表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/80

27.旦那様

太陽暦1304年12月終旬 張姫


 今日、私と兄の処遇について主様と家臣の皆様が話し合われています。

 この国で中枢を担う人物の裏切りと亡命など前代未聞の出来事で、この国の各地に配置されている家臣の皆様も招集されたようなのです。それほど大きなことを私の父はしでかしたのです。

「大丈夫よ、もし旦那様がヒドいことを言われても、私が守ってあげるから」

 朱妃様はそう言ってくれますが、私のせいで朱妃様と主様の関係が悪化するなどあってはならないことなのです。

「その気持ちだけで十分です。私の中ですでに覚悟は出来ていますから」

「キキョー姉さま出て行っちゃうの?」

 私のことを姉のように慕ってくれる星蘭ちゃんが悲しそうな瞳で私を見ています。また泣きそうになる。でも今日は我慢・・・しなければ・・・いけ、ませ、ん。

 頭の中では分かっているはずなのに、目の前がぼやけて上手く見えません。

「星蘭ちゃん・・・、私とはおそらく今日でお別れです。これからも元気いっぱい大きくなってくださいね?」

 私の言葉に星蘭ちゃんの目からは大粒の涙が、そして月姫様もまた泣いておられます。

 つられたのか朱妃様も声を抑えて泣いておられました。最後に知れてよかった。私の居場所はちゃんとここにもあったんだ。そう思うと、安心できました。もう心残りは無い。そう気持ちを整理することもまた出来たのです。

「失礼いたします。柳泉殿が参られました」

 背後の扉が開き、入ってこられたのは高美麗様でした。

 それにしてもどうして柳泉?私の処遇についてなら主様か陸宰相様のはず。

「柳泉が来たの?通してちょうだい」

「はい」

 それからすぐ、正装をした柳泉が入ってきました。何故か申し訳なさそうな表情で私を見ています。

 それは皆様感じ取った様子で、何か尋常でないことを言うのでは無いかと固唾を呑んで次の言葉を待ちました。

「今日、張姫様と張義涼殿の処遇について決定されました」

「知っているわ。それでどうなったの」

「張義京殿の奥方様が尼僧になることでお二人の助命をされていたため、義涼殿は高白轟様の元で1人の兵士としてやり直し、功績を挙げれば再び主様に仕えることを許されました」

「そうですか」

 ホッとしました。女の私よりも、張家の長子である兄の方が重い罰が下されると思っていたので、全て白紙に戻りはしたもののまだ返り咲く機会があると聞いて安心したのだと思います。

「では、張姫は?」

「それが・・・」

 これまで兄のことを話していた柳泉の口が急に動かなくなってしまいます。

「まさか、張義涼を許して張姫を許さないというの」

 やや怒気を含んだ声で朱妃様が尋ねられます。柳泉も困惑しています。

「そうではありません。とはいえ、やはり主様と張姫様の離縁は避けられませんでした。許すと家臣の皆様方に面目が立たないとのことです」

「では、どういう決着になったのでしょう?」

 月姫様もやや前のめりになって柳泉に尋ねています。

 また、柳泉は私に視線を向けました。

「王の妃が離縁ともなると、これから非常にお辛い思いをされると思いまして・・・どうすれば張姫様を救えるか考えた結果、下贈という形で私の妻として迎えることを許して頂きました。何も相談せずに申し訳ないとは思いましたが、時間があまりにも無かったことと、これ以上の選択肢を思いつかず・・・勝手をして申し訳ありません」

 言葉の合間合間に私を見ていました。きっと私が震えているのを見て、怒っているまたは悲しんでいるのだと勘違いして謝ったのだと思います。

 ですが違うのです。私は嬉しかった。

 ここまで私を1人の人として心配してくれた柳泉に感謝をして、そして嬉しくて泣いていたのです。

 気がついたら私は柳泉に抱きついていました。あとから思うとはしたなく、そしてとても恥ずかしい行動だったと思うでしょう。

 ですが私には、そんな感情を抑えることができなかったのです。

「ありがとうございます・・・柳泉、ありがとうございます」

 突然の行動にも柳泉は優しく受け止めてくれました。

「それほど喜んで頂けたなら、必死になって考えた甲斐がありました」

 気がつけば星蘭ちゃんまで私に抱きついていました。幼いながらに私のことを心配してくれていたのだと思います。

「でも、それは柳泉が旦那様の臣になると公言したようなものね。よかったのかしら?」

「俺はもうこの国から出るつもりはありませんでしたし、あれだけ宰相殿の元でしごかれれば覚悟も決まりますよ」

「そう、張姫のこと幸せにしてあげてね」

「はい」

 その日私は後宮を出、新たに旦那様へとなった柳泉と住む邸宅に移ったのでした。

この手のシーンを書くのは苦手です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ