第78話 ソウルテレキネシス
海賊共は去った。
よく確認すると、船は五隻ほどいたようだ。そうか、あの女船長……アリアだっけ。名を上げた海賊だったんだな。
今となっては謎多き女性だったけど。
リサと別れ、俺はフォースの所へ戻ろうとしたが、彼女は諦めなかった。
「……う、腕を引っ張らないでくれ」
「ユメさんは私と結婚するんですもん。今から既成事実を作っておかねばなりません」
「うわっ、それはマズイ。ヒジョーにまずい。すまん、リサ。俺には将来を約束した大切な人が……」
「ゼファさんですね!? 分かりました、倒します」
「!?」
た、倒すって……。
「確か、ゼファさん港にいますよね。宣戦布告してきます」
「え、あ?」
びゅ~~~んと猛ダッシュでリサは行ってしまった。
あー…。うん、ゼファには後で説明しておくか。
◆
専用ダンジョン(仮)の場所へ戻った。
暗黒地帯自体にそれほど変化はないが、着実に地下ダンジョンが形成されているようだ。さっきまではなかった大穴が出来ているし、なんかそれっぽい雰囲気にもなって来ていた。
「ネーブル。フォースの事、ちゃんと見ていてくれたんだな」
「ばっちりよ~。まあ、こっちには海賊来なかったし、平和だったわ」
「ありがとう」
「な、なによ、照れるわね。当たり前のことをしただけでしょー」
「その当たり前が出来ない人間がいるからな、世の中」
「いやぁ、子供じゃあるまいし、これくらいは守れるわよ~」
「それでもだ。ネーブル、この場を離れず、俺の言うことをきちんと守ってくれてありがとう」
カァっと赤面するネーブルは、俺から視線を外した。
「バ、バカ……褒め過ぎよ。う、嬉しくなんか……」
「ん~?」
「…………嬉しい。すっごく嬉しい」
両手で顔を覆い、恥ずかしがっていた。
そんな乙女なネーブルがたまらなかった。……良いものを見れたなぁ。
万感の思いに浸っていると、フォースが戻って来た。
「お疲れ。どうだ、進捗は」
「あと半分。残りは明日やる。もう疲れた。あとユメ成分が足りない……」
足元がフラフラとなって覚束ないフォース。
おいおい、俺成分が足りないって……仕方ないな。
「ほれ、肩車してやるから」
「……うん」
脱力しているフォースを肩車した。
すると、少しずつ元気になってきた。なんて単純。
「ユメ~♡」
「うわ、馬鹿。揺らすと危ないぞ」
頬をスリスリしまくってくるフォースは、どうやら、俺の成分(?)を吸収しているつもりのようだ。これでいいなら、いくらでもやるけどな。
「ユ……ユメ、わたしは!?」
「え、ネーブルは……じゃ、腕でも?」
「いいわよー!」
太陽のような笑顔で俺の腕にしがみついてきた。
ネーブルの豊満すぎる胸が密着し、俺は心臓とか理性とかどうかなりそうだった。しかも角度的にも危うい。少し視線を落とせば、そこは未知の領域・谷間だった。よりによって今日はキャミソールで薄着だし……肩紐が取れ掛かっているし。
しばらく、このままでいたい。
よし……遠回りをして帰ろう。
◆
帰宅すると、そこにはゼファがいた。ほぼ全裸の。
「…………うわっ、ゼファ!」
「あら……良かった。ユメ様でしたか。知らない男性だったらどうしようかと」
「いや、あの……ゼファ、下着をつけてくれないか!?」
「あ……ごめんなさい。ちょうどお風呂に入っていたので」
「あ、ああ、港であんな事があったし、汚れたもんな。ってまて、脱衣所あるだろ。どーして、リビングで全裸なんだ……」
「はい……それが不思議なことに、わたくしの修道服と下着が無くなっていたのです。どうしてでしょう……」
ゼファは困惑していた。
「無くなった~? 下着泥棒かな」
「え……そうなのですか。怖いです」
「安心しろ。そうだとしたら、すぐ見つけ出して犯人を死刑にするからな」
万が一だ。
万が一そんな命知らずがいたのなら、俺が闇で殺す。
「ありゃりゃ、これは本気ね、ユメ」
「ったりめーだ! ネーブル、見かけたら捕らえるんだぞ」
「任せてよ! じゃ、わたしもお風呂行ってこよっと。フォース、一緒にいく~?」
「うん。ネーブルと一緒にいく」
「じゃ、俺は……」
「ユメ、あんたも来なさい」
「俺もかよ! ま、まあいいか。うわ、ネーブル……抱きつくなよ」
逃げられないように背後から捕まえられた。
それと同時に天国のような感触が――。
「今日はわたしがユメを洗ってあげるね」
ネーブルが……。
な、ならいいかぁ。
◆
乙女たちの準備時間は掛かるようなので、俺は先に風呂へ向かった。
戸を開けると、そこには知らんヤツがいた。
「………………」
「………………」
俺とそいつは見つめ合う形になった。
――が、俺は考えた。ひょっとすると、あの海賊の姿をしている男……恐らく今日現れた海賊の残党が下着泥棒ではないかと。いや、そうだ。そうに違いない。
「お前かあああああああああああ!!」
「げえええええ、見つかったあああああ!!」
闇の極解放で即捕まえた。
「うあああああああああああああ!!! なんだこの黒いの!!! 逃げられねえええ!!!」
「あたりめぇだ、下着泥棒! ゼファの修道服と下着はどーした!!!」
「教えるかボケ!! あのべっぴん聖女の身に着けていた物とか、宝すぎんだろ! 伝説の大秘宝や財宝よりも価値がある!! だから絶対に教えん。あれは俺が墓場まで持っていくと決めたァ!!」
「ふざけんなボケエエエエエエエエエエ!!!」
ぶん殴った。力の限りぶん殴った。
「ぼぼぼぼぼべべべげええええええええええええッ!?!?!?」
トドメを刺そうと思ったが、フォースに止められた。
「ユメ、その人は犯人じゃない」
「え……どういうことだ」
「その人は確かに泥棒。でも、盗んだものはアイテムショップのおばさんのもの」
「は?」
「ゼファのは別の誰かが盗んだ。まてまて、おばさんが家に招待されていたとしても、帰りはどうしたんだよ。矛盾しちまうよ。……ってまさか、おばさんがゼファのを身に着けて帰ったのか!?」
「そんなわけない。サイズが合わないし」
それもそうだ。
「じゃあ、どう入れ替わったんだよ」
「あたしたちの下着や装備には特殊なセキュリティスキルが付与してある。なぜなら、盗まれると危険。呪いや幻術……もちろん、如何わしいことに使われてしまう可能性があるから。持ち主に重大な悪影響を及ぼす。そんな危険からみんなを守るために施している。だから、あたしが魔法を掛けた……黙っていてごめんなさい」
「あー、つまりなんだ。フォースの魔法が反応して、アイテムショップのおばさんの下着と入れ替わったと?」
「そう」
「……じゃあなんだ。あのコソ泥が持っているものは……」
「おばさんの下着で間違いない」
「………………………」
真実を告げられ、絶望&石化する海賊。
反応がない、ただの屍のようだ。
「でも、ナイスだ。フォース」
「うん。とりあえず、あの下着泥棒は排除する」
フォースは、人間相手に『杖』を取り出した。
げ、マジ!?
『――――――ソウルテレキネシス』
超強力なソウルフォースが海賊を浮かせた。
フォースは掌を押し出すと、アホをぶっ飛ばした。
「ギャアアアアアアアアアアアアア~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
「いっちょ上がり」
「よくやった。にしても、そんな万全にしていたとはなぁ。なあ、フォース。例えばの話なんだけど、俺が盗んでも同じ効果が出るのか?」
「ううん。ユメにその効果は絶対にでない。……だって、信じてるもん」
「…………っ」
そんな風に言われて俺は、めちゃくちゃ嬉しかった……。
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