表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
軍師日記 ~借り物知識で異世界統一~  作者: 楼那
今代帝“煋帝”
72/80

72.続く祝い事

1306年8月終旬 柳泉


あれからさらに1ヶ月が経ったある日、主様から遣いがやってきた。

近陵国から撤退してはや4ヶ月、ようやくの解散指示だった。なんでも帝都で正式に新たな帝が帝位についたらしい。

当初の予想通り、天子であった“陽煋(ヨウセイ)”様がそのまま煋帝として炎帝のあとを継いだ形で落ち着いたようだ。

もめたのは当然後継者問題が絡んでいる。

まぁ今代の帝も気分が悪いだろうな。まだ帝位に就いていないにも関わらず自身が死んだときの話を問題としてあげられているのだから。

しかし大陸の安寧を守ることが大陸守護家たる帝家の使命だ。後継者問題で大陸が混乱するのは帝家の望むところではない、ということだろう。

まぁそういった理由もあって長らく鶴郡に滞在していたが、ようやく王都長港へと戻って来たのだ。領地を持っている武官らは自領へと兵を引き連れて戻っている。今回王都に帰ってきたのは俺や北仙殿のように領地を持っていない者や、軍を率いた大将とそれに等しい任を与えられていた者だけだ。後者は李大西将軍や白轟大将軍、あとは鶴城防衛の任に当たっていた俺も呼び出されはしている。

 李大西将軍の率いた兵は白雲殿が連れて領地へと戻ったようだ。

 とりあえず今年1年は軍事行動とそれに準ずる行為は全面的に中止とされている。軍議や先勝報告、または戦敗報告全て禁止されているのだ。

 とにかく喪に服せみたいなことなのだろう。しかし帝都では今代帝の就任に毎日お祭り騒ぎだというからよくわからない。

「お待たせいたしました。柳泉にございます」

「早かったな。よい、入れ」

「はっ」

 先述した行為が全て禁止されているため、今回の先勝報告は全て個人の面談で済ますことになっている。

 俺もまた呼び出されたため、王都に戻ってすぐ長港宮へとやって来た。呂伏殿に面談の申し出を行い、すぐに主様の私室へと通された形となった。

「まずは柳泉、初陣であったにも関わらず良く城を守ってくれた。礼を言うぞ」

「いえ、私は何もしておりません。旺家の方々や李白雲殿、それに援軍を出してくださった近隣領武官の皆様がよい働きをしてくれた故の勝利にございました」

「謙遜するでない。そもそもぬしが近陵国内の反乱を予期し、その対策を練った故に越内国を追い込み、近陵国内も無事江政長が政権を取り返したのだ」

「そのお言葉、ありがたき幸せにございます」

 謙遜のしすぎは時に嫌味に映る。とりあえず一度その言葉を受け入れておいた。

 話はここで終わりだと思ったが、どうやらそうではないらしい。主様は俺に部屋から出るようにという合図を出されない。

「まだ何かおありですか?」

「帰ってきて早々で悪いのだがな、柳泉には帝都に向かって貰おうと思っておる」

「帝都ですか?」

「あぁ、今代帝である煋帝様が帝位にご就任された。その祝いと朱光の婚儀の祝い物の礼をせねばならん」

 まぁ一応主従関係を結んでいるから、祝いの品を持っていくのも祝って貰ったお礼をするのも分かる。

 しかし、どうして俺が行くことになるのだろうか?領監部的な役割では完全に職務外だし、個人としても帝家とは何の関係もない。

 そもそも、外国との関わりを持つのは対外省のはずだが・・・。

「不思議に思うのも当然であろうな。ぬしを帝都にやる表面的な目的は子を安全に産むための護符を受け取るためだ」

「はぁ・・・、はっ!?」

 主様からなんだかとんでもない事を聞いた気がする。そもそも何で出陣前に覚悟を決めたことを知っているんだ。まさか希京様が話したのか!?いや、あの方に限ってそれは・・・。考えれば考えるほど意味が分からなくなる。

「如何した、そのように呆けた顔をして」

「いえ、その・・・、表面上の目的の意味がいまいちよく分からず」

「何がわからん、もうすぐ生まれるであろうぬしと希京の子を安全に生むために護符を授かりに行くのだと言っているであろう」

「・・・」

「まさか知らなかったか?てっきりもう報せを受けているものだと思っていたのだがな」

 知らない間に俺は父になっていたらしい。いや、正確にはまだ生まれていないから予定の話ではあるが・・・。

 駄目だ、全く実感がわかないし出来ることなら主様ではなく希京様から聞きたかった。

「悪いことをしたな。とにかくぬしにはそういう目的で帝都へと向かって貰う。祝使と同行して貰うことになるであろう」

 祝使とは他国の祝い事の際に国として正式に祝いを述べる使者団のことだ。

 つまり帝家に祝いを述べる方たちに同行する形を取るらしい。しかし主様は表の目的だと言われた。つまり俺には別の任があることになる。

「ぬしには新帝を見極めて貰いたい。朱陽の父であるという贔屓目なしで見てきて、我に伝えよ。それ次第で今後の帝家との付き合いを考えていかねばならぬ」

「・・・、かしこまりました。その任しかと承りました」

「そうか、ではよろしく頼むぞ。祝使には対外省の呉霖と朱光も連れていくように言ってある。柳泉はその者らと共に帝都“豊泉(ホウセン)”へと向かうのだ」

「かしこまりました」

 何か色々あったけど、とにかく一旦屋敷に戻って希京様を抱きしめるところから始めようか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ