第52話 国、同盟、力<トラオム>
「…………な、なにを……! カッシーニ!!! 私を裏切るのですか!? 私と共に、魔神王を倒すと約束したではありませんか!!!」
「……フフフフ、ディオネ。お前は我、魔神王を裏切った。そして、今お前は最大の危機に瀕しているようだな」
「こ、この声は……まさか、魔神王・サトゥルヌス!!」
「いけない子だ。ちゃんと様を付けないと。さあ、どうする……このまま死ぬか?」
「ま、まって下さい! 私はただ……」
「ただ? なんだ? 言ってみろ」
「こ……この世界を悪夢に染め上げようと」
「ほう、そうか。ならばこの世界は一旦貴様に任せよう。我は我の興味を持った多元宇宙にしか手を下さぬのだからな。そう、今の我はあのような有象無象を相手にしている余暇はないのだ。
なれば、力を授けようぞ。あとの処理は任せた。さらばだ」
「…………はっ。寛容、感謝いたします」
くそっ、なんだって……。
魔神王が退いたていうか、逃げ出した!? そんなのアリかよ。魔神王は、気まぐれなのか。それとも。
……いや、今はいいな。とにかく、この状況を何とかしないと!!
「おぉぉおおおぅおおおおおおッ!!!
力だ……力がみなぎってくる!!! 素晴らしい……これが魔神王の力か……!!! これがあれば、ナイトメアをもっともっと量産できる。いや、その必要もないかもしれない。私ひとりで十分だろう! だが、せかっくのナイトメア軍団だ。力を与えてみようではないか」
ニヤっと笑うディオネは、手を向けて、ナイトメアに力を注入し始めた。……まずい、どんどん強くなっていやがる!!
「ふははははははははは……!!! どうだ、『劣化した闇』はついに『劣悪の闇』へと変貌を遂げたぞ!! これで、貴様にまた一歩近づいたということだ。しかもこの数だ。実質、究極の闇であろう」
「くっ……!」
「ユメ、このままでは……」
スーパーノヴァを出し続けてるフォースの顔に余裕がなくなってくる。
「……も、もたないかも……」
凄まじい雷撃を飛ばし、耐え続けるネーブルも疲労が見える。さっき、あれだけ動いたしな、まずい。
「…………絶対に勝ちましょう。ユメ様」
最後まで希望を捨てないゼファ。さすが聖女だ。そうだな、その通りだ。諦めちゃだめだ。まだ完全に終わったわけじゃない。あと少し、ギリギリまで粘れ!!
どんどん押されている。
ああ、ちくしょう。このままじゃ、全滅だ。国も人間もなにもかもを失ってしまう。それはダメだ。せめて大切な人だけでも。
そう目を閉じ、最大のバランスへ力を向けようとしたのだが――。
(……ユメ、それはダメ)
フォースの声がした。テレパシーか。
(これだけの質量に対し、ソウルフォースを全て使うと、存在が消えてしまう。それだけは絶対にダメ。だから、あたしに任せて)
「お、おい……フォースお前……!」
杖を地面に突き立て『スーパーノヴァ』を放ちつつ、フォースは両手を空に翳した。
「………………っ」
「馬鹿!! 無茶するな、おい、すぐ止めろ……フォース!!!」
偉大なるソウルフォースの力で、『劣悪の闇』は押し出されていく。ただ、あの空いっぱいに広がるエネルギーの塊を押し出すということは、それだけ力も莫大となる。このままでは、フォースの存在が……!!
けど、ここでスキルを止めたら、皆やられてしまう。
フォースを止めることは出来ない……。
「クソォ!!!」
……仕方ない、命を投げ捨てる覚悟で――。
最終手段に出ようとした、その瞬間。
『――――命を粗末にするな、ユメ』
声がした。
聞き覚えのある威厳ある声だ。
すると、宙に光の亀裂ができ、そこからひとりの人影が現れた。汚れひとつないドレスに身を包んだ少女は軽快に動き回ると、それを放った。
『シュヴァルツシルト』
純粋な黒の力。それは即ち闇だ。
あれほどにキレイで儚い闇を扱えるのは、ただひとり。
「……ま、まさか」
あの声といい、据わった目をして俺を見つめる彼女は――。
「フィ……」
「うそ……フィラデルフィア女王様!?」
ネーブルが驚く。
いや、俺も驚いたわ。まさか、フィラデルフィア女王が現れるなんてな。
一気に押されたディオネは、唇を噛んだ。
「なんだあの目つきの悪い女は……! 突然現れ、闇使いに加勢しただと!?」
「…………余はフィラデルフィア。光の天国の女王だ。覚えなくていいがな」
「光の天国の女王だと!? だ、だけど……光の者が『闇』を使う!? なんだそれは!! ふざけているのか!!!」
「闇がなければ光は輝けぬよ。なにも矛盾はあるまい」
「あるだろ!! く……まあいい、たかが闇が増えたところで、私のナイトメアには勝てぬのだからな!」
ディオネはやや危機感を露わにし、そう強く言い放ったが――フィラデルフィアは、それを無視し、俺に向き直った。
「ユメよ。ここは余と彼女で請け負う。お前の本当の闇を見せてやるのだ」
パキパキと枝が折れるうな音がするや、フィラデルフィアの背後から『闇』が零れ落ちていた。彼女の闇は特別で、美しく、無駄がない。それこそ、女性の体のような繊細さがあった。
「って、まて。彼女って?」
「ああ、言い忘れていたな。感謝するがいい、彼女がこの危機的状況を知らせてくれたのだからな」
ちらっと後方を見ると、あれは……地の神国の――。
「ニカイア女帝……!」
「あらぁ、間に合ってよかったです」
「ど、どうして」
「この前の地の神国を助けて戴いたお礼です。ほら、ゾンビを倒してくれたではありませんか。それに、我々は同盟関係。だから、助け合うことになんら不思議はありません。ですから――」
ニカイアは微笑み、手を翳した。
「この力は……ソウルフォース。なんて膨大な……こんなんフォース以上じゃないか!?」
敵の攻撃を一気に押し出し、フォースの負担も減った。
あれなら、消える心配もない。
よし、これで――そんな時、国の方から大声が。
『我々も忘れられては困りますよ……!!!』
「キャロル!」
「ユメ! 我々も戦いますよ!! この防衛力を今、世界に示す時が来たのではないでしょうか!? 今ならすべてのプラズマ魔導砲140門を一斉に放つ準備が出来ています!!」
「ま、まじか……でも、そんなのどうやって準備を!?」
「ゼファ様が全てを教えて下さいましたからね! 国民全員の力を結集し、迅速に準備をしました!! これもすべて、ユメ、あなたの為です。あなたがいなければ、この国・パラドックスはなかった……一人はみんなのために、みんなは一人のために!!! さあ、あとはユメ次第です。ご命令を――――!!」
「……みんな、ありがとう……!! フォース、ネーブル、ゼファ、フィ、ニカイア、キャロル……国のみんな……!!」
みんなの夢、希望がある限り――俺は強くなれる。それが、俺の本質だから。
「キャロル! プラズマ魔導砲を俺の技と同時に撃て!」
「了解!!!」
今ならこれが使える。
質量、角運動量、電荷――すべての条件が整った今なら。
『――――――――――カー・ブラックホール!!!!!!!!!!!!!』
『プラズマ魔導砲、全砲門撃てえええええええええええええええッツ!!!』
俺の最大にして究極の闇がプラズマと共に加速膨張した。
それはやがて――――、
『………………そ、そんな……こんな光輝く闇が……あるなんて……これでは、まるで宇宙そのもの――――ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』
敵を無へと誘った。
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