第80話 トラオムダンジョン
ダンジョンの完成は近い。
みんなでフォースの作業を見守りながらほのぼのしていた。正確に言えば、ネーブルは別行動中だ。デイブレイクに呼ばれたようだ。なんの用事か教えてくれなかったけど、きっと、おつかいクエスト的な何かだろう。
待っていれば時期に帰ってくるさ。
「フォースちゃん、頑張っていますね」
「そうだな、ゼファ。もう完成も間近だ。でも、思ったんだけどさ――」
「どうか、なされたのですか?」
「うん、よくよく考えたらさ、今作ってるのは集客用ダンジョンなんだよな。言ってしまえば金儲けの為の」
「そうなりますよね」
「だからさ、俺たち専用も欲しいんじゃないかって。ほら、他の冒険者が一緒ってのも悪いだろう」
「それは名案ですね。さすが、ユメ様です♪ わたくしは大変良いと思います」
うんうんとゼファは肯定的だった。
理解があってありがたい。
ということで、一応、夢幻騎士たちにも意見を聞いてみた。
「シリウス、どう思う?」
「いいんじゃね。てか、身内限定ダンジョンってことだよな! それいいね、俺は賛成だね。他のパーティとトラブルになりたくないしよ。そうだろう、ベテル」
「あたしは別に――と、言いたいところですけれど、ユメさん御一行とご一緒出来るのなら、それもアリかなと。プロキオンはどう思いますか」
「確かに他のヤツがいると、神槍ちゃんを投げた時に横殴りしちゃうかもなぁ」
そういう懸念か。
なるほど、それはトラブルの元になりそうだ。
俺は最後にフォースに問いを投げた。
すると、意外すぎる返答があった。
「ユメ、このダンジョンは『トラオムダンジョン』なので、他のパーティと遭遇することは決してない。ダンジョンの作成と入場には、パーティかギルドが必須。よって、その団体だけのダンジョンが作成されるので、他人を気にせず気兼ねなくダンジョンを攻略できる。ちなみに、ダンジョンはそこの水晶で作成が可能」
「な……なんだって」
フォースにしては気の利いた仕様にしてくれたなぁ。すげぇぜ!
さすが、極魔法使いだよ。
なるほどねぇ~。
まさかの『トラオムダンジョン』と来たか。
俺はてっきり『通常ダンジョン』かと思ったのだがな。
パーティ・ギルド単位で各々作れるのなら、それは快適だ。
「ダンジョンはいくつまで作れるんだ?」
「無限。あと、階層仕様は全部ランダムで地下9999階まで存在する。最終ボス階層だけ共通で、ユメのお母さん……つまり、魔王」
「おいおい、凄すぎるだろ!」
てか、地下9999階って……大ボリューム。
永遠に遊んでいられそうだなぁ。
「――――完成した」
「おぉ! ついにか、お疲れ様だ」
「お疲れ様です、フォースちゃん」
「お疲れ」「お疲れ様です」「お疲れちゃーん」
夢幻騎士たちも労いの言葉を投げた。
「よ~し、さっそく試しにダンジョンを作成してみるか! ネーブルが戻ってきたら行ってみるぞ」
みんな「おお~!」と声を合わせたが――
事態は急変した。
「ユ、ユメ……!」
ドロンと突然現れたキャロル。
なぜか傷を負っていて、今にも倒れそうだった。
「キャロル!! おまえ、どうした……」
「…………しくじりました。ごめんなさい……」
「謝るのはいい! 事情を話せ。いや、先にゼファ、グロリアスヒールを!」
「わ、分かりました」
ゼファにキャロルの治癒を任せた。
ヒールが掛かり、キャロルの傷は癒えたが辛そうだ。
「――で、どうした。ゆっくりでいい話せ」
「……はい。実は例の海賊がまた現れて…………確か名をピエトロと……」
ピエトロ……この前、俺がぶっ飛ばした奴か。
性懲りもなくまたやって来たのか……!
「あの海賊たち、今度は100人規模で現れたのです……。私たちデイブレイクは防衛の為に戦ったのですが……ヤツ等は見たこともない兵器を使い…………ぐっ」
「おい、キャロル!」
「だ、大丈夫。……ユメ、あなたには話さねばなりません。ネーブルのことを……」
「ネーブルがどうかしたのか……!?」
「彼女は一緒に戦ってくれたのですが、今は敵に捕まっています…………」
馬鹿な。
ネーブルが捕まった? ありえん。あのネーブルだぞ。
「あの兵器はよく分かりませんが、とにかく恐ろしいものでした。ユメも気を付けて……はやく、港へ……」
そこでキャロルは気絶した。
「……ゼファ、キャロルを見ていてくれ。フォースも来るな。嫌な予感がするんだ。あと夢幻騎士たちもここを守ってくれ。ないとは思うけど、俺に万が一があったら困るからな」
「あいよ。こっちは任せろ、ユメ。お前の大切な仲間は俺たち騎士が必ず守る。命にかえてもな。これは女王様の命令とかではないぞ。俺たちの信念だ」
「……ありがとう、シリウス。行ってくる」
◆
【 パラドックス - 港 】
港はまたも破壊されていた。それどころか街にも少し被害が。
くそ……また抜け道を使って来やがったか、卑怯な!
見つからないよう、様子を見ると――
「ネーブル……!」
縛られている彼女の姿があった。
なんだこの光景は……信じられない。これは夢か幻か……そうだったらいいんだが、くそ、前よりも敵の数が多い。
ネーブルの隣にはあのピエトロ。
今はアリアに成り代わり、船長をしているようだな。というか、前にあれだけ強く顔面を殴ったのに、ピンピンしていやがった。……どういうことだ。死なないよう手加減したとはいえ、これはおかしい。少なくとも顔面骨折くらいはしているはずだが。
最悪な事に、ネーブルとピエロトの距離が近すぎる。あれでは、ピエトロを攻撃してもネーブルを巻き込んでしまう恐れがある。
距離を縮めつつ動向を注視していれば、ヤツはネーブルの服をファルシオンの剣先で少しずつビリビリ切り…………
「ひゃひゃひゃひゃ!! ヤツの女なんだろう!? こりゃいい。聖女は手に入れられなかったけどなァ、お前でも十分だ。俺様を楽しませてくれやァ!!」
ビリビリと、嫌な音がする。
「や、やめて……」
ネーブルは力なく抵抗するが、だめだ、病気のように脱力してしまっている。あれでは……くそっおおおおおおおおおおおお!!!
ピエトロは、ネーブルの服を切り捨て――次に下着を。
殺す。
「おい…………やめろ」
「あァン? お~~~~~~と、てめぇーか! 待っていたぜぇ!! ククククク……いいか、動くんじゃねーぞ。それ以上動いてみろ、この金髪の女を丸裸にしてやらあ! そのあと、じっくり俺が味わってやるよ。お前の目の前でなァ!!! クハハハハハハハハハハ!!!!!」
「おい、ゴミクズ。俺の女に手を出したこと……一生後悔させてやるよ」
「ほ~~~? ちゃんと聞いていたのかよ、小僧ォ!! おい、ヤロウ共、例の兵器を使え。こいつの持つスキルを無効化するんだァ!!!!!」
海賊たちは、見たこともない筒状のモノをこちらに向けた。
…………なんだあれは、古代兵器――いや、未来兵器か?
その筒の先から、淡い光が放たれた。
それが俺に命中する。
「……?」
「ハハハハハハハハ!! それを浴びたな。その奇怪な光線を浴びるとな、どんな所持スキルも無効化される。発動できなくなるんだよ!! これでお前はただの人間。ざまあみろ!!!」
他の海賊共も大笑いした。
そうか、そういうカラクリか。
ネーブルはこの光を浴びて、スキルが使えなくなったんだ。だから、呆気なく捕まったに違いない。
誰が海賊にそんなモンを提供したか知らんけどな……。
それよりも、俺はピエトロを……海賊共を絶対に許さん……。誰一人残さずぶちのめす。いや、もう二度と会うことのないよう、消えてもらう。
「…………はぁ、無効化ね。―――もういい、お前はヒトの痛みを思い知れ」
「はあ? まだ強がって――――え」
闇がピエトロの両足を螺旋状にし、力の限りひん曲げた。
「は…………ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
叫ぶナニカ。
「かぁ……なぜだ。なぜ無効化されな…………」
「ひとつ言い忘れていたな。俺の闇はスキルではないんだよ」
「んなアホなああああああああ、うあああああああああああああ!!! 俺様の足が、足がああああああああああああああががげべうええげえええええええええ」
……果てしない殺意があったけど、こいつはやっぱり殺さない。生かしも殺しもせず、永遠の苦痛を与え続けることに決めた。
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