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第50話 神器と最強の雷槍・ビルスキルニル

「一秒で私を倒す!? あははは……久しぶりにお腹を抱えて笑いました。無理です。不可能ですよ。なぜなら、私は――――かはっ…………」


 ディオネの首と体がお別れした。

 俺は、闇スキル『ダーク・ヘルズ・ディメンション』を仕掛けていたのだ。ヤツは完全に油断し、ふたつなって地面に転がった。


「ユメ、倒したの?」


 心配そうなトーンでネーブルは、俺の方へ歩み寄ってきた。


「くるな!」

「え……」

「ヤツは死んではいない」

「うそ……」


 そう、ヤツは生きていた。凄まじい『業気』を感じられたからだ。


「……よくぞ見破りました。はい、ご覧の通り、私は死にません」


 ぐっと身体を起こし、ディオネはそのまま首をくっつけた。……ヤツは不死身か。それとも、命のストックでもあるのか。


「驚いたでしょう? ……ま、一秒でないにしろ、私を一度倒したのは褒めて差し上げましょう。それと、あなたを見直しましたよ。一応、女の身である私を問答無用でバラしたのですからね……。その冷酷無慈悲……大変素晴らしい。それがあなたの闇なのですね。――ああ、なんてご馳走(ちそう)


 そう、自身の身体を抱きしめるディオネは舌舐(したな)めずりをし、俺を恍惚(こうこつ)とした眼差しで見た。嬉しかねーよ。


「で、ディオネ、あんたのソレはどういう仕掛けだ?」

「さあ? それより、ナイトメアです。私たちは高みの見物と参りましょうか。ねえ、カッシーニ」

「……」


 ディオネとカッシーニは、ナイトメアを置いて遠くへ離れた。……くそっ、ディオネを仕留めておきたかったが、まさか死なないとは。


「ナイトメアか。う~ん、相手するの面倒だなぁ。なんか気持ち悪いし」

「ユメ、そんな悠長(ゆうちょう)こと言っている場合じゃないでしょ。アレ、なんとかしないと国が滅ぶんじゃない?」


 慌てるネーブルは、ビリビリしながら俺を見た。

 焦る気持ちは分かるけどなぁ……だって、あのウネウネとかグロいし。


「じゃ、わたしが何とかしてあげよっか?」

「ほう、ネーブルがな。うーん。じゃ、本気出していいぞ」

「まじで!?」


「リミッター解除を許す」


 スキル『ライジン』には制限を掛けていた。

 あまりに強すぎるからだ。


 飛んで喜ぶネーブルは、フォースに解除を頼んだ。


「フォース、お願い」

「了解した」



 ――――で。



『バリバリバリバリバリバリバリ――――――!!!!!』



 などと、すっげぇ放電した。

 空気が震えるくらいのすごい稲妻だ。


 そうこうしている間にも、ナイトメアは一瞬で俺の目の前に現れた。なんつー早さ。やべぇ、なんかされそう。


 が、すかさずネーブルが強烈な蹴りを入れた。



『――――グッ!!!』



 ナイトメアが吹き飛ばされ、倒れるかと思いきや重力に逆らって浮遊した。……おいおい、そんなのアリかよ。そのままヤツは空へ高く飛んだ。飛行も可能なのか!


 しかし、飛べるのは何もヤツだけじゃない。



『エレクトリックダッシュ!!!』



 ビュンと空を駆けていくネーブルは、瞬く間にヤツに接近した。はえ~。俺でも見えなかったぞ。そこから、大技を繰り出した。



『ムジョルニア――――――!!!!!』



 以前に出したライジンを遥に凌駕(りょうが)する雷撃。

 副効果でサンダーボルトが発生しまくり、それが広範囲に及んだ。四方八方から雷の嵐。激しすぎる轟音。


 ネーブルのそれは神の領域。雷神・トールの怒りだった。


 そうして、雷はずっと鳴り続け、ナイトメアに大ダメージを与え続けていた。こりゃ、ネーブルのひとり勝ちかな。


「……よいしょっと!」

「空からおかえり、ネーブル」

「これなら、もう出てこれないんじゃないかな」


「そうかもな。フォース、どう思う」


「業気と呼ばれているものが消えつつある。勝利は目前」

「そうか、それを聞いて安心した。ネーブル」


「分かった。もう決めちゃうよ」


 すっと手袋を取り出す、ネーブルはそれを()めた。お、ついに出たか。


 あれは、『神器・ヤールングレイプル』。


 物理・魔法両方の風属性攻撃を300000%もアップさせる優れもの。さらに、特殊な槍を生成することも可能だ。



『――――――雷槍・ビルスキルニル!!!!!!!!』



 即生成されたそれは、光の速さで投擲(とうてき)された。

 槍は気づけばナイトメアを穿(うが)ち、光は宇宙(そら)へ飛んで行っていた。おぉ、見事な一直線の輝きが出来ている。光の柱というか道というべきか。



 怪物は声を上げることもなく、ボロっと身体を崩壊させ、墜落。地面に激突して、大きなクレーターが出来た。



 勝ったな。



「…………バカなバカなバカなバカなバカな!!! 私の作り上げた芸術がこんな簡単に……クソォ!!! よくもナイトメアをガラクタにしてくれたな!!!」



 おおー、随分(ずいぶん)(くや)しがっているな、ディオネのヤツ。



「ネーブル、お疲れ」

「うん、がんばったよ。()めてくれる~?」

「ああ、褒めてやる。じゃあ――」


 褒める前に、ネーブルはなぜか飛びついてきた。あるぇ~?

 これじゃ、俺のご褒美じゃないか。


「よ、よくやった」

「でしょでしょ」


 むぅ、ネーブルめ……自慢の胸を俺の背中に押し付けおってからに! ありがとうございます!!!


「よし、あとはディオネを倒すだけだ」

「……くっ」


 悔しそうに見下すディオネは、次第に口元を歪ませた。


「くくくくくく……」

「なにがおかしい!! 気でも狂ったか!?」

「いやいや……噂の闇使いがここまでやるとは思わなかったのです。ですが、ナイトメアの撃破は想定内。あれはプロトタイプ。本当の悪夢(・・・・・)はこれからですよ……」



「なに!?」



 ディオネは手を広げ、悪魔のように笑った。



「さあ、我が子たちよ。国を滅ぼすのです」



 先ほど撃破したはずのナイトメアが空からわんさか現れた。……な、なんて数だ。どんどん出て来やがる。いくつだ……十や百じゃないぞ。千はいる。



「ナイトメアが……千体……?」

「そうです。このナイトメアたちは量産型ですが、さきほどのプロトタイプより少し強いですよ。さあ、今度は容赦しません。死になさい」



 あのバケモノが今度は千体だと……んなアホな!



「…………ネーブル。またビリビリできないか」

「む、無茶言わないでよ。一体倒すのでかなり体力を消耗したわ。千体とか死んじゃうわ……」

「ですよね、じゃ、いよいよ俺の出番か。フォースはネーブルと国内にいるゼファを守ってくれ。住民もな。約束してくれるよな」


「…………」


 あー…、あのフォースの目は。


「絶対にイ・ヤ」

「嫌って……そんな強調して。離れるのが嫌なのか」

「ユメはいつも独りで行っちゃうもん……!」

「俺はどこにも行かないよ。ここで国を守るために全力でヤツ等を倒す。大丈夫だ、もう魔王の時のような無茶しないよ」

「……ナイトメアが千体もいるんだよ。ユメ、分かっている? あれは、さっきのとは違うの。あたしの『炯眼(けいがん)』で視る限り、勝てる見込みはかなり低い」


 分かっている。

 ディオネは『少し強い』と抜かしてやがったが、実際はさっきの一体を上回る能力値だ。あんなものが千体だぞ。さすがの俺もキツイかもしれん。


「でも、それでも戦う」

「ユメ!」

「ヤツ等は身勝手に国を滅ぼすような連中だ。だから、俺は国を……なによりも、大切な人たちを守りたいんだ」



 闇の極解放(ダークフォーム)

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