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記憶喪失の姫は偽りの従者の執着愛に囚われる  作者: 奏 舞音
第6章 姫と従者のはじまりは

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2話連続更新しています。

ご注意ください。

 シルヴィオはとても賢く、優秀だった。

 リリーディアが一度教えるだけで理解し、魔術に関してはすぐに習得した。

 元々、素質があったのだろう。

 シルヴィオの魔力が暴走していたのは、感情の起伏だけの問題ではなく、正しい力の使い方を大人が教えようとしなかったからだ。

 そして、シルヴィオ自身も自分を化物だと蔑む大人とは口もきこうとしなかったから、お互い様だったのかもしれない。

 リリーディアが与えるものをぐんぐん吸収していくシルヴィオを見ているのが楽しくて、リリーディア自身も勉強が好きになった。

 シルヴィオに新しいことを教えたくて、たくさんのものを知ってほしくて。

 それができるのはリリーディアしかいなかったから、何事にも一生懸命頑張っていた。


 そして、リリーディアが十歳になる年、王都に魔物が現れた。

 シルヴィオの力を試すため、父王はリリーディアに魔物討伐を命じた。

 シルヴィオは見事に魔物を討伐してみせた。

 その魔術の完成度は魔術騎士団も驚くほどのものだったが、シルヴィオは涼しい顔をしてこう言った。


「すべてはリリーディア姫の教えの賜物です」


 あの化物をここまで手懐け、強力な魔物を一瞬で屠れる魔術を生み出したのか。

 皆がリリーディアを見る目は明らかに変わった。

 それからも何度か魔物討伐に駆り出されたが、シルヴィオはその度に自分の力ではなく、リリーディアの力だと発言し続けた。

 おかげで、リリーディアは十五歳になる今も、王女としての地位を確立している。

 シルヴィオの方も魔力暴走を起こすことはなくなり、最近では魔術騎士団の面々に誘われて剣の稽古やら訓練に勤しんでいる。

 もちろん、リリーディアが王城で用事があり、側を離れても問題がない時だけではあるが。

 少しずつ、リリーディアとシルヴィオの周囲には人が増え、昔のように蔑まれ、忌避されることもなくなった。


「姫? 寝ているのですか?」


「……あ、ごめんなさい」


 シルヴィオと出会った時のことを思い出していたら、うたた寝していたようだ。

 リリーディアは軽く伸びをして、眠気を覚ます。


「いや。疲れているなら、ちゃんとベッドで寝てください。ここ最近、公務を任されることが増えてきたでしょう? それに、明日は国王陛下に呼ばれているとか……」

「私は平気よ。それに、無能だって言われていた私が、公務を任されるまでになったのよ。もっと頑張らないと! 今の私があるのは、すべてシルヴィオのおかげね」

「大袈裟ですよ。姫が頑張ってきたからです」

「ふふ、どうしよう。出会った時はあんなにツンツンしてたシルヴィオに褒められちゃったわ!」

「別にツンツンしてた訳じゃない……」

「もしかして、照れてるの?」

「照れてない」

「じゃあどうして顔を背けているの? ねぇ、こっち向いてちょうだい」


 シルヴィオはからかうとすぐに拗ねてしまうが、リリーディアのお願いには弱かった。

 耳まで赤く染めて、昔の自分の態度を反省しているシルヴィオが可愛くて仕方ない。

 年上なのに可愛いところがあって、シルヴィオのすべてが愛おしくて、胸がきゅんと疼く。

こんな風に、シルヴィオと二人だけで過ごす時間が一番幸せだった。


(シルヴィオ、大好きよ)


 彼の力を利用して、彼の人生を奪って、自由もなく縛り付けているリリーディアにはきっと、シルヴィオを好きでいる資格も、幸せにすることもできないかもしれない。

 それでも、彼はリリーディアという鎖につながれて、こうして側にいて笑ってくれるから。

 ずっと、ずっと。このままで。

 リリーディアの側にいて。離れていかないで。

 大好きなシルヴィオの笑顔を見ながら、リリーディアが願うのはただそれだけだった。


 しかしその翌日、父である国王から告げられたのは、リリーディアの願いを引き裂くものだった。


お読みいただきありがとうございます。

今後とも見守っていただければ幸いです。

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