幼馴染みの大予言~高校生になったら彼女ができると言われたけど本当にできた~
考えてから書き終わるまで4時間ほどの見切り発車の作品です。
「彼女が欲しい!!」
中学校生活も残りわずかになった俺こと、野宮翔はそう口ずさむ。もはや口癖に近いその言葉はふとした時に口から漏れる。
俺は生まれて此の方、彼女ができたこともなければ親しい女友達も数えるほどしかいない。なのに周りの奴らは色恋沙汰に現を抜かして、俺に対して惚気話を持ち掛けてくる。だから爆ぜてしまえと毎日心の中で祈っているのは仕方のないことだろう。
「はぁ~、どうして俺に彼女ができないんだ」
「さっきからうるさいわね、あんた」
俺が机に突っ伏しながら愚痴を溢していると、うんざりしたような反応を見せる少女が目の前に一人いる。
彼女の名前は名取陽菜。俗にいう幼馴染みに位置する俺の数少ない女友達の一人だ。顔はそこそこ良くて、それなりにモテているのにもかかわらず今まで誰とも付き合ったことがない。どうしてか聞いても教えてくれない。
そんな陽菜がうんざりしているのは聞き飽きたということもあるだろうが、俺の声が勉強の邪魔だからだろう。俺たちは高校入試に向けて一緒に勉強している。
そんなにうるさいなら一人で勉強すればいいのに。...なんて、俺が頼み込んで勉強教えてもらってるから無理ですね、はい。
「だってぇ~」
「だってぇ~、じゃないわよ! あんたが勉強教えてって泣きついたから教えてあげてるんだから真面目にやりなさいよ!」
「別に泣きついたわけじゃ...わ、分かった! 真面目にやるから荷物まとめて帰らないでくれ! 高校浪人なんて洒落にならんから~!」
帰ろうとする陽菜に泣きついて引き留める。何とか腰を下ろしてもらい勉強を再開する。
だが時間が経つと、思考が「俺にはどうして彼女ができないんだ!」に埋め尽くされる。ダメだ。勉強に集中しないと。煩悩退散、煩悩退散...。
全く勉強が捗っていない俺に対して、陽菜はため息を溢す。
「仕方がないわね。少し休憩しましょ」
そう言って陽菜は鞄の中からお菓子を取り出す。その際にチラッと鞄の中のあるものに気が付く。俺は無意識に「あっ」 と声を出していた。
「どうしたのよ」
「いや、そのウサギのストラップ。まだ持ってたんだ」
「っ! い、いいでしょ、持ってたって! 何か悪い!?」
「いや、そんなことはないけど」
そのストラップに見覚えがあった。小学生の頃に二人で行った縁日の屋台で俺がとったものだった。本当は違うものが欲しかったが、たまたまウサギのストラップがとれてしまったので陽菜にあげたのだ。
小学生の時は毎日肌身離さず持っていたが、中学生になってからは見なくなっていたので捨てたものだと思っていた。
そんなに大事にしてくれているなんて、あげた甲斐があるってもんだな。ついつい頬が緩む。
「っ! い、いいから早くお菓子たべなさいよ!」
妙に急かしてくる陽菜に疑問を持つが、言われるがままにお菓子を食べる。うん、美味い。疲れた脳に糖分が届いている感じがする。多分。
そんな風に味わっていると、急に陽菜がソワソワし始める。
「ね、ねぇ。そんなに彼女が欲しいの?」
「まぁ、彼女は欲しいな」
「そ、そう。そんなに彼女が欲しいなら、私がつ、付き合って...」
「え?」
「っ! あんたがいつ付き合えるか占ってあげるわ!」
「...は?」
顔を真っ赤に染めながら、ビシッと右手の人差し指をこちらにさし向けていた。
「占い?」
「そ、そうよ! 最近私占いにはまってるから、占ってあげる!」
めちゃくちゃ胡散臭いけど、せっかくだし頼むか。
「じゃあ、頼むよ」
「ま、任せなさい!」
陽菜曰く、占いのやり方が何種類かあって今回は近くに置いてあったトランプを使ってやるようだ。俺にはよくわからない手順で着々と進んでいき、結果が出た。
「分かったわ。翔、あんたは高校生になったら彼女ができるわ。絶対よ!」
「マジ!? え、どんな子?」
「同じ学校で顔はそこそこ良くて、それなりにモテる女の子よ」
「そっか、俺に彼女ができるのか」
素人の占いだし真に受けることはないが何も希望がないよりはマシだと思い、陽菜の言葉を信じることにした。
「そうと分かれば、勉強しなきゃ! なんとしても高校生になるぞ!」
「そ、そうね。頑張って勉強して同じ学校に入らなきゃね!」
陽菜のおかげで、そこからの日々は勉強に集中できた。
......
............
..................
はい、無事に受験が終わりました。何とか高校浪人は避けることができて、第一志望校に受かりました。新しい地ですでに二カ月が過ぎて、もう高校に慣れて新しい友達も何人かできた。みんな良いやつで楽しい高校生活を送れてる。
はい、そして次が重要です!! なんと、彼女ができました。 ハイ拍手! パチパチ。
いやー、本当に彼女ができるとは思ってなかった。確かに同じ高校で、顔がそこそこ良くて、それなりにモテる彼女なんだよ。
勉強頑張ってこの高校に来て良かったわ! これも全部陽菜のおかげだからね。
「ありがとう、陽菜。これからも仲のいい幼馴染みでいような!」
◇◇◇◇◇◇
「なんでそうなるのよ!!」
放課後の教室の中で私こと、名取陽菜はそう叫ぶ。叫んでいる理由はもちろん幼馴染みである翔のことが原因だった。
中学生になってから翔は「彼女が欲しい」と頻繁に言うようになった。まぁ、そういうお年頃だから仕方がないけど、すぐ近くに私という彼女候補がいるのにも関わらずずっとそんなこと言っていた。
しびれを切らした私はあの日、翔に告白をしようとした。けど勇気が出なくて誤魔化してしまった。でも高校生になったら絶対に告白をしようと思った。
そして翔に言ったあの言葉。
『翔、あんたは高校生になったら彼女ができるわ。絶対よ!』
これは別に嘘でも何でもない。翔が高校生になったら私という彼女が絶対にできると言っただけ。
「なのに! なんで私以外の女の子と付き合っちゃうのよ!」
高校生になって、クラスが違ったし会う機会が減ったことを言い訳にして未だに告白をしていない私が悪いんだけど、彼女ができるの早くない!?
言っちゃ悪いけど、翔はそんなにイケメンじゃないし、だらしないし、ドジだし、背だって普通より少し高いぐらい。
でも優しいし、気が利くし、無邪気に笑うところが可愛いし、なにより一緒にいて落ち着く。だから好きだ。
だけどそれは長い時間一緒にいないと分からないことで、第一印象で好きになるなんてまずありえない。そんなモテる部類の人間じゃないから油断してた。
こんなことになるなら早く告白しておくべきだった!!
私が一人でむしゃくしゃして机をドンドンっと叩いていると横から声をかけられた。
「おーい、陽菜。そんなに落ち込んでどうした?」
「これが落ち込んでるように見える?」
「見えるけど」
「そうだよ、落ち込んでるよ!」
普通ならばイライラしているように見える行動にもかかわらず、的確に私の心理を読み解いた彼女は真鍋唯。私と翔と同中で翔の数少ない女友達だ。
類は友を呼ぶっていうやつなのか。私と唯は顔がそこそこ可愛くて、それなりにモテる似た者同士だと以前に翔に言われたことがあった。
確かに私から見ても唯は可愛い。なのに彼氏を作らないのはなぜなのか聞いたことがあったが教えてくれなかった。
そんな唯に対して私は今までの経緯を説明する。
「あちゃー、それは陽菜の自業自得じゃない? だから先を越されたんだよ~」
「うぅ、翔のばかぁ!」
行き場のないこの怒りをここにいない翔にぶつける。
「そういえば翔のやつ、今日は彼女と初めて一緒に帰るんだって喜んでた」
「へ~、そうなんだ」
「あぁ!! 今日は失恋パーティーだぁ!! 唯、帰り一緒にやけ食いしにいこ!」
「私今日は無理なんだ。彼氏と一緒に帰るから」
「えぇ!? 唯、彼氏できたの!?」
「うん、昨日告白してオッケーもらえたの」
「へぇ、そうなんだ」
そう言えば、翔も昨日告白を受けてオッケーだしたって言ってたような。
「同じクラスで、ずっと近くにいられるから幸せなんだ」
「...よかったね」
同じクラス。これも翔と一緒。
「やっと付き合えるんだから、楽しまないとダメだよね」
「...そう、だね」
やっと付き合える? まるでずっと好きだったみたいな...。だってどんな長い時間片思いしてて、しかも同じ高校、同じクラスなんて限られてくるんじゃ?
「じゃあ、時間だからもう行くね」
「...うん、また明日」
考え込む私をよそに、教室から出ていく唯。そして扉のところで振り返り一言。
「あ、先輩からアドバイスをあげる。油断してると横から泥棒猫に攫われるから早めに首輪をしておいたほうが良かったね、万年幼馴染みさん」
唯のその勝ち誇った顔を見て、私は瞬時に理解した。
「~~~~っ! この、泥棒猫ぉ!!!!!!!!」
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
この話は知り合いのリアルにあった話を参考に、少し脚色して書き上げたものです。本来は唯ちゃんに当たる人物はもっと可愛らしいものであったのですが、どうせなら思いっきり悪役にしてやろうと思いこのような終わり方にさせていただきました。
初めて悪役を書いた感想としてはあまり心地の良いものではありませんでした。多分、悪役は必要に迫られなければこれからはあまり書かないと思います。
では、またいつかお会いしましょう。