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第54話 勝利の栄光

 ニカイア――いや、マスターグレイスは行ってしまった。

 それから、女王・フィラデルフィアは、光の天国(ベネディ)にて待つと言い残し、去った。詳しいことを聞きたかったが、今は何よりもフォースだ。


 俺は彼女を抱え、国へ戻った。



 ◆



 国へ帰った瞬間、みんなに囲まれた。

 国中のみんなだ。ひとり残らず集結していた。まるで英雄の凱旋(がいせん)かのようなそんな扱いだった。こりゃ、驚いた。


「防衛お疲れ!!」「国の平和をありがとう!」「あなたが英雄だ、ユメ!」「パラドックスは永遠だ!」「我々の結束力があれば無敵だ」「ユメ様、こっち向いて~!」「きゃぁ、ユメ様かっこいい!」「魔神をもう恐れる必要はない!」「祝杯だー!!」


 みんな、それぞれの想いを叫んでいた。

 あたかも俺が活躍したかのような状況になっているが、それは違う。



「いや、これはみんなの勝利だ! みんなの力がなければ、この国は生き残れなかった……俺の方こそありがとう!!」



「おおおおおおお!!」「なんて謙虚な方なんだ……」「やばっ、私惚れそう」「うんうん、やっぱり英雄は違うな」「あの方こそこの国の王に相応しい!!」「そうだ!」「俺は一生あんたについていく!!」「私は今度こそ結婚を申し込むわ!」「ありがたきお言葉だぁ……」


 なんかトンデモないことになりつつある。

 いやぁ、俺はみんなが幸せならそれでいいんだけどな。



 ◆



 フォースはまだ眠りについている。

 俺の寝室に寝かせていた。


「……」


 今はそっとしておいてやろう。きっと、いつか目を覚ます。



 部屋を後にしてリビングへ向かった。

 何も考えずに扉を開けると――そこには。


「……ゼファ」

「……ユメ様」


 困ったことに、下着姿だった。

 どう反応したらよいか。いや、ま……一緒に生活していれば、こんなこと度々あるけどさ。うーん、それにしても……聖女があの派手なのはどうなんだろう。目のやり場に困るぞ。


「ど、どうなされましたか、ユメ様」

「いやぁ……ねぇ。いつもの修道服はどうした?」

「分かりません」

「分かりません!? って、えぇ……」


 ゼファは立ち上がり、そのまま俺の方へ近づいてくる。……い、いかん! その姿で接近されては、俺の理性とかマズイ。


「ちょ、え……本当どうしたんだよ、ゼファ」


 ――で、なんか知らんけど、そのまま抱きしめられた。…………うわぁ、肌が。白い肌がモロに……やわっ! いやそうじゃない! 心拍数がやばい、今にも口から心臓飛び出そう! なにがどうしてこうなった!? ゼファはキレイだし、そりゃ魅力はある。けどけど、こんな真昼間から、そんな……!?


「ふは~~~、いいお湯だったー…って、ゼファとユメ、なにしてんの!?」


 俺はすでにゼファに押し倒された状態だったが、そんな時に限って、ネーブルが風呂から戻ってきた。ネーブルは肩にタオルを掛けているだけの全裸だった。


「お、おい……ネーブル」

「あ……あはは……」


 笑って誤魔化すネーブル。顔がめちゃくちゃ赤いぞ。


「ま…………まあ、いいんじゃない。これでユメが元気になるなら……」


 別の意味で元気になったよ……トホホ。


「てか、なんかいつもと感じが違うな。いつもなら怒るところだろうに」

「だってさ、ユメってば、フォースことで元気なさそうだったし。だから、元気づけっていうか」

「せめて、下着はつけてくれ……。マジで直視できん」

「そ、そうだよね。うん、着替えてくる」



 ◆



 ――数分後、ネーブルも下着姿で登場。

 ふたりともどーして、そんなカッコなんだか。


「ゼファ、ネーブル、服は着ないのか」


「いりません」ゼファはキッパリ。「いいじゃん、別に家の中だし」ネーブルも当たり前のように。まあいいか、よく考えれば見慣れたいつもの光景ではあったし。

 さっきの戦闘があったから、ついつい忘れていた。


 そうだ、これこそ俺の日常だ。


「あ、そういえば……」

「ん、どしたゼファ」

「ブリュンヒルデさんの件、すっかり忘れていましたね」

「あー…、そや地の神国(クレド)で見つけられなかったな。見つけられれば、魔神の秘密を聞き出せたかもしれないけど、うーん……今回ばかりはクエスト失敗かな」


 依頼を達成できなかったことは無念だ。

 また機会があれば見つけ出したいところだと、俺が仰向けになった時だった。


「あー…。そんなこともあったわね」

「ネーブル?」

「でもさ、ユメってば忘れてない?」

「え」

「泳がしていた魔神を潰すって言ってたでしょ。すっかり忘れてる」

「完全に忘れてたわ。そいや、まだこの国にいたっけなぁ~。今日もいたわ。でもさ、なんか事情有り気なんだよね。こっちの味方をきちんとしてくれているし。だからなぁ、追い出すのも気が引けるつーか」


 迷っていれば、珍しくネーブルが膝枕(ひざまくら)してくれた。すげぇ珍しかった。普段は絶対にしてくれないし、懇願しても「ふざけんな」とキレられるのがオチだった。……まずいな、よっぽど心配させているらしい。


「事情を聞いてみれば?」

「うーん。そうだな、でなければ、ヒルデの姉・アトリは見つけられそうにないかも。これは、勘でもなく、ソウルフォースがそう告げている」


 師匠(マスター)・グレイスが使ったフォースへの治癒スキルらしきパワーが俺にも流れ込んでいた。あの不思議なグリーンオーラを浴びてから、俺はまたソウルフォースなんたるかを理解し始めていた。だから、今なら少し先の未来が分かる。


 よし、明日にでも彼女(・・)に聞いてみるか。

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