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第43話 忍び寄る魔の手

 洞窟ダンジョンまでは、まだ距離があった。

 地の神国(クレド)は草原や森、山々といった緑の大自然で囲まれている。当然、危険なモンスターも多く生息していた。


 けど、おかしい。

 ゾンビが何故(なぜ)あんなところにいたのだろう。


 パチパチと耳心地のよい焚火(たきび)を見ながら考えた。


 ……(なお)



「…………コライユさん、ルージュさん。離れてくれるとありがたい」

「いやです」「ユメさんのお(そば)にいます」


 ゾンビに襲われていた二人のエルフを助けたあと、一緒に洞窟ダンジョンを目指すことになったのだが、そのあと直ぐに毒蛇ボスモンスター『憤怒のヨルムンガンド』に襲われた。『憤怒』とついているボスモンスターは、通常ボスの十倍強い。けれど、もちろん、俺の敵ではなかった。


 それからだ。


 エルフ二人の、俺の見る目が更に変わったのは――。


 困ったことに、今はフォース、ネーブル、ゼファの三人は天然温泉で体を休めていた。ので、その隙を狙われて俺はエルフ二人に寄られてしまっていたのだ。ちなみに、コライユがハンターで、ルージュがジプシーである。二人ともヘソ丸出しの軽装すぎだ。

 エルフ独特のふわふわっとした体形が大変魅力的。……いや、いかん。またネーブルに(つね)られては(かな)わん。煩悩退散(ぼんのうたいさん)ッ。



「あの……」



 コライユが俺を見つめていた。

 あれ、いつの間にかルージュが寝てしまっている。



「ルージュは?」

「彼女は眠らせました(・・・・・・)

「……へ」

「これで二人きりですね」

「……まあ、そうだね…………ぬ?」



 立ち上がるコライユは、いきなり服を脱ぎだし――――うわっ!!!


「だめだめだめっ! コライユさん、そーゆーのは、もうちょっとお互いを知ってからじゃないと……。それにほら、俺にはフォースたちもいるし……」


「大丈夫。今から分かりますから」


 白くてスラッとした指が俺の頬を()でた。


 …………まずい、誘惑に負けてしまいそうだ。……だめだめだめだ!


 そう葛藤(かっとう)する間にも押し倒されてしまった。裸のまま抱きつかれ、俺はもうどうしたらいいのか分からなくなった。こうなったら、このまま身を(ゆだ)ね……いかんでしょ!


 何とか抵抗(ていこう)しようとするが、時すでに遅し。抱きつかれてしまい、彼女を()がそうにも()がせなかった。これは参った……。


 なんとやっとると――。



 ガサガサと、(しげ)みの奥から人間のような気配が複数現れ……。



「げ……」



 数十人の野盗が現れた。

 そういえば、地の神国(クレド)の夜は割と治安が悪かった。油断していると、襲われるなんて、そこそこ日常茶飯事。指で数えるほどにはあったな。



「うひょー。こりゃ良い場面に遭遇したぜ!」

「極上のエルフが二人と……生臭そうな男が一人か。男は()っちまえ。女二人は捕らえて、夜通し遊んでやらァ!!」

「げへへへ……そりゃいいなぁ!」



 ――――で、更に、フォースたちもタイミング良く戻って来た。なんちゅうグッドタイミング。おかげで誤解されずに済みそうだ。



「……コライユが裸で、ユメに助けを求めてる? ルージュは野盗に驚いて気絶してるっぽい」


 そうフォースが解釈してくれた!! ナイス!!!


「なんだ、てっきりコライユに言い寄られてたのかと」そうネーブルは俺に対し一瞬、殺意の眼差しを向けていたが、引っ込めてくれた。……ふぅ、フォースには大感謝だ。それと、ゼファは駆け寄ってきて、コライユを剥がしてくれた。助かったぁ……。


「ゼファ、すまない」

「コライユさんはわたくしが」

「え……ぁ、はい」


 この状況にすっかりそんな気分ではなくなったらしく、俺から離れてくれた。よかったよかった。おかげで破滅は(まぬが)れた。


 ……さて、そうなると。


 野盗共がざわついていた。


「おいおい、なんだあの美女三人!」

「あの男の女ってことか!? ふざけるなよ!! なんであんな男にばかり美人が!」

「俺たちにも分けてもわらねェとなぁ!?」


 うるせぇ。

 ギロギロと()め回すように俺の仲間を見やがって。


「……ユメ、あの野盗たちは人間ではない(・・・・・・)人間(ひと)の姿をした改良型のゾンビだと思われる。注意して」

「フォース、それはマジか」


 こくっと(うなず)く。


「しかも、人間(ひと)を食べたような痕跡(こんせき)が口元に見られる。表面上では視認できないけど、本人の物でない血の跡がある。つまり、近くの村や街が襲われたっ可能性もある」


 ……なるほどね、一見ただの野盗に見えて、更に性質(たち)の悪いヤツ連中だったか。この国へ来た時から異変を感じていたが、ゾンビに野盗……これは、魔神の仕業だな。

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