第65話 風の帝国<キリエ> 救済
俺はまず、ダークエンチャントを両手に付与した。それから国の人々を巻き込まないよう細心の注意を払い――スキルを投げた。
『カラビ・ヤウ――――――!!!!!!!!』
この『カラビ・ヤウ』は広範囲の闇属性攻撃を行えると同時に、ダークエンチャントの付与があればターゲットを絞ることも可能だ。
攻撃対象をモンスターのみにセット。
「いけええええええええええええッ!!!」
闇で生成されたシンプルな棘がモンスターへ追尾、次々と倒していった。威力もダークエンチャントでアップしているため、あの程度のモンスターならば一撃で仕留められる。
「ネーブル! 東の方角に面倒なパープルゴブリン軍団がいる。頼む」
「おーけー!」
白い歯を見せて笑うネーブルは、叫んだ。
『サンダーボルト!!!!!!!!』
パープルゴブリンおよそ数百は、一瞬で焼死あるいは蒸発した。さすがだ。あいつらは、人を襲ったうえ、物を強奪していく凶悪なヤツ等だからな。容赦しなくていい。
「よし、みんな。『風の帝国』へ突入する。フォース、テレポートで俺たちの住んでいた家の座標に合わせられるか?」
「まだ覚えている。可能」
「でかしたっ! 二人ともフォースに掴まれ」
ネーブルとゼファは、フォースの肩に触れた。俺は特等席に触れた。
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テレポートは一瞬だ。
目蓋を開ければ、そこは元俺たちが住んでいた場所だった。
「…………懐かしいな」
「そうね、わたしたち此処にいたんだよね」
少し切ない顔を見せるネーブル。
「あの時も幸せでした。でも、今はもっと幸せです」
ゼファは俺を見て言った。
「いっぱいユメと一緒にお風呂に入った」
いや、フォースよ。それは今もだろう。
ま……思い出はたくさんあったな。
だが、感傷に浸っている場合ではない。今もなお、モンスターの群れは大量に侵入してきている。食い止めねば……!
家の跡地を出ようとした時だった。
「……ユメさん!!」
「フーコじゃないか……! どうしてここに!」
風の騎士団の騎士・フーコだった。
「民を守るためです。たまたま通りかかって……危ないっ!!」
ガーゴイル、コボルト、ミノタウロス、オーク、ゴブリン、スライム、ワーム、ゾンビ、ドラゴン、デーモン、ウルフなどなど数々のモンスターがどんどん押し寄せていた。
フーコはたった一人で、果敢に戦っていた。おいおい、無茶しすぎだ……ていうか、さすがにこの数だ。倒し切れてはいない。
『インターギャラクティクダスト』
手を貸そうと思ったその時、フォースが大魔法を唱えた。
上空から『塵』が光速で降ってくると、モンスターだけが刹那で死滅した。跡形もなく消えるモンスターの軍勢の光景は圧巻。
それに続き、ゼファも。
『グロリアスグレゴリオ』
これは、聖歌スキルか。
ゼファが歌い始めると、モンスター以外を『9999ヒール(10秒間)』、『一定時間、自然回復速度100%』、『物理防御力アップ』、『アイテム回復量増加』、『呪いに掛からない』になった。
「こりゃすげぇのが来た」
「こんな大変な時ですから、本気ですっ」
「いいね、これなら戦闘も早く終わりそうだ」
よしよし、もうあと半分ってところだ。
「フーコ、平気か」
「は、はい……さすがですね。皆さんお強い」
「そや、トルネードとかどうしたんだよ。なんで一人なんだ?」
「騎士長ですか……。それがその……行方不明なんです」
「行方不明!?」
「はい……三日前のことでした。ひとりの魔神が突然現れ、大規模な攻撃を受けました……。トルネード騎士長は数人の騎士を連れて立ち向かっていきましたが……帰ってくることはありませんでした。風帝結界が弱まった今、この風の帝国は恰好の的というわけです」
「そうか……。まあ、あのトルネードのことだ、きっと生きている。大丈夫、アイツは無駄に丈夫だからな。過去何度も戦った俺が言うんだ、間違いはない」
「そう、ですよね。私、ユメさんの言葉を信じます。ですから……」
フーコは不安を吹き飛ばしたようだ。
剣を抜き、勇ましく構えた。
「いきましょう。今は騎士長の代わりに民を助けるのです」
良い顔だ。
「おう。あと少しだ、がんばろう」
◆
街に出ると、建物の原型はほぼなくなっていた。
モンスターの攻撃により廃墟と化した街並みに、俺は激しい怒りを覚えた。……テティスめ、ここまでやるか!!! 許さん、絶対にだ。
国の人たちは、避難したのか気配はない。しかし、逃げ遅れた人だろう……何人か倒れていた。……あれは、近所の爺さん……。よくお世話になっていた。
「くそっ……」
俺がもう少し早く駆けつけていれば。
「うそ……あのホアキンさんが……」
ショックを受けるネーブルは呆然と立ち尽くした。
そうだな、ネーブルはよく遊びに行っていたもんな……。
「ユメ様……。わたくしが……」
「爺さんを頼む」
――――俺はもう迷わない。
すべてのモンスターぶっ潰す……!
『――――ダーク・ヘルズ・ディメンション!!!!!!!!!!!!』
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