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記憶喪失の姫は偽りの従者の執着愛に囚われる  作者: 奏 舞音
第6章 姫と従者のはじまりは

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「今、なんとおっしゃいましたか……?」


 リリーディアは人払いがされた謁見の間で、玉座に座る父――国王ディオンに問い返す。

 このような国王への無礼、いつものリリーディアならば絶対にしない。

 しかし、それほどまでに国王の言葉は信じられないものだった。


「お前の従者は、この国を脅かす災厄だ」


「……あ、あり得ません。シルヴィオは、この国のために魔物を討伐し、魔術騎士団とともに王都を守っております。魔力は安定しておりますし、以前のように暴走して周囲を傷つけることもなくなりました」


 震える声で、リリーディアは言葉を紡ぐ。

 国王に災厄だと判断された者の末路は“死”だ。

 シルヴィオの主はリリーディアだ。

 その責任はリリーディアが負う。

 彼を欲した時から、その覚悟はできていた。

 しかし、シルヴィオと二人で国に尽くしてきたはずだ。

 シルヴィオが災厄だと言われる意味が分からない。

 きっと、何かの間違いだ。


「ですから、クラリネス王国に災厄をもたらすなど……」

「国王である私が間違っていると申すか!」

「い、いえ……ですが」


 王の怒号が響き、びくりとリリーディアの体が震える。

 しかし、ここで認めてはシルヴィオを守れない。


「お前は言ったな? あれが国を守る力になると」

「……はい」


 実際に、シルヴィオは強力な魔物からこの国を守っている。

 今や彼は化物ではなく、人々にとっての救世主だろう。

 目立つ容姿も、忌避されることなく受け入れられている。

 特別な力を持って生まれた者なのだ、と。

 もうシルヴィオを化物だと呼ぶ人はいない。

 それなのに何故、国王は災厄だというのか。


「だが、あの力は私のものではない。お前のものだ」

「それはっ、ですが……」

「国王である私よりも強い力を持ち、民の心を惑わせている。災厄と言わずなんというのだ!」

「私がお願いすれば、お父様の力に」

「あれの力を使う時、お前にいちいち伺いを立てろというのか? この私が!?」


 怒りに任せて、父王が剣を抜いた。


「も、申し訳ございません……っ! ですが、シルヴィオは何も悪くありません! すべては私の責任です」


 深く頭を下げ、リリーディアは懇願する。

 シルヴィオを助けたい一心だった。

 リリーディアが見つけ出さなければ、彼は王家に関わることはなかっただろう。

 もしかしたら、優秀な彼なら自力で魔力の制御方法を身に着けていたかもしれない。

 すべては、リリーディアとの出会いが原因なのだ。

 リリーディアが欲しいと願ってしまったから。

 

「お前は私が憎いだろう? あの従者を使えば、反逆を起こすことも可能だ」

「そのような恐ろしいことは考えたこともありません! 信じてください」

「お前はそうでも、あの従者はどうだ? 私がお前に剣を向けて、この細い首を斬っても、私を傷つけないよう躾けられるのか?」

「……っ!」


 その銀色の刃が、リリーディアの白い首筋に触れる。

 ひんやりとした感触に、リリーディアは震えてしまう。

 薄い皮膚が切れて、赤い線が走った。


「お前には王族の血が流れているというのに、何も感じないな」


 娘に刃を向けて、血を流して、最初に放った言葉にはやはり愛情はなかった。

 魔力がないことに呆れ、失望している。

 いくらシルヴィオが活躍し、リリーディアの従者として力を貸してくれても、リリーディアに魔力が宿る訳ではない。


(……私自身の価値が変わった訳ではない)


 切れた首筋よりも、心の方が痛い。

 悲しくて、苦しくて、涙がこぼれた。

 国王の地位を脅かしたいと思った訳ではなかった。

 ただ、父に認めてほしかっただけなのに。

 リリーディアが頑張るほど、父の心は離れていたのだろうか。

 最初から、心を向けられたことはなかったけれど。


「私はどうなっても構いません。だから、どうかシルヴィオのことは助けてください」

「ふん。そんなにあの従者を守りたいのか」

「はい。彼の力はこの国を守れます」

「それなら、試してみよう。国王である私とお前、どちらを優先するのか」


 にやり、と口元を歪ませて、国王はリリーディアを蹴り飛ばした。


「あの男を呼べ」


お読みいただきありがとうございます。

応援いただけると嬉しいです。

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