」



 四人は魔王が住むダンジョンへと向かった。


 俺にとっては余裕なダンジョンだが、魔法使いのキリは魔力が安定しないようだ。


「魔力はしっかり持ってるのにな」


「なかなか安定しないんです」


「どうやって教えてもらっていたの?」


「ミル様は、最初にキュッと絞ってそれからドーンって……」


 あきれた。


 ミルは感覚で魔法をかけるというか、能力がずば抜けていて小細工が要らないというか、天才肌なんだな。


「勇者の俺が魔法使いに教えるのも変だけど」


 効率的な魔法のかけ方を基礎から教えた。


 勇者は魔法使いほど魔力がないから技術でカバーするしかないんだけど。


「呼吸と脈を同調させて。これは普段から続けて習慣にしておいて」


「それから、魔法をかけるときはおなかのあたりに意識を集中させて」


 試しに魔法をかけさせた。


「炎!!」


 ダンジョンの端の方にまで火炎が広がった。


「すごい! コツみたいなのって、まだあるんですか?」


「まぁ、確かにあるけど、これだけできればよくないか?」


「極めたいんです」


「でも、時間もないし、王都に帰ってからでもいい?」


「ぜひ、よろしくおねがいします」



 魔法使いのキリは尊敬のまなざしで見てくれた。


 悪い気はしない。



 正直、魔法使いのキリも強くなって、ダンジョンは余裕だ。


 魔王が潜む最深部までやってきた。


「ここからは俺一人で行かせてほしい」


「ここまで一緒に来てなんでだよ?」


「師匠、私もついていきます」


 俺のことを師匠と呼ぶのは魔法使いのキリだ。


「いや、同じ呪いがみんなにかかったら大変だ。こんな思いは俺一人でいい」


「カインベル……」


 おれはフードを深く被ってひとり、魔王が待つ最後の間へと進んだ。


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