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第57話 偵察使い魔・カダス

 同盟の件はいったん保留にした。

 今は、ブリュンヒルデからの依頼――姉・アトリの捜索を優先させねばならない。さて、どうしたものかとキャロルのギルド拠点を後にした。


 それから帰路をゼファと共に歩いていると。


「そういえば、ユメ様の妹様とお姉様、お母様はご無事でしょうか……」

「そうだな……それをフィから聞き出さないと。その為にも、光の天国(ベネディ)へ行かねば。でも、うーん……」

「あの、なにか問題があるのですか?」

「うん。ワープはできない」

「あ……」


 察したようで、ゼファは落ち込んだ。


「顔を上げてゼファ。フォースの事ならきっと大丈夫だ」

「はい……わたくしも信じております。フォースちゃんはきっと帰ってきてくれるって」

「ああ、大丈夫だ。…………ん?」


 なんだ、ダークウォールの外側が(にぎ)やかだな。となると、クリーチャーの襲撃だろうか。音は遮断(しゃだん)されているから分からない。ならば、偵察衛星(使い魔)から監視してみよう。


「――――ほーん」

「?」


 ゼファは首を(かし)げた。


「あー、これね。今、外の様子を見ているんだよ。ほら、ゼファにも権限をあげるよ」

「え……」


 偵察衛星(使い魔)の権限を付与すると、ゼファも外の状況が視られるようになった。その状況に驚き、飛び上がっていた。


「すごい、すごいです! 壁の外が見えるのですね」

「ああ、実は『闇の覇国(アニュス)』の偵察使い魔・カダスを使っているんだよ。だから、使い魔がやられちゃうと見れなくなるけど、通常、偵察使い魔は宇宙空間で静止しているから、そう滅多にはやられない」

「そうだったのですね。ユメ様すごいです♪」


 目をキラキラを輝かせ、ゼファは尊敬の眼差しを俺に向けた。

 なんだか照れるな!


 いやしかし、外の状況はやはりというか……クリーチャーと魔神が攻めてきていた。けれども、壁は傷ひとつ付いていない。プラズマ砲が自動で敵を排除し、その数をどんどん減らしていた。


 やがて、戦闘は勝手に終わり――勝利した。


「あ、勝った」


 勝利すると、ゼファは祈りを捧げていた。

 さすが聖女。慈悲深い。



 ◆



 家へ帰ると、ネーブルが片手腕立て伏せを繰り返していた。

 彼女の肉体美はああやって作られていた。


「おかえりー」

「ただいま。相変わらず汗ひとつ掻かず、余裕顔だなぁ。すげぇよ。今何回目だ?」

「ん~? 今、99999……100000! こんなの楽勝よ。ユメもさ、身体鍛えたほうがいいわよー」


 10万回って……普通、腕が死ぬだろ。普通。


「遠慮しておく。……ネーブル、ちなみに背中に乗っても出来るのか?」

「乗ってみれば?」

「いいのかよ」

「試してみれば分かるわ」


 ほう、そりゃ興味があるな。

 いくらネーブルが鍛えていて腕力があるとはいえ、人間を乗せて片手腕立て伏せなど出来るわけが――――出来てやがった!!!


「うそ……」

「すごいでしょー。伊達に筋トレしてないわよ、ふふふ」


 マジで凄かった。

 超初心者(スーパービギナー)恐るべし……。


「まあ、なんだ、ネーブル」

「ん」

「アトリを探しつつ、光の天国(ベネディ)へ向かう。しばらく旅だ。俺とゼファとお前とな」

「うーん」


 ネーブルは悩んでいた。そうだな、悩むよな。

 分かっている。ネーブルもフォースを大切に思っている。だからこそ、すぐに返事はしなかったのだ。


「フォースの面倒はキャロルに任せようと思っている。彼女なら安心できる。任せられる。……でも、確かに置いていくのは心配だ」

「うん。けどさ、ユメの妹さんとお姉さん、お母さんが行方不明でしょ。そっちだって、大切よ。だから……ついていく。大丈夫、デイブレイクはわたしがお世話になっていた最強のギルドだもん。絶対に守ってくれるから」


「ありがとう」


「……ひゃ……」


 ひゃ?

 なぜか、ネーブルは石化したかのように固まった。


「ユ、ユメ。その笑顔は卑怯(ひきょう)よ……。もぅ……」

「どうして顔が赤いんだ、ネーブル」

「いや、なんでもないって……! ぁ……」


 なんだかよく分からず、ネーブルを見つめていると、彼女はどんどん顔を赤くして――仕舞にはとんでもないことを口走った。


「あ、汗掻いちゃったし……一緒にお風呂いかない……?」

「なっ!? ――って、まぁ、いつものことだけど。お前から誘ってくるのは珍しいな。どういう風の吹き回しなんだか」

「う……いや、別にいいでしょ。毎回一緒なんだし!」

「それもそうだけどさ。まあいいか、じゃ、行こう」



 ◆ ◆ ◆



 ディオネの研究を盗み出した『エンケラドゥス』は、笑っていた。


「フハハハハハハハッ……。素晴らしいではないか! これが悪夢――『ナイトメア』か。なんだこれは、なんだこのバケモノは……! これがクリーチャー!? ありえん! 我ら魔神をも超越する存在ではないか。これをこのエンケラドゥスが取り込むことが出来たのなら、魔神王を超えるぞ……! だが、現状では足りぬ。やはり、魔王か。魔王の血が足りぬのだ。一滴ではない……ありったけ(・・・・・)の血が必要だ。その為にも――ククククク、フハハハハハハハハ!!!!!!」


 エンケラドゥスの目的はひとつに定まった。


 三人の魔王を捕らえているという【Eins(アインス)】――No.1の『ミマス』抹殺に。そもそも、今日この時点で、魔神や魔王は時代遅れと察したエンケラドゥスは、すべての魔神抹消に乗り出したのであった。




 ――――真の『悪夢』がはじまった。

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