第08話 俺は困らない
資金調達のため、エクストラボス狩りへ。
四属性大陸に舞い戻ったわけだが――その為にはどうしても、風の帝国に寄る必要があった。
そして、今、風が襲い掛かってきていた。
「これは……トルネードの風属性スキルで間違いない……上かっ」
空から人間が飛んで来ていた。
風を利用した飛行あるいは浮遊だろう。なんてヤツだよ。
「――――とっ!」
俺は向かってくる剣を避けて、避けて、避けまくった。
「避けるな!!」
「避けるわ!!」
トルネードが無茶な要求をしてくるが、俺は避ける。
だって、当たったら痛いじゃん。
ブンブン振り回してくるが、まあ当たるわけない。
「やめろって、しつこいぞトルネード」
「黙れッ!!」
突風が舞う。
いや――これは竜巻か。まずい、吹き飛ばされ……ないけどな。
「仕方ない……」
「ほう、やっと投降する気になったか、ユメよ」
「なわけねーって」
ちょうど木々の生い茂るフィールドに入ったので、俺はトルネードに向けて掌を向けた。
「なんだ、私に掌を向けても意味はないぞ! それとも、何かスキルを使う気か? 無駄だぞ、我が防具は神器であり、上級スキルでも無効化するほどだ」
「へぇ、そりゃ凄い」
「貴様! 私を馬鹿にしているのか!!」
「いいや、ちっとも。けどな、極スキルは無効化できないだろう」
「なにッ!?」
俺は『ソウルフォース』を使い、力で枝やら蔦やらを伸ばし、トルネードの体に絡めた。一歩間違えると、触手に巻き付かれてしまったエロっちっくな騎士だが、そこは脳内変換に留めておこう。
「――――うわぁ!! ユメ、貴様ぁ!!」
「すまん、トルネード。お前ってほら、過去に俺たちを助けてくれたことがあったろう。その恩義もあるし……あと帝王に伝えておけ。俺たちはもう戻らん!! 自業自得だ、馬鹿野郎とな」
「ユメ!! 戻れ!! 風の帝国に戻るんだ!! お前が必要なんだ!! でなければ、私は…………帝王様が困る!!」
「俺は困らない」
それだけ言い残し、俺たちは足早に去った。
◆
フォースの機嫌がとても良かった。
「ユメ~~~♡」
猫のようにスリスリと擦り寄ってきていた。
甘えモード全開で、回りにお構いなしだった。
「なんだ、フォース。どうした」
「ソウルフォース使ってくれたから、嬉しいの」
「ああ、それな。いやぁ、闇スキルでも良かったけど……ほら、師匠の教えがあったろう。この世はバランスなんだって。闇ばかりに囚われてしまうと、いつか闇に飲まれてしまうって。だから人間、ほどほどがいいんだよ」
「うん。火、水、風、地、光、闇……すべてがバランスを取っている。ひとつでも欠けたら、この宇宙はメチャクチャになっちゃう」
フォースは俺をまっぐす見つめた。
闇ばかり極めた俺に対する警告だろう。ありがたいことだ。
◆
【 風の渓谷ダンジョン 】
冷たい風が頬を撫でた。
ついでに、ゼファの冷たい手も俺の頬を撫でた。
「ありがとう、ゼファ」
「はい。これで、ユメ様のお顔が綺麗になりました」
さきほど、泥型のクリーチャーの大群に襲われ、みんな泥まみれになったのだ。
「まったく、あんなクリーチャーありかよ。ドロップもたいして美味くねぇし」
「そうですね~…。せめて、レアアイテムを落として戴ければお国のためにもなってありがたいのですが」
肩を落とすゼファ。その通りだ、その点、モンスターはレアアイテムを落とすし、獲得経験値も数倍も多い。
まったく、魔神ってヤツぁ泥といい、嫌がらせが好きそうだな。
「ユメ、もうすぐエクストラボスのいる場所よ」
先頭のネーブルが叫ぶ。お、もう着くか。
しかし……その時、大事件は起きたのだ。
「キャアアアアアアアアアアア~~~~~~!!!」
奥の滝の方から女性の悲鳴が――。
「みんな、急ぐぞ!!」
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