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軍師日記 ~借り物知識で異世界統一~  作者: 楼那
大陸北部の動乱
69/80

69.近陵国の解放90%

太陽暦1306年4月下中旬 柳泉


 気合いを入れて乗り込んでみたのだが、これまた思った以上に拍子抜けだったとしか言いようが無かった。

 まさか最重要人質の監視を最低限にまで減らして南門からの侵入の防衛に行くほど馬鹿な連中だったとは・・・。

「鶴翼殿ではないか」

「政長様とご家族の方々ですな。ご無事で何よりです」

大きな部屋に数人人質として確保していると、捕縛した敵兵士からの情報によりこの場に駆けつけると確かに人質がいた。

 江政長様と桃木妃様、そして朱光様の御相手となる初淀様だ。あとは側近らしき人たちも数人、別の場所で縛られていた。

「そちらの者は?」

 政長様は、鶴翼殿の率いていた兵に後処理の指示をしている俺を指して問われる。まぁ俺は婚儀の席にもいなかったし、鶴城で行われた長会談でも政長様とは会っていないから仕方ないだろう。

 毎回意外と近くにいたんだけどな。

「鶴城防衛の大将であり、近陵国解放の軍師でもある柳泉と申す者です」

「その若さで大将か。それに軍師とは。・・・柳泉と言ったな。近陵国での評判は・・・、言いにくいが相当低いとされておる。民まで噂しておるほどだったと思ったが」

 鶴翼殿が苦笑いされている。まぁ知っているんだから当然だとは思う。

 なんせ悪評を広めたのは狼子の率いる忍びたち。黒幕は俺なのだから。

「上手く策が実ったようで安心いたしました」

「策か、たしかにそうなのだろう。鶴城に向かったはずの義弟がここにおらず、お前たちがここにおる」

「義弟殿は捕らえて海興国王都へと連行いたしております。何事もなければそろそろ長港宮に着く頃でしょうか。此度の一件は一度こちらで処罰を言い渡した後に近陵国へ身柄をお渡しいたします。その後のことはお好きにしてくださいとのことです」

 鶴城を出発する前に白麗様の使いからそう伝言を頼まれていた。まぁここまでした主犯格の1人だ。軽い処罰程度で済むはずもない。江政長様からすれば反乱分子を一掃できる良い機会だ。こちらが手を汚すまでもない。

「ご配慮忝い。してこれより如何するつもりなのか。前当主は商都東亜にて越内国への援助の隙を探っているはずだが」

「安心なされよ。すでに占拠された重要拠点の大部分は解放済みであります。すでに東亜も包囲済み。直に何かしらの連絡が来るでしょう」

 鶴翼殿の言葉と同時に狼子が俺の背後に控えた。あまりにもタイミングが良すぎる気がする。それに東亜は大陸北部と大陸東部を結ぶ重要商業拠点。無理な攻勢をかけて街を破壊するのだけは避けたい。

 そういう意図もあって、完全なる包囲をもって相手の士気を挫く作戦を採用したのだ。人は民だろうがなんだろうが一切容赦なく出入りを禁じた。そうなると困るのは商人たちだ。

 降伏は政府関係者が折れるよりも先に商人たちの暴走を抑えられずに受け入れる可能性もあるとみている。にしてもいくらなんでも早いとは思うけど。

「柳泉様、ご報告です」

「どうした」

 狼子の姿を見た政長様と鶴翼殿も静かに報告を聞いている。2人は狼子が忍びであることを知らないから伝令程度に思っているだろう。

「白麗様より伝令を受けた者がおります」

「主様は何と?」

「近陵国から即刻兵を退くように、と。また、江政長様救出後、最低限の護衛を残しつつあとのことは近陵国に任せるようにとのことです」

 まさかの事態だった。ここまでやって何の成果もなく引き上げることになるのか。この場にいる誰もが驚き固まっている。

「またすでに越内国に侵攻していた李雲玉大西将軍もすでに兵を退き始めているとの連絡も受けております」

「わかった。ご苦労。・・・鶴翼殿、ご指示を」

 俺は片膝をついて副将である旺鶴翼殿に指示を求めた。といっても決まっているわけだが。

 悔しそうに肩をふるわせている。しかし主様の命は絶対であり、これに逆らうことは許されない。

「政長よ、俺達家族を助けてくれたことは感謝している。頼りないとは思うが、あとは俺達に任せてくれ」

「は、い。かしこまりました」

 頭を下げた鶴翼殿はその場にいる俺達に指示を出した。華央から兵を鶴城へと移す。つまり戦果無しでの撤退だ。

「聞いたな?我らはこれより鶴城へと戻る。全軍にそう伝えよ」

「かしこまりました。狼子聞いたな。」

「はっ!手下を使い各重要拠点へと向かった大隊長に撤退の指示を出しましょう」

「頼む」

 狼子は姿を消した。さて俺達も撤退の用意だ。

「おそらく李将軍に従い越内国へと入った赤虎上殿が東亜の包囲を継続されるでしょう。まずはそれを手伝われるのがよろしいかと」

「助言、ありがたい。2人とも、この礼はいずれまた」

 華央から出た俺達は急ぎ全部隊を合流させて鶴城へと戻ったのだった。しかし一体何があったというのだろうか。

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